緑谷は再度、会場の近くに行きオールマイトにシステムを奪還し人質を解放する旨を伝えた後、俺様たちは最上階に向かうために、階段を登っていた。
警備システムが掌握されているため、エレベーター等は使えないため、最上階である200階に続く唯一の道である非常階段を駆け上がる。
30階に到達した段階で、俺様と唯は普段のトレーニングで、慣れているからかとくに疲弊していないが、上鳴や他の女性陣……メリッサはキツそうだ。
「あと170階もあんのかよ……」
「敵と戦うよりマシでしょ!」
「そうですわ上鳴さん」
ヘタレた上鳴の呟きに耳郎がツッコみ、八百万もそれに同意する。
俺様たちは、永遠にも続く階段を駆け上がった。
50階を過ぎたあたりで、真ん中にいたはずのメリッサが最後尾に移っており、心配した麗日が【個性】を使おうと提案する。
麗日の【個性】で浮けばだいぶ楽だが、メリッサは苦しそうに息を吐きながらも笑いかける。
麗日の【個性】は敵と会敵した時に使って欲しいと言い、ヒールを脱ぎ捨て階段を駆け上がる。
60階、70階と走り続け、80階にさしかかったその時、先頭を走っている俺様が目の前の光景を見て立ち止まる。
「……シャッターか」
階段の途中でシャッターが降りていた。
俺様の後に続いてやってきた緑谷たちも、荒い呼吸を整えながら立ち止まる。
「どうする?壊すか?」
「間違いなくシステムが反応するな」
轟がそう言うが、確実に敵に俺様たちの居場所を知られてしまうため却下する。
ここまで来て、足止めをくらいどうするか皆が悩んでいると、体力が切れてヘロヘロになった峰田が反対側にあるドアに気づく。
「なら、こっちからいけばいいんじゃねーの?」
「待て!」
「ダメ!」
俺様たちの静止も虚しく峰田はドアのハンドルを引いてしまった。
管制室に警報音が響き渡り、テロリストたちはなにごとかと、パネルを操作している仲間に近づく。
「なにかあったか?」
「80階の扉が開いた?」
「お前やったな?スキャニングのミスとかありえねぇ」
メガネをかけた男が訝しげに答える。
近づいた仲間は大げさにメガネの男を責める。
メガネの男は舌打ちしながら、パネルを操作しモニターに監視カメラの映像が映し出される。
「ガキ?」
その中の一つに廊下を走る鳳たちの姿があった。
すぐに自分たちのボスである『ウォルフラム』に連絡を取る。
拘束されたオールマイトたちがいるレセプション会場で、連絡を受けたウォルフラムは冷静に指示を出す。
「80階の隔壁をすべて降ろせ。ガキ共を逃がすな」
「了解」
指示を受けたメガネの男はすぐにパネルを操作して、隔壁を降ろし始める。
「……俺もガキを捕まえに行く」
管制室の警備を任されていた全身が黒い鋼のような大男が部屋から出て行こうとする。
「待てって……ボスから指示受けてねぇだろ」
仲間の一人が肩を掴み大男の行動を咎める。
しかし、大男はモニターに映った鳳を指差し口を開く。
「あそこに映っているガキは雄英体育祭の優勝者だ。ボスか俺でないとすぐにやられるのがオチだ」
大男は肩に掴まれた腕を引き剥がすと、そのまま仲間に顔を近づける。
「それともお前が行くか」
「ヒッ……」
大男の圧に負けて仲間は好きにしろと負け惜しみを吐いて、パネルを操作する男の近くに戻った。
「ハッ」
大男は仲間を鼻で笑うと、管制室を出て鳳たちを捕らえるために下に向かう。
「メリッサ!他に上に行く方法はあるのか!」
「反対側に同じ構造の非常階段あるわ!」
ドアを開けたせいで敵に気づかれた俺様たちは、廊下を走っていた。
緊急事態ということもあり、俺様がメリッサを抱き上げ走りながら質問する。
「急ぐぞ!」
戦闘を走る飯田が速度を上げた瞬間、奥の通路の隔壁が次々と閉じられていく。
「そんなシャッターが!?」
「後ろもですわ!」
「立ち止まるな!」
前からも後ろからも隔壁が閉じられていく。敵が俺様たちを閉じ込めにきたのだ。
ピンチに陥った俺様たちだったが、いきなり飯田が飛び出した。
「そういうことか!轟!」
「ああ!」
飯田が飛び出した先を見ると、どこかに通じる扉があるのが見え、轟に声をかける。
轟は【個性】で閉じる寸前の隔壁を氷結で止める。
その隙間を飯田とメリッサを降ろした俺様が得意の蹴りで破壊する。
「このなかを突っきろう」
俺様たちは扉のなかに入ると、その景色に驚いた。
部屋を埋め尽くす沢山の植物。本来の成長を超えた成長をみせる植物はところ狭しと、伸びやかに育っている。
「メリッサさんここは?」
「植物プラントよ。【個性】の影響を受けた植物を研究」
「「待て!/待って!」」
俺様と耳郎が同時に声を上げる。
耳郎は険しい視線を、中央に設置されたエレベーターに向けている。
「あれ見て!エレベーターが上がってきてる!」
表示される階数を示す数字が上がり、80階へと近づいていた。
俺様も“王の瞳”で中に人がいることを確認した。輪郭から未だ合流出来ていない、爆豪たちではなくテロリストであることを告げる。
「隠れてやり過ごそう」
俺様たちは近くの茂みに身を隠すと、エレベーターから下りてくるであろう敵を警戒する。
しばらくするとエレベーターから甲高い音が鳴り響く、この階に止まったことを知らせる音だ。
扉が開き、チビとのっぽの二人がエレベーターを下りる。
「……あの服装、会場にいた敵だ」
会場を見た緑谷は二人がテロリストの仲間であることを皆に知らせる。
敵の二人は周りを見渡しながら、俺様たちに近づいて来る。
「ガキはこのなかにいるらしい」
「メンドーなところに入りやがって」
チビの言葉にのっぽは苛立ちながら部屋を探していく。
5m、4m、3m、と徐々に俺様たちとの距離が近づいていき、皆の焦りも増してくる。
「見つけたぞ!クソガキども!」
敵の声に俺様は【個性】を発動し、迎撃しようと体を動かそうとするが、次の瞬間に聞いたことのある声が敵に言い返した。
「あぁ?今、何つったテメェ!」
「「「「「!?」」」」」
聞き間違えるはずがない、その声は爆豪のものだった。俺様は声の方向に視線を向けると、敵にガン飛ばした爆豪と、心配そうに顔をしかめている切島がいた。
「お前らここで何をしている?」
「そんなの俺が聞きてぇくらいッ「ここは俺に任せろ、な!?」……チッ」
チビの男に突っかかろうとする爆豪を押さえて切島が前に出る。
「あのう……俺たち道に迷ってしまってて、レセプション会場ってどこに行けば……」
「道に迷っててなんで80階に来るんだよ!」
切島は懇切丁寧に自分たちの状況を説明した、しかし敵がそれを信じるはずもなく、のっぽの男が苛立ち【個性】なのか、右手が手袋を破り巨大化した。
「見え透いた嘘ついてんじゃねぇッ!?」
のっぽは怒りのまま、切島に向かって腕を振るが俺様が横から飛び出し、全力で蹴り飛ばす。
「轟!壁だ!」
チビが反応するよりも早く轟に指示を出し、敵との間に氷で壁が生成される。
轟は、敵たちがこの壁を突破する可能性を考えたのか、しゃがみこみ口を開く。
「俺たちで時間を稼ぐ。上に行く道を探せ」
轟は氷の柱を俺様たちの足下に生成して、上の通路まで運ぶ。
「轟くん!?」
「君は!」
轟の思惑を察知した緑谷と飯田は叫ぶが、轟は首を振り早く行けと叫ぶ。
「轟さん!」
八百万の声を聞いた轟は小さくなっていく俺様たちに後で追いかけると言い、切島たちに状況を簡潔に説明する。
俺様たちは轟の氷に運ばれプランターの最上部にある細い通路まで上がると、そこに飛び移る。
轟のためにも俺様たちは上に続く道を探すのだった。