キングオブキングな俺様のヒーローアカデミア   作:松田ゐふ

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第58話

【フェニックス】との会話が終わり、現実に戻り意識を覚醒させると消毒液の臭いが鼻を突き、目を開くと目の前に骸骨がいた。

 

「鳳少年!?目が覚めたのかい!?」

 

 違ったオールマイトだった。

 本人がトゥルーフォームと呼んでいるやせ細った状態でこちらを覗き込んでいる。

 

「オールマイト……彼はまだ起きたばかりだ」

 

「すまない塚内くん」

 

「俺様……は構わん……なにか用が……あるのだろう?」

 

 俺様のことを心配したオールマイトだったが、隣にいた警察に落ち着けと窘められる。

 俺様は大丈夫だと言うと、オールマイトは咳払いをして林間合宿で起きた敵連合襲撃について話し始める。

 

 結果は最悪だった。

 AB組両クラスの内、15名が敵のガスによって意識不明。

 特にB組は肝試しで脅かす側だったこともあり、ガスによる被害が多かった。

 次に重、軽傷者が13人。

 無傷で済んだのは12名だった。

 

 そして行方不明1名。

 爆豪が敵連合に攫われた。

 

 プロヒーローの方は、ピクシーボブが敵の攻撃で頭を強く打ち重体。

 ラグドールは脳無に襲われ意識を失っていたが、俺様が介入したことで大事には至ってない。

 

 敵側は襲撃犯3名を現行犯逮捕したが、残りには逃げられてしまった。

 

 はっきり言って俺様たちの完敗だった。

 

「……そうか」

 

 爆豪が攫われたと聞き、その後のプロヒーローや敵側の情報は耳に入らなかった。

 

「……以上が林間合宿の被害状況だね」

 

「唯は……無事なのか?」

 

「小大少女だね……命に別状はないそうだ。リカバリーガールが治療して怪我は治ったと報告していたよ……ただ」

 

「ただ?」

 

「足……特に右脚なんだけどね。強い力で拗られたようで結構酷い状態らしい。リカバリーガールの話では後遺症が残る可能性があると……傷跡も完全には消せないかもしれないと言っていた」

 

 オールマイトの話を聞き、俺様は自分の腕に繋がれていた点滴を抜くとベッドから降りる。

 

「鳳少年!?」

 

「君!?どこに行く気だい?」

 

「離せ!俺様は唯のところに行く!」

 

 オールマイトと塚内と呼ばれていた警察が、俺様が病室から出ないように掴まえる。

 

「今は安静にするんだ!」

 

「君だって大怪我を負っていたんだろう、ベッドに戻るんだ!」

 

「俺様が!」

 

「……俺様がいたから唯が傷ついた!!」

 

「俺様が【個性】を奪われなかったら……唯は無事だった!!」

 

「鳳少年……」

 

 俺様は2人の腕を振り払う。合宿で起きた事件で唯が怪我を負った責任が俺様にあると叫んだ。

 

「それはどういう……」

 

「詳しく聞かせてもらってもいいかな?」

 

「俺様も【個性】から聞いた話だ……それを信じるなら話してやる」

 

 俺様は【フェニックス】から聞いた話を2人にする。

 幼い頃、AFOに【個性】を狙われ咄嗟に個性因子の一部をわざと譲渡したこと。

 AFOが十数年かけてその個性因子を成長させ、保須と今回の堕落に与えたことを話した。

 

「なるほど……君の【個性】が……」

 

「鳳少年……君は何も悪くない。君の【個性】を利用したAFOが悪いんだ」

 

「俺様だって理解している……でも……でも納得できんのだ!!…………すまん」

 

「鳳少年……あまり思いつめてはいけないよ」

 

「急に押しかけてすまないね……僕たちはもう行くよ。……くれぐれも安静にするんだよ」

 

 俺様の様子を見て2人は病室を後にする。

 塚内が部屋を出たタイミングでオールマイトを呼び止める。

 

「オールマイト」

 

「ん?何かな鳳少年?」

 

「︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎」

 

「……わかった」

 


 

「唯……起きてるか」

 

「うん」

 

 翌日、唯が目を覚ましたと聞きなけなしの体力を消費して病室に向かった。

 昨日は一日中寝たきりだったが全く回復しない体力に今ばかりは文句を言いたくなる。

 

「……無事……ではないな。……オールマイトから聞いた」

 

「手酷くやられちゃったからね」

 

「……すまん」

 

「なんで謝るの?」

 

「俺様がいたからお前がこんな怪我を負ったんだ。……正直、お前に合わせる顔がない」

 

「気にしなくていいのに」

 

 一昨日の夜の事件で唯が怪我を負ったことについて俺様は謝罪する。

 唯はなぜ謝るのかと聞き、堕落の誕生経緯は省いて説明する。

 

「俺様はお前の隣に立つ資格なんてない」

 

「……」

 

「お前が拒絶するなら俺様はそれを受け入れる」

 

「……」

 

「すまない」

 

 俺様は唯に謝る。

 心の底から愛している女性を傷つけた存在を生み出した罪悪感から隣に立つことすら出来ないと話す。

 唯は黙って俺様の話を聞いていたが、突然口を開いた。

 

「ごめんね……今の火鳥は火鳥じゃないよ」

 

「なにを言って……?」

 

「うまく言葉に出来ないけど……今の火鳥からは何も感じないの」

 

「だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく顔を見せないで」

 

 唯からはっきりと拒絶された。

 俺様の中にある何かが音を立てて崩れていく。

 それからの記憶は曖昧だった。

 クラスメイトが見舞いに来てくれたが、なにを言っていたのかすら覚えていない。

 

「……俺はどうりゃいいんだ?」

 

 誰にも見られないように、夜の屋上で涙を流す。

 出会ってから初めて拒絶された。

 その事実が俺を苦しめる。

 

「俺は……」

 

 俺の【個性】が敵を生み出し、唯を襲った。

 俺が冷静さを失ったせいで、堕落の脳無が暴れる隙を作ってしまった。

 

 頭を抱え、ただひたすらに涙を流す。

 屋上から緑谷たちが()()()に行く姿が見えたが、止める気力すら起きない。

 緑谷たちの姿が見えなくなると、頭に浮かんだ言葉を呟く。

 

「俺は王にはなれない」

 

 林間合宿襲撃事件。

 俺は夢を失った。

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