キングオブキングな俺様のヒーローアカデミア   作:松田ゐふ

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第55話

 肝試しのペアが決まり、続々と森の中に入っていく。

 しばらくすると、森の中から耳郎の叫び声が聞こえてくる。

 ホラーが苦手だと言っていたがここまでとはな。

 そうこうしているうちに俺様たちの番が回ってくる。

 

「肝試し!肝試し!」

 

 芦戸は楽しみだったようで、これから脅かされるというのに、スキップしながら森の中を進んでいく。

 

「楽しそうだな」

 

「うん!すごく楽しみ!」

 

「良かったな赤点回避できて」

 

「鳳が対策考えてくれたからだよ」

 

 森の中を歩きながら俺様たちは期末の話をする。

 期末試験一週間から俺様は各々の弱点を分析して、試験で上手く立ち回れるようにメニューを考えたのだ。

 上鳴や芦戸はお世辞にも知的とは言えないため、そこを突かれると思い、特訓では俺様の炎で周りを囲み自分で考えて対処することに慣れさせた。

 

「鳳が助けてくれなかったら多分赤点だったよ」

 

「そこまでのことはしてないさ、お前たちが頑張ったから今、肝試しができてるんだ」

 

「……鳳ってさ、モテるよね?」

 

「いきなりどうした」

 

 期末の話をしていたはずだが、芦戸が急に変なことを言ってきた。

 

「だってさ、性格と態度をちょっと変えるだけでモテるもん!顔良いし、気遣いできるし、料理も得意だし、メイクとか服とかに詳しいし、実家太いし!ちょー優良物件じゃん!」

 

「わかったから落ち着け……」

 

 すごい勢いで俺様のことを褒める芦戸を手で制止落ち着かせる。

 それにしてもすごい出てくるな、俺様もナルシストなところはあるが、そこまで自分に対する褒め言葉は出てこないぞ。

 

「小、中と王になるために特訓をしていたのでな、正直なところ唯以外とあまり関わってはこなかったな」

 

「えっ!?そうなんだ!意外だな鳳がボッチなの」

 

「ボッチ……芦戸は面白いな俺様相手にそんなことまで言える、なん……て……な?」

 

「鳳?」

 

 芦戸と話しながら森を歩いていたが、急に“王の瞳”が発動する。

 肝試し中は相手の居場所がわかってしまうと驚くものも驚けないので、発動しないようにしていたが、急にこうなったということは【フェニックス】がなにかを感じたのだろう。

 

「……ッ!?……芦戸今来た道を戻れ」

 

「え?急にどうしたの?」

 

「……落ち着いて聞いてくれ……脳無がいる」

 

「嘘……」

 

 俺様の視線の先に、倒れているラグドールと筋骨隆々な大男の個性因子が見え、この先にいることがわかる。

 

「芦戸!戻ってすぐにマンダレイに状況を説明してくれ!合宿場に脳無出現、敵連合の襲撃の可能性ありとな」

 

「鳳はどうするの?」

 

「ラグドールを助けに行く」

 

「危ないよ!」

 

「わかっている。この状況は『U・S・J』の時とは違うと……」

 

「だったら……」

 

「だが……俺様は王だ!目の前の民を見捨てることなどできん!」

 

「鳳!」

 

「芦戸!マンダレイに頼むぞ!」

 

 俺様は芦戸の制止を振り切ってラグドールの元へ走り出す。

 変身すればもっと速度が出せるが、ここは森の中だ下手に炎を出せば、木に燃え移り火災が起きるかもしれない、そう考えると迂闊に【個性】は使えなかった。

 

「ッ!?この甘ったるい独特の臭い……毒ガスか!」

 

 ラグドールを助けるために森を進んでいくと、鼻を突く甘い臭いに俺様はハンカチで顔を押える。

【個性】が使えないため肝試しのルートから外れ直進し最短距離でラグドールの元に向かう。

 

《皆!!!》

 

《敵二名襲来!!他にも複数いる可能性アリ!!》

 

《動ける者は直ちに施設へ!!会敵しても決して交戦せず撤退を!!》

 

 頭に直接声が響く。

 マンダレイの【テレパス】だ。

 やはり、敵連合が襲撃してきたのだろう。

 

「ネホヒャン」

 

 森を抜けて中間地点まで辿り着くと、複数の腕を持つ脳無がいた。

 脳無の足下には血を流したラグドールが倒れている。

 

「貴様!」

 

 “炎鳥・棍弩朧”

 

 炎に気をつけ、足を変化させると一気に距離を詰めて脳無の顔面に蹴りを叩き込む。

 昨日の魔獣ラッシュで俺様の“赫灼熱拳”の精度が上がったようで、発動する際に僅かなタメが必要だったが、それがなくなっていた。

 

「ネホ……ヒャン!!」

 

 蹴りを喰らった脳無はよろけるがすぐに体勢を立て直すと、複数の腕からチェンソーを生やして攻撃してくる。

 俺様はラグドールの前に立ち、チェンソーを避け脳無の頭上まで飛ぶと、剥き出しの脳に踵を落とす。

 

 “炎鳥・棍弩朧”

 

 脳無は機能を停止したのか、その場で倒れ動く気配はない。

 俺様はラグドールを背負うと、宿舎まで走り出す。

 先程と同じように森を突っ切って走っていると、飯田たちと合流する。

 

「飯田!無事か!」

 

「鳳くん!」

 

「鳳!」

 

 飯田は芦戸からある程度話を聞いていたようで、俺様が単騎でラグドールを救けに行ったことに注意すると宿舎に戻るように言う。

 しかし、俺様は気づいてしまった。

 

「……飯田、緑谷はどうした?」

 

「緑谷くんは洸汰くんを探しに行ってしまった」

 

「馬鹿野郎……飯田、ラグドールを頼む!」

 

「ダメだ!君も一緒に宿舎に戻るんだ!」

 

 飯田は俺様が何をするのか理解したようで、引き止める。

 

「……この状況で緑谷を一人にしたら確実にやらかすぞ」

 

「鳳くん……なにを言って」

 

「会敵するなと言われても、誰かを守るためなら彼奴は無茶をする……。俺様なら二人を連れて宿舎に戻ることなど造作もない。だから行かせてくれ」

 

 俺様の言葉に飯田は長考するが、重い口を開く。

 

「緑谷くんが敵と戦っていたら、無理矢理にでも中断させて戻って来てくれ。君も戦闘はなしだ」

 

「わかった」

 

 飯田はそう言うとラグドールを背負い他の皆を連れて宿舎に戻っていく。

 俺様は腕を翼に変え、一気に上昇する。

 “王の瞳”で緑谷たちがどこにいるか確認しようとするが、異変が起きる。

 

「なんだこれは!?」

 

 “王の瞳”にモヤがかかり、個性因子を視ることが出来なくなっていた。

 それでも強化された視力で辺りを見渡し、敵と戦闘中の緑谷を発見する。

 

「彼奴!」

 

 俺様は急降下しながら緑谷たちの元に向かうが、横から何かが高速で接近する。

 

「会いたかったぜぇ!鳳火鳥ぉ!」

 

 ツギハギの男が俺様に激突し、共に森に落ちていく。

 木々にぶつかりながら減速し地面に転がる俺様の前にツギハギの男は降り立ち、こちらを見下ろす。

 

「お前の目は厄介だからな……俺がジャミングしておいたぜ」

 

 ツギハギの男は意地の悪い笑みを浮かべると俺様に近づいてくる。

 

「貴様は誰だ!」

 

 立ち上がった俺様は、ツギハギの男に問う。

 

「俺か?俺は鳳堕落……お前を殺して本物になる者だ」

 

 自身を鳳堕落と名乗ったツギハギの男は腕から青黒い炎を放つ。

 俺様は翼に変化した腕で防御する。

 どうやら此奴は保須市で戦ったあの脳無と同じ蒼炎を使うらしい。

 

「お前から全て奪ってやるよ!」

 

「鳳の名を騙る貴様に容赦はせん!」

 

 俺様の蹴りとツギハギ男の蹴りがぶつかり合い、衝撃で木々が揺れる。

 勝負は始まったばかりだ。

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