弱点がないことが弱点と相澤から言われ、俺様はピクシーボブの作り出した魔獣に当たっていた。
「クソっ!!」
魔獣の顔を蹴りで粉砕し、その勢いで後ろから迫ってきた別の魔獣に踵を落とす。
「もっとだ!」
魔獣を殴り、蹴り、破壊する。
俺様の周りには魔獣だった土が積もっている。
早朝から正午まで休憩を挟むことなくぶっとうしで魔獣を破壊し続けていた。
長時間の戦闘でも俺様は汗ひとつかかなず、息も切れていないが、相澤に言われた言葉が頭をよぎり本調子とはいかない。
「そろそろ休憩したらどう?」
ピクシーボブが様子を見に近づいてくるが俺様は首を横に振り、水分補給をするとすぐに魔獣を出してくれと頼む。
結局、この後も休憩を挟むことなく夕方まで魔獣を破壊するだけで終わってしまった。
「さァ昨日言ったよね、「世話を焼くのは今日だけ」って!!」
「己で食う飯くらい己で作れ!!カレー!!」
夕食の時間になるが、料理は用意されておらず、各机に野菜や肉や米、飯盒や皿等が並べられていた。
戸惑う皆にピクシーボブとラグドールが説明する。
「「「「「イエッサ……」」」」」
「アハハハハ!全員全身ブチブチ!!だからって雑なネコマンマ作っちゃダメね!」
ラグドールは疲れ果てた皆を見て笑う。
この言動に意味は無いはずだが、飯田がハッとなにかに気づき急に元気になる。
「確かに……災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環……」
「さすが雄英、無駄がない!!世界一旨いカレーを作ろう皆!!」
多分違うと思うぞ。
俺様はそんなツッコミが頭に浮かんだが、飯田に引っ張られ、皆も疲れてはいるがやる気を出しているので、水を差すのも悪いと思い黙っておく。
……相澤、飯田を便利道具みたいな顔で見るな。
そういうわけで始まったカレー作りだが、皆の普段見れない姿が見れて興味深かった。
例えば、轟は包丁を使うのが苦手だったり、逆に爆豪はあの性格からイメージできないが料理も得意だったりと、ほんの少しだけ相澤の言葉を忘れることが出来た。
「鳳くん何作ってるの?」
「マンダレイから許可を貰ってなアップルパイを作っている」
「えっ!?今から!?」
「安心しろ俺様と轟がいればいくつかの工程は短縮できる。……それに疲れた時に食べる甘いものは絶品だ、だから皆に食べてもらいたくてな」
俺様は慣れた手つきでアップルパイに使うりんごの甘煮を作る。通常なら30分ほどかかるが、俺様の【個性】を上手く調節すれば味を落とすことなく短縮できる。
昔、母さんと練習し
「ん」
(手伝うよ)
「助かる、正直な話俺様だけだとB組の分は作れるか怪しかったからな」
二クラスと教員分の甘煮を轟にわたし冷やしてもらう。
その間に俺様たちは型にパイ生地を伸ばして次の工程の準備を始める。
「ねぇ」
「なんだ?」
「……ん」
(立派な王様になった?)
「……まだまだだ……今も壁にぶつかっている」
「ん」
(そっか)
「待たせてしまってすまんな」
「んん」
(焦らなくていいよ、火鳥ならちゃんと立派な王様になれるって信じてるから)
「ありがとう」
パイ生地の準備をしていると唯が約束について聞いてきた。
立派な王様……唯にふさわしい男にはまだなれていない。
待ってくれている唯の為にも俺様はこの状況をなんとかせねばと決意し、明日からの特訓をどうするか考える。
「なぁ上鳴」
「なんだ峰田」
「あそこにカミナリ落としてくんね」
「無理」
「そっか」
俺様たちの様子を見ていた峰田が変なことを言っている、唯のそばを離れたくないので目線で圧をかけておくことにする。
その後は特に問題なくカレーが出来上がり、空腹と疲れもあって、皆が普通のカレーはご馳走に代わり瞬く間に無くなった。
食後のタイミングで完成したアップルパイを皆に振る舞うと大変喜ばれて気分が良くなった。
物間も施しは受けないと言っていたが、一口食べると急に黙ると残りも完食していた。
あの物間すら黙らせるとは母さんのアップルパイの凄さを改めて認識する。
「やはりなにか違うな」
「ん?」
「母さんのレシピと材料で何度も再現しているがあの味には程遠いな」
「ん」
(美味しいよ)
「俺様も美味いと思うさだが……なにが違うんだろうな」
「ん」
(多分、愛情かな)
「ん?何か言ったか」
「ん」
(気のせいだよ)
「そうか」
こうして俺様たちの合宿二日目は終わりを迎えた。
「疼く……疼くぞ……早く行こうぜ!」
「まだ尚早、それに派手なことはしなくていいって言ってなかった?」
「あぁ……急にボス面始めやがってな」
「なんでもいい、俺が彼奴を殺せればそれでいい」
合宿場から少し離れた崖の上で男女数名が施設を見下ろしていた。
「随分流暢に喋れるようになったみたいだな」
「あの時はまだこの体に【俺】が定着してなかったんだよ」
荼毘は初めて出会った時とは違うツギハギ男の変化に質問する。自身を鳳火鳥と名乗っていたツギハギ男は、流暢に訳を説明する。
「それでお前の名前は?前言ってた鳳火鳥って呼べばいいか?」
「今はいい……その名は彼奴を殺すまでとっておく」
荼毘はツギハギ男の自己紹介を覚えており、その時に名乗った名前で呼べばいいのか聞くがツギハギの男は首を横に振る。
ツギハギの男は少し考えて口を開く。
「堕落……俺のことは鳳
「あっそ……どうでもいい」
堕落の言葉に荼毘は素っ気なく返すと、崖から見える合宿場を睨みつけ、自分たちの目的を口にする。
「今回はあくまで狼煙だ……虚ろに塗れた英雄たちが地に落ちる……」
「その輝かしい未来の為のな」
俺様たちが気づかぬうちに悪意はすぐ近くまで迫っていた。