キングオブキングな俺様のヒーローアカデミア   作:松田ゐふ

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ここまで応援していただいた皆様、誠にありがとうございます。
キングオブキングな俺様のヒーローアカデミアは今回で第1部【完】とさせていただきます。

このまま勢いに乗って第2部を始めていきますのでこれからも応援よろしくお願いいたします。


第60話

 オールマイトとオール・フォー・ワンの激闘から数日が経った。

 あの日の夜は《神野の悪夢》と呼ばれ世間を騒がせている。

 二人の戦いを俺は病室のテレビで見ていた。

 激しい戦闘が繰り広げられ、AFOの攻撃で満身創痍のオールマイトだったが、突然、()()()()()()()()()()()ことで形勢が逆転した。

 あの時、負った傷は見た限りでは全快し、おそらく古傷もだいぶマシになった思う。

 なぜそう言えるのか……それはオールマイトが俺の見舞いに来た日にまで遡る。

 


 

「オールマイト」

 

 塚内と呼ばれた警察とともに、病室を出ていくオールマイトを俺様は呼び止めた。

 

「ん?何かな鳳少年?」

 

「少しだけいいか?」

 

 オールマイトは塚内と目配せすると、病室に残ってくれた。

 

「忙しいのに……悪いな……」

 

「構わないよ。……それで要件を聞いてもいいかな?」

 

「……嫌な予感がしてな」

 

「予感?」

 

 俺様は布団を握りながら、これからの戦いに対して不安を吐露する。

 今なら分かるが、合宿での一件で弱気になっていたのだろう。

 

「だから敢えて言うぞオールマイト」

 

「何かな?」

 

「生きろ」

 

 俺様はそう言うと、呆気にとられたオールマイトの古傷に手を当てる。

 

「鳳少年……なにを?」

 

「俺様にできることなんてこれくらいしかない」

 

 昨夜、散々消費して燃えカスすら残っていない体力を前借りしてオールマイトに注ぎ込む。

 爆豪が攫われても、資格を持たない俺様がなにかできるわけでもない、それでも力になりたかった。

 今の俺様にできることなんて限られている。

 動けないなら、別に体力も必要ない。

 俺様は前借りした体力を全て消費し、これからの戦いに備えるオールマイトに注ぎ込む。

 古傷を暖かい炎が包み込み、オールマイトの中に入っていく。

 

「これで……多少は、マシに……なるはずだ……」

 

「私のために……ありがとう鳳少年!」

 

 オールマイトの古傷を癒したことで、体力が底をついた俺様はベッドに倒れ起き上がることができなくなる。

 満足に喋ることもできなくなり、次第に意識が遠のいていく。

 

「オールマイト……生きてくれ……」

 

「わかった」

 

 オールマイトが俺様の頭を撫でたような気がした。

 確かめることも出来ずに俺様は深い眠りに落ちた。

 


 

 俺はそんな事を思い出しながら、自室のベッドで寝転びながらネットニュースを読んでいる。

 どの記事もあの戦いの後に正式に発表されたオールマイトの引退について、不安を煽るような内容ばかりで辟易する。

 

 俺たちは神野での戦いの翌日に退院し、静岡の家に帰ってきた。

 あれから、唯とはまだ話せていないが伝えたい言葉は決まっている。

 

「……」

 

 部屋に飾ったブレスレットを手に取り少し勇気をもらう。

 

「……唯はこのまま雄英でいられるかな」

 

 今、1階のリビングでは唯と両親、校長とブラドキングが面談を行っている。

 U・S・J襲撃から始まり、保須市のステイン、死柄木弔との接触、林間合宿襲撃と度重なる事件により雄英は生徒たちの安全のために全寮制にすることを発表した。

 そのために教師たちは家庭訪問をしている最中だった。

 

 俺の場合は既にヒーローになることを決め、親父たちもそれを支えると言ってくれたので、特に揉めることもなく10分程度で終わってしまった。

 全寮制の話がでた瞬間に、2人揃ってお願いしますと頭を下げた時の呆気にとられれた相澤の顔は、不覚にも笑いそうになるくらいには面白かった。

 

「……ん?」

 

 唯の面談に参加するわけにもいかないので、結果がどうなったか気になっていると母さんからメッセージが来る。

 

「……よかった」

 

 内容は言わなくてもわかるだろう。

 安堵からか疲労からか俺は眠ってしまった。

 


 

 薄暗い地下に造られたラボのような場所で俺は、AFOがドクターと呼んでいた老人と会話していた。

 

『器はいつ完成するんだ?』

 

「そう急かすでない」

 

 ドクターは特殊な容器に入った因子()と会話しながら、培養液に浸かった腕を観察している。

 

「……脳無とは勝手が違うからのう」

 

『じゃあ遅くなるのか?そんなに待てねぇよ』

 

「二ヶ月もあれば器は完成しお主の定着に進めるだろうな」

 

『長ぇな……その間暇なんだけど』

 

「そこで大人しくしておれ……せっかく用意した体も駄目にした罰じゃ」

 

 ドクターは因子()に文句を言うが、仕方がないだろうあの体じゃ100%の威力で炎を使えばすぐに限界が来たんだから。

 

「優秀な炎熱系の持ち主から生きたまま肉体を繋ぎ合わせて、お主の蒼炎に耐えうる体を造ったというのに……」

 

 もったいないというドクターの顔は、人に向けるものではなかった。

 因子()はそんなドクターから培養液に浸かったに腕に視線を移した。

 切断面から僅かに神経や血管が伸びているそれは因子()をワクワクさせるには充分だった。

 

『早く器完成しねぇかな』

 

『そしたら殺しに行けるのに』

 

 因子()は器の完成を今か今かと待っている。

 


 

「それじゃ父さんたちは出掛けてくるから、二人は留守番頼むな」

 

 唯の家庭訪問が終わった日の夜。

 親父が気を利かせてこの家に俺と唯だけの状況を作ってくれた。

 唯の両親もなんとなく状況を理解したようで快く協力してくれたと親父が言っていた。

 唯一母さんだけは全く理解していないが何時ものことなので特に問題は無い。

 

 両親達を見送ると俺は部屋に戻ろうとする唯に声をかけ呼び止める。

 

「……唯、話がある」

 

「なに?」

 

 唯は訝しむように俺を見る。

 俺はその視線を真正面から受け止め、口を開く。

 

「ごめん」

 

「またそれ?」

 

 唯の声には少し苛立ちが込められていた。

 だが俺は話を続ける。

 ここで諦めたら二度と元に戻れないような気がしたからだ。

 

「合宿のことじゃない。お前の気持ちを理解せずに、勝手に罪悪感と自責の念に囚われてしまったことについてだ」

 

「……」

 

「俺はもう迷わない。彼奴がこれからどれだけ人を襲おうと、自分のせいでなんて思わない」

 

「その代わりヒーローとして彼奴を止めることにする」

 

「……」

 

 まだ唯は口を開いてはくれない。

 それでもこちらを見る目は先程とは変わっていた。

 

「俺はお前のために王様になるのはもうやめる」

 

「ッ!?」

 

「俺は……この世界を守る王様(ヒーロー)になる」

 

 そう言うと俺は唯の前で跪き手を差し出す。

 10年以上想い続けてきたこの気持ちを唯に伝える。

 

「……これからは俺の隣で支えて欲しい、俺の傍で見ていて欲しい……俺が王様(ヒーロー)になる瞬間を」

 

「唯、愛してる」

 

 俺は唯に告白した。

 心臓が破裂するくらいにバクバクと音をたてている。

 全身の血液が沸騰するくらい熱い。

 これまでの俺の人生でこんなに緊張する事なんてなかった。

 もし唯に断られたらと考えると震えが止まらなくなる、それでも勇気をだして伝えることにした。

 これからの目標と唯への想いを。

 

「……」

 

「……」

 

 唯からの返事が返ってこない。

 俺は唯の顔色を伺ってみる。

 

「えっ!?泣いてる!?」

 

 唯は泣いていた。

 大粒の涙を零し、余り変わらない表情を崩して泣いていた。

 俺の脳裏には最悪の結果がよぎり、立ち上がるとオロオロしながら唯の様子を伺う。

 

「嫌……だったか?」

 

 気づけば俺はそんなことを言っていた。

 

「ん!」

 

 唯の拳が俺の胸に当たるが痛くもなんともない。

 それでも唯はポコポコと俺の胸を叩き続ける。

 しばらく好きにさせていると、疲れたのか唯は息を切らして俺にもたれかかるように抱きしめてくる。

 俺も唯に合わせて背中に腕を回して互いに抱きしめ合う。

 

「唯……返事を聞かせてくれるか?」

 

「いいよ……」

 

 唯はこれまで見たなかでとびきりの笑顔を見せると、背伸びをして顔を近づける。

 俺はその行動の意味を理解して唯を受け入れる。

 

 俺たちの距離がなくなり、心地よい感触だけが残る。

 

 数秒、数十秒と触れ合うと一度離れる。

 

「唯、好きだ」

 

「私も大好き」

 

 一目惚れから始まり、長い間想い続けて今日それが実った。

 

 これから先、どんな事が起きるのかは分からない。

 でも大丈夫だと言えるだろう。

 だって俺は王になるべくしてなる男で、唯はその恋人だ。

 

 

 

「ここがハイツアライアンスか……俺の新たな城にふさわしいな」

 

 

 

 新しい雄英での生活が始まる。

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