「昨日、話した通りまずは《仮免》取得が当面の目標だ」
「「「「「はい!」」」」」
翌日、俺たちは教室で相澤から《仮免》について話を聞いている。
朝食時に唯との関係を根掘り葉掘り聞かれ朝から疲れた。
「ヒーロー免許ってのは人命に直接係わる責任重大な資格だ。当然、取得のための試験はとても厳しい。仮免といえどその合格率は例年5割を切る」
「仮免でそんなキツいのかよ」
話を聞いていると、雄英のヒーロー科入試の合格率と比べたくなったが、圧倒的に母数が違うため相澤の話に集中する。
「そこで今日から君らには一人最低で二つ…………」
相澤は指で廊下に合図を出すと、教室の扉が開きミッドナイト・エクトプラズム・セメントスが登場する。
「必殺技を作ってもらう!!」
「「「「「学校っぽくて!それでいてヒーローっぽいのキタァア!!!」」」」」
雄英に入学してから続くこのノリに俺も初めて乗った。
乗ったはいいが言うほど学校っぽいか?いや、ヒーロー科なら当たり前のことなのかもしれない。
一人で自問自答していると、必殺技がなんなのか教室に入ってきた3人が説明する。
「必殺!コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」
「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押しつけるか!」
「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」
「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館γへ集合だ」
相澤の言葉で一度解散し、俺たちは久しぶりにコスチュームに身を包むと体育館γに向かうのだった。
「
「略してTDL!!!」
(((((TDLはマズそうだ!!)))))
床一面コンクリートでできたこの場所で俺たちは必殺技についてより詳しく教えてもらう。
それはそうと《U・S・J》といい施設の略し方はなんとかならんのか、なぜアウトラインギリギリを攻めるのか理解に苦しむ。
「ここは俺考案の施設、生徒一人一人に合わせた地形やものを用意できる。台所ってのはそういう意味だよ」
確かにここならセメントスの【個性】を最大限活かした訓練ができるなと、体育館を見渡して納得する。
「質問をお許しください!」
飯田がさっそく教師陣に質問をする。
「何故仮免許の取得に必殺技が必要なのか!意図をお聞かせ願います!!」
「順を追って話すよ」
飯田を手で制して相澤はその意図を話し始める。
「ヒーローとは事件・事故・天災・人災……あらゆるトラブルから人々を救いだすのが仕事だ。取得試験では当然その適正を見られることになる」
「情報力・判断力・機動力・戦闘力……他にもコミュニケーション能力・魅力・統率力など多くの適性を毎年違う試験で試される」
「その中でも戦闘力はこれからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する」
「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有している事になるんだよ」
相澤の説明を補足するように、ミッドナイトとセメントスが付け加える。
「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。……例エバ飯田クンノ“レシプロバースト”」
「!」
「一時的ナ超速移動ソレ自体ガ脅威デアル為、必殺技ト呼ブ二値スル」
必殺技の一例としてエクトプラズムが飯田の“レシプロバースト”を挙げる。言われた本人はそんなつもりがなかったのか、プロに必殺技と認められ感激からか震えている。
「なる程……自分の中に『これさえやれば有利・勝てる』って型を作ろうって話か」
今の話を聞き、震える飯田を横目に砂藤が分かりやすく要約してくれた。
「そ!先日大活躍したシンリンカムイの“ウルシ鎖牢”なんか模範的な必殺技よわかりやすいよね」
「中断されてしまった合宿での『【個性】伸ばし』は……この必殺技を作り上げる為のプロセスだった」
「つまりこれから後期始業まで……残り十日余りの夏休みは」
セメントスが【個性】で地形を変えてく。コンクリートでできた床が盛り上がりいくつもの足場が形作られていく。
「【個性】を伸ばしつつ必殺技を編み出す」
エクトプラズムが【個性】で分身を作り出し、セメントスが造った足場にそれぞれ配置する。
「圧縮訓練となる!」
一瞬にして完成した必殺技作りに適した空間を前に相澤が話を締める。
「尚、【個性】の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良も並行して考えていくように」
「プルスウルトラの精神で乗り越えろ……準備はいいか?」
目の前の光景、これか始まる必殺技作りに俺たちは心を踊らせる。
それもそうだろう、子供の頃によく妄想した自分だけの技を実現できる機会を得たのだ。
「ワクワクしてきたぁ!!」
俺たちはそれぞれの足場に移動し訓練を開始した。
「さてどうするかな……」
皆が必殺技について悩み試行錯誤している中、俺は合宿での一件を思い出し、更に強くなるためにはどうすればいいか、考えるのだった。