キングオブキングな俺様のヒーローアカデミア   作:松田ゐふ

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第51話

 13年前

 

 当時の俺様は、今と違って大人しく人見知りをする性格だった。

 当時通っていた幼稚園でも誰とも馴染むことができず、いつも一人で教室の隅で絵本を読んでいた。

 先生も俺様が皆と仲良くできるように色々と手を焼いてくれたが、友達ができることはなかった。

 

 あの日までは……

 

 

「はーい!今日からこのクラスに新しいお友達が来てくれました!皆仲良くするようにね!」

 

「「「「「はーい!」」」」」

 

「じゃあ唯ちゃん、自己紹介できるかな?」

 

「ん」

 

「お名前は?」

 

「ん」

(こだいゆい)

「え、えっと小大唯ちゃんです。唯ちゃん好きな物とかある?」

 

「ん」

(とまと)

「ん〜……皆と遊ぶことが好きなんだって、皆これからよろしくね」

 

 今日、僕の通う幼稚園に新しく子が入ってきた。

 名前は小大唯ちゃん。

 綺麗な黒い髪に大きてきらきらした目の可愛い女の子だ。

 いつもの僕なら名前を聞いたらすぐに絵本を読むんだけど、小大ちゃんの時は違った。

 僕は小大ちゃんの自己紹介が終わったあとも、イスに座ったあとも、ずっとずっと見ていた。

 今日の僕は変だった。好きな絵本なんてどうでもよくなって、小大ちゃんを見ると心臓がドキドキして苦しくなった。

 家に帰ってお母さんにこのことを教えたら、コイ?だって教えてもらった。

 コイ?がなにかわからないけど、小大ちゃんと仲良くなりたくて、僕は勇気を出して話しかけることにした。

 

「小大ちゃん!……僕、鳳火鳥!こ、これからよろしくね!」

 

「ん」

(よろしく)

「えっと……よろしく?」

 

 僕が勇気を出してあいさつをすると小大ちゃんも返してくれたと思う。

 ここから何回も話しかけてみてわかったんだけど、小大ちゃんは「ん」とか「ね」で話す子みたいだ。

 最初の頃は他の子も小大ちゃんに話しかけていたんだけど、ずっと「ん」とかしか言わないからだんだん話してくれる子がいなくなっていた。

 

 僕は小大ちゃんと仲良くなりたかったからいっぱい話しかけた。外で遊ぶ時間、お昼ご飯の時間、お歌を歌う時間、おうちに帰るバスの中、できるかぎり僕は小大ちゃんの隣に行って声をかけ続けた。

 

「ん?」

(なんで話しかけてくるの?)

「え?」

 

 そんなある日、小大ちゃんから話しかけられた。

 いつも僕から話しかけていたから、小大ちゃんから話かけてくれたことが嬉しかった。

 でもそれ以上にいつもなんて言ってるのかわからなかった小大ちゃんの「ん」の意味がわかったことにびっくりしたけど、それがもっと嬉しかった。

 

「わかる……わかるよ!僕、小大ちゃんがなんて言ってるのかわかるよ!」

 

 あまりに嬉しすぎてぴょんぴょん飛び跳ねて小大ちゃんをおいてけぼりにしちゃった。

 

「ん!」

(唯の質問に答えて!)

「っ!?……ご、ごめん。えっと……僕、小大ちゃんと仲良くなりたいから。お母さんにどうすればいいか聞いたら、たくさんお話ししてみたらって言われたから」

 

「ん……ん」

(そう……なんだ)

「もしかして嫌だった?」

 

「……ごめんなさい!僕、こうやって人と話すの初めてだったから……小大ちゃんが嫌がってるなんて知らなかったんだ」

 

「もし嫌なら言ってくれていいから……」

 

「ん!」

(違う!)

「んん!」

(嬉しかった!唯とずっと話してくれる子、今までいなかったから……嬉しかったの!)

 僕が小大ちゃんに悪いことをしたかもしれなくて落ち込んでたら、小大ちゃんが大きな声で僕に自分の気持ちを教えてくれる。

 

「……じゃあ……もっとお話してもいいの?」

 

「ん!」

(いいよ!)

「小大ちゃん!」

 

「……唯でいい」

 

「え?」

 

「唯って呼んでいいよ」

 

「じゃあ僕も火鳥でいいよ!よろしくね唯ちゃん!」

 

「うん!よろしくね火鳥!」

 

 お母さんが言っていたコイ?ていうのがなんとなくわかった気がする。

 僕は唯ちゃんの笑顔を見てもっと仲良くなりたいって思った。心がポカポカしてドキドキして温かい気持ちが溢れてくる。

 多分、これが恋なんだって思う。

 

 僕は唯ちゃんが好きだ。

 この気持ちは大事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……というのが俺様たちの出会いで好きになったきっかけだな」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「何を黙っているんだ?お前たちが聞きたいと言ったから話したんだぞ」

 

 俺様が折角、唯との出会いを話したというのに此奴は互いの顔を見合わせてポカンとしてる。

 

「まぁいい、消灯時間も近い。俺様は寝るからな」

 

 ポカンとしたまま動かない男子たちを放置して俺様は布団に入り、眠るのだった。

 

「……誰かコーヒー持ってない?」

 

「奇遇だな俺もコーヒーが飲みたい気分だ」

 

 俺様が眠ったあとの男子たちは、コーヒーを買いに自販機を探しに部屋を出たそうだ。道中で相澤に見つかり雷を落とされたらしいが俺様には関係ない話だ。

 


 

「……ん」

(これが私と火鳥の出会いだよ)

「ひゃぁ……甘いね!いいね!」

 

「運命の出会いだったんだね」

 

「通訳を買って出たのは私なんだけど……なんだか照れるね」

 

 私と火鳥の出会いが聞きたいって皆が言ったから話したけど、反応が良くて安心した。

 当時の私は人付き合いが苦手で上手く喋れなかったかから、傷ついて欲しくないから誰とも仲良くしないようにしていた。……していたはずだったんだけど、火鳥は毎日毎日しつこく話しかけてくるから私は拒絶した。

 でも返ってきた言葉に期待してもう一度仲良くしてみようと思った。

 あの時火鳥に会わなかったら私は変われなかったかもしれない。

 

「ねぇ一つ気になったんだけどいい?」

 

「ん」

(いいよ)

「……鳳って今の話じゃ大人しい感じっぽいけど、いつからあんな感じになったの?」

 

「……ひみつ」

 

「えっ!?今、普通に喋った?」

 

「ん?」

(なんのことかな?)

「えぇ絶対喋ったじゃん!」

 

「アンタら明日早いんだからもう寝な!」

 

「はーい!」

 

 丁度いいタイミングでマンダレイさんが部屋に入り、私たちに声をかけてきた。

 私たちはB組の部屋に戻って布団に入った。

 

「ん」

(あの()()は秘密なんだ)

「ん?唯なんか言った?」

 

「んん」

(ううん、おやすみ)

「まぁいっか……おやすみ」

 

 私は目をつぶり、あの日のことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「唯ちゃん!僕の好きな絵本一緒に読もうよ!」

 

「ん」

(いいよ)

 その日は雨が降っていて、外で遊べなくて落ち込んでたら火鳥が好きな絵本を持ってきてくれた。

 

 題名はもう忘れてしまったけど、話は今も覚えている。とある国の王様が国民のために頑張って国をより良くする、そんな在り来りな物語だ。

 

 幼かった私はそんな王様を好きと言った。多分、それが火鳥が変わるきっかけだった。

 火鳥は初めて出会った時から私のことが好きだったんだと思う。

 でも、そんなことを知らない当時の私は絵本の王様に好きと言った、それが火鳥にとって悔しかったのか、嫌だったのかは分からない。

 でも、私の放った好きという言葉は火鳥の中のなにかを変えた。

 

「だったら僕が……ううん、俺が唯の王様になってやる!」

 

「だから……俺が立派な王様になったら結婚してくれ!」

 

 まだ結婚がどういう意味かわかっていない火鳥が私に言った言葉だ。

 まだ火鳥のことが好きじゃなかった私は、火鳥の告白を断ろうと思った。

 でも、ここで断るともう二度と火鳥と遊べないんじゃないかと思い気づけば口を開いていた。

 

「ん」

(じゃあ約束しよ)

「約束?」

 

「ん」

(そう、火鳥が立派な王様になったら結婚してあげる)

「ほんとか!?」

 

「ん」

(でも、なれなかったら結婚してあげない)

「そ、そんな……いや、わかった!約束だ!」

 

 私は約束という形で答えを先延ばしにした。火鳥はそれでも嬉しかったみたいでその日はずっとはしゃいでた。

 

 でも……火鳥は変わった。

 いつも唯ちゃん!唯ちゃん!と言って私の後ろを着いてくる人見知りで大人しい火鳥はいなくなった。

 私のことを唯と呼んで前を歩く、立派な王様になるために努力し続ける火鳥になった。

 

「ん」

(今じゃ私の方が君にゾッコンだよ)

 私のために努力する火鳥を見て、嬉しくなったり、心配したり、ドキドキしたり……そういう気持ちを積み重ねていくうちに気づけば好きになっていた。

 

「んん」

(待ってるから立派な王様になってね)

 私は大好きな幼なじみの姿を思い浮かべながら眠りについた。

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