キングオブキングな俺様のヒーローアカデミア   作:松田ゐふ

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第56話

 俺様と堕落と名乗るツギハギの男の戦いは、ツギハギの男が優勢だった。

 俺様は【個性】を積極的に使うことができないのに対して、火災が起きようが関係のないあちらは【個性】で優位を取っていた。

 

「バカスカと炎を放って鬱陶しい!」

 

「もうギブアップかよ!張合いがねぇな!!」

 

 あまりやりたくはなかったが、堕落の炎で引火した木を俺様の炎で灰すら残さず焼却する。

 今の一瞬で俺様の炎が彼奴の炎を上回ったことを確認し、反撃の隙を伺う。

 

「お前……自分の炎が上とか思ってんのか?」

 

 堕落は俺様の考えを最初から理解しているかのようなことを言うと、下品な笑みを浮かべる。

 

「俺がなんの意味もなく炎を出し渋るかよ!」

 

「ッ……どんな小細工があろうとも俺様が負けることは無い!」

 

「じゃあやってみろよ!」

 

 “炎鳥・棍弩朧”

 

 “堕落・棍弩朧(ダーク・コンドル)

 

 灼熱と蒼炎を纏った蹴りがぶつかり合い、衝撃で互いに吹っ飛ばされる。

 俺様は後方に吹っ飛ばされながらバク宙し体勢を立て直すと、地面を擦りながら着地と同時に堕落に向かって飛びかかる。

 堕落も同じ考えのようで、俺様たちの丁度中間地点でまたぶつかり合う。

 

 “炎鳥・黒爪”

 

 “堕落・黒爪”

 

 変化した足の爪で放つ斬撃と、蒼炎で作った爪が互いを引き裂く。

 俺様の爪は堕落の肩を抉る。

 堕落の爪は俺様の腹を切り裂き、互いの鮮血が地面を濡らす。

 与えられた傷は瞬時に再生し、互いに互いの出方を伺い膠着状態に陥る。

 

「お前、索敵能力が使えねぇだろ?」

 

「貴様が何かしたのか?」

 

「教えるわけねぇだろ!!バーカ!!」

 

「なら話しかけてくるな愚か者!!」

 

 互いに互いを罵り会うと、先程の必殺技の応酬ではなく、単純な殴り合いに変わる。

 

 堕落は俺様と違い、炎を出すのに変身する必要がないため、拳の一つ一つに蒼炎を纏い威力を上昇させる。

 あいにく俺様は()()対処法を期末試験で心得ており、最小限の動きで回避し、急所を狙う。

 

「王様の癖に急所を狙いかよ!」

 

「王だからこそ手段を選ばんのだ!」

 

 拳と拳がぶつかり、互いの骨が砕ける音が聞こえる。

 俺様たちは砕けた骨を再生するとまた殴り合いを始める。

 


 

「ん!」

(急がなきゃ!)

 私は肝試しの途中で敵のガス攻撃で意識を失った骨抜を宿舎に運んでいる。

 拳藤と鉄哲はガスの【個性】を持つ敵を倒して、皆を救けるため、森の奥に進んで行った。

 

「ん」

(火鳥……無事でいて)

 私は炎とガスを避けながら、森を突っ切って行く。

 火鳥ならこの状況でどうするのか、私の頭にはいくつものパターンが思い浮かぶ。

 一番ありそうなのは、森に残っている皆を助けている途中で、敵と会敵して戦闘している。

 火鳥はああ見えて優しいから、誰かの為に動いてしまう。

 例えそれが危険な道だったとしても……。

 

「ん!」

(誰ッ!)

 私は周りに視線を感じて、警戒する。

 茂みをかき分けて出てきたのは、火鳥が脳無と言っていた改造人間だった。

 

「……んん」

(……一体ならなんとかできたかもしれないけど)

 一体また一体と姿を現した脳無に私はどう切り抜けるか頭を回す。

 

「ゴホッ……うゔ……」

 

 背負っていた骨抜の苦しそうな声を聞き、私は決断する。

 

「ん」

(私が守る)

 骨抜を木にもたれかかるように寝かすと、数体の脳無の隙をついて一気に走り出す。

 骨抜を脳無から離すために私は精一杯アピールする。

 

「こっちに来い!!」

 


 

「はぁ……はぁ……いい加減、倒れろや!!」

 

「王がそう簡単に倒れるものか」

 

 永遠にも続く殴り合いを制したのは俺様だった。

 最初こそ勢いはあったものの、炎を使いすぎた堕落は全身のツギハギから黒い煙が出ていた。

 

「そろそろか……」

 

「なに?」

 

「俺はお前だ……保須で俺のコピーがやられた時、俺は怒りと悔しさでどうにかなりそうだったよ」

 

 息が切れていた堕落は何事も無かったかのように立ち上がり、身振り手振りで自身の感じた感情を表す。

 

「だから考えた、お前に勝つにはどうすればいいか」

 

 堕落がそう言うと、俺様を囲むように複数の脳無が現れた。

 

「そいつらは荼毘に渡された個体と違って、再生と筋力強化しか持ってねぇが量産しやすくてな……お前に対する嫌がらせのために借りたんだ」

 

「嫌がらせ……?」

 

「見せてやれよ」

 

 堕落の言葉に反応した脳無が、なにかを放り投げる。

 それは堕落の足下に転がるとそれがなんなのか嫌でも理解してしまう。

 

「唯ッ!?」

 

 白いワンピースを着た唯が、全身に怪我を負った状態で気を失っていた。

 唯の怪我は目で見える範囲で打撲と骨折を負っていいるのが分かる。

 特に酷いのは足で、力任せに捻じ曲げられあらぬ方向を向いており、見るも無惨な状態だった。

 

「……」

 

「そうそうその顔だよ!俺はお前が大っ嫌いでさ!!いつも余裕ぶったその顔が絶望で染まる瞬間をずっと見たかったんだ!!!」

 

 堕落がなにか言っているが、俺様の耳には何も入ってこない。

 目の前の光景を否定したい気持ちが収まっていくのと同時に、怒りが湧き上がる。

 そんな()の怒りに呼応したのかフェニックスに変身していないのにもかかわらず、全身から炎が吹き荒れる。

 

「堕落ゥ!!」

 

 俺様は炎を推進力に一気に距離詰めて堕落を殴り飛ばす。

 殴られた堕落はそれでも尚、俺様を煽り怒りを掻き立てる。

 

「何がおかしい!!」

 

 俺様は怒りにまかせて馬乗りになり、何度も堕落を殴る。

 

「王ってのは常に冷静でなければならないんだろ?」

 

「あ"ぁ"!!」

 

「周りを見ろよ!脳無は次の獲物を探しに行っちまったぜぇ!お前が冷静さを欠いたからまた誰かが犠牲になるぞ!!」

 

「黙れ!!」

 

 堕落の言葉に激昂した俺様は顔面を殴ろうと拳を振るうが、受け止められてしまう。

 

「もう飽きた」

 

「ッ!?」

 

 俺様をおちょくりヘラヘラしていた様子から一変し、堕落は真顔になり受け止めた拳を握り潰すかのように力を込める。

 

「どうした?あれが俺の全力とでも思ったか?」

 

 “堕落・鋭弓矢”

 

 堕落は肩甲骨辺りから皮膚を突き破り黒翼を生やすと、蒼炎で纏い至近距離から羽を飛ばす。

 俺様は回避することも出来ず、羽による攻撃を受けてしまう。蒼炎によって強化された羽は俺様の肉体を貫き、周りの木々に引火し火災を起こす。

 

「いい加減どけよ」

 

 俺様は肉体を貫かれ少し怯んだ隙をつかれ、堕落が上体を起こしてしまう。

 

「怒りにまかせた攻撃で俺が倒れるわけないだろう」

 

「いつものお前なら冷静に処理したはずだ」

 

「所詮はその程度の男だったわけだ」

 

「鳳火鳥」

 

 体勢が崩れた俺様は堕落の攻撃を何度も受けてしまう、殴られ蹴られ地面を転がり、また蹴り飛ばされる。

 

「お前は王にはなれねぇよ」

 

 “堕落・素腕”

 

 蒼炎を纏った手刀が俺様に振り下ろされる。

 すんでのところで回避するが、堕落は何度も切りつけてくる。

 俺様は手刀を避け続けるが、視野が狭くなっていたせいで足下の木の根に足を取られる。

 

「終わりだ」

 

 堕落の手刀が体勢を崩した俺様を切り裂く。

 

 鮮血とともに、なにかが宙を舞い地面に落ちる。

 それがなにか認識するよりも早く、右腕に激しい痛みを感じる。

 

 視線を向けると、俺様の右腕は肘から下が存在しなかった。

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