キングオブキングな俺様のヒーローアカデミア   作:松田ゐふ

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第65話

「さてどうするかな……」

 

 周りを見渡すと各々必殺技作りに励んでいる。

 とにかく思いついたことをやってみて、生徒一人一人についているエクトプラズムからアドバイスを貰う者。

 実践の中で必殺技を試してみる者。

 既に自分の中で必殺技のイメージがある程度完成しており、それを形にしていく者。

 

「君ハ既二必殺技ヲ幾ツモ持ッテイルナ。ドウスル?新シイ技ヲ開発スルカ【個性】伸バシニ専念スルカ」

 

 エクトプラズムは俺の今の状況を教えて、選択肢を提示してくれる。

 俺は首を振るとどうしても気になっていることを口にする。

 

「合宿襲撃の際、今まで発現したことがない現象が起きた」

 

「トイウト?」

 

「俺の【個性】はフェニックスに変身するものだった。だがあの日、負の感情が抑えられなくなった……言うなれば極限状態とでも呼ぼうか。そんな状態で【個性】を使ったのだが、本来は再生時以外、変身せねば出せない炎が出たことに加え、腕が異形のようなものに変わったのだ」

 

 あの夜のことを話しながら、コスチュームの裾を捲り、プロテクターを外し、とっくに再生した切り落とされた右腕を見せる。

 

「今ハ違ウヨウダガ」

 

「あぁ敵を殴ったあとすぐに元に戻ったのだ」

 

「成程ナソレヲ自在二扱エルヨウニナレバ更二強クナレルトイウワケカ」

 

「そんなところだ」

 

 エクトプラズムは俺がやりたいことを理解したようで、使えるようにするために案を出し合ってくれる。

 

「前提条件トシテ強イ感情ノ昂リガ必要ナノカ」

 

「一応、あの時を思い出して怒った状態で試してみたが変化なしだ」

 

「ナラ……ン?」

 

「……」

 

「ナニヲシテイル?」

 

「いや、肉体の欠損がキーになるかなと思ってな。どうせ再生するんだ、腕が切り落とされる痛みも一度味わったし取り乱すこともない」

 

「駄目二決マッテイルダロウ!」

 

 左腕を翼に変え、右腕にあてがう。

 当然といえば当然だが、血相を変えた(と思う)エクトプラズムが急いで止めに入る。

 

「わ!?何をする!」

 

「生徒ノ自傷ヲ見過ゴスワケガナイダロウ!」

 

「治るから気にすなと言っているだろう!」

 

「ソウイウ問題ジャナイ!」

 

 数分間、俺とエクトプラズムは取っ組み合いをしていた。

 結局、意外と力があったエクトプラズムに止められ、俺は渋々変化を解いた。

 そこで俺は気づいた、エクトプラズムがなぜ必死になって止めたのか。

 

「何故ソウ思イ切リガイインダ」

 

「……これが手っ取り早いと思ったんだ……反省してる」

 

 強くなることに必死だった俺は視野が狭くなっていた。

 他でもない()()()()()()()の目の前で腕を落とそうとしたのだから……。

 そんな俺にエクトプラズムは特に何も言わず、少し優しいげな声色で話しかける。

 

「……今日ノトコロハ【個性】伸バシ二専念スルカ」

 

「そうする……異形化については別の方法を考えることにする」

 

「ソウシテクレ」

 

 気を取り直して、俺はエクトプラズムと組手を始めた。

 体を動かせば少しは頭がスッキリしていい考えも浮かぶかもしれない、それにエクトプラズムの足技を学ぶことができる。

 焦っても仕方が無いので、他の者より成長が遅くとも確実に進んでいくことにする。

 

 この日は、ひたすら組手を行った。

 成長した実感は湧かないが、それでも模索し続けようと思う。

 そういえばオールマイトが来ていたが、何をしていたのだろうか……組手に集中していたので、気づいた時には体育館の使用時間が終了していた。

 

「結局、異形化については進展無しか」

 

 組手の際に何度が試してみたがダメだった。

 何がダメだったのか分からずモヤモヤしている俺は、自室のベッドで寝転びながら右腕を見つめる。

 

「今日はもう寝るか」

 

 考え込んで疲れたのだろう、早く休んで明日に備えることにする。

 あわよくば精神世界で【フェニックス】と対話出来かもしれないと思い、眠りについた。

 


 

「噂をすれば何とやらだな」

 

「お前の要件は理解っている一体化についてだな」

 

「あれそんな名前だったんだな」

 

 自室で眠っていたはずの俺は、目を覚ますと見覚えのある暗い空間にいた。

 目の前には【フェニックス】がおり、異形化……一体化について話を始める。

 

「あれは余も想定外の出来事であった」

 

「じゃあ……再現は不可能か?」

 

「もう一度、あの時の状況を整理しよう」

 

 そうして俺たちはあの日の夜について振り返る。

 

「あの時は必死だったからな、あまり覚えていないんだ……正直な話、激しい怒りと憎しみに駆られていたことぐらいしか思い出せない」

 

「その為に余がいる」

 

【フェニックス】は辺りを飛び回ったかと思うと精神世界をあの日の夜の森に変えていく。

 

「お前……そんなことできるんだな」

 

「何年ここにいると思っている。余からすればお前は客人だぞ」

 

「なんて勝手な【個性】なんだ」

 

「話を戻すぞ……これはあの日の夜、あの戦いを余から見た光景だ」

 

 精神世界が完全に変化すると、森の中で腕を切り落とされた俺と堕落が向かい合っている。

 

「この時、余も同じだった。お前が大切に思っている彼奴を傷つけた此奴に怒りを感じていた」

 

 場面が切り替わり、変身していないのに炎を出した俺の姿が映る。

 

「この時、恐らくだが余の想定を超えた事象が起きた。普段は余に変身することで炎を使用しているが、この瞬間は……そうだな分かりやすく言えば、ダムの決壊とでも言うべき状態だった」

 

「……怒りのあまりダムの放流(変身というプロセス)を無視して、ダムが決壊した(お前の炎が漏れ出た)という解釈で合っているか?」

 

「それで構わぬ」

 

 精神世界のスクリーンで状況を再確認し、あの時の一体化がなぜ起きたのか整理していく。

 精神世界は一体化したあの瞬間に切り替わっていた。

 

「ここだな。お前の腕が余の翼と混ざり新たな形となった瞬間だ」

 

「俺は堕落を殴る……その一心だった」

 

「余も似たようなものだ」

 

「……だが怒りと同時に余はこうも思った。余に腕があれば彼奴を殴れると」

 

 段々と一体化の条件が見えてきた。

 

「なら俺たちの思いが重なり、お前が体を求めることで、欠損をキーに一体化する……これが条件か」

 

 俺が一体化の条件について仮説を建ててみたが、【フェニックス】は首を振る。

 そして俺の前に立ったと思えば口を開き、条件について話し始める。

 

「一体化には余とお前のシンクロ率が重要になる」

 

「急に俗っぽくなったな……漫画にでも影響されたか?」

 

「茶化すでない……話を戻すぞ。余とお前の感情や想いが一定の重なりをみせた時に一体化は起こると思う」

 

「あの時は共通の敵に対する怒りか」

 

「そうだ」

 

「ならどうすればいい?互いを理解するために茶会でも開くか?」

 

「その必要は無い」

 

【フェニックス】が言うシンクロ率とやらを高めるために、どうするか聞いてみると【フェニックス】は口を開く。

 

「古来より互いを理解し絆を深めるための方法がある」

 

「それは?」

 

「殴り合いだ」

 

【フェニックス】の体が光に包まれる。

 光は徐々に人の形に変わる。

 

「その姿は?」

 

「人の姿でなければ殴り合いはできぬであろう。それともお前はこの姿の余を殴れないのか」

 

 光が収まると【フェニックス】は人化していた。

 俺と同じ橙色と白色の髪を肩辺りまで伸ばした女性の姿に変わった【フェニックス】は、鋭い瞳は金色に光らせ俺を見つめている。

 背丈は俺の方が高いが、それでも女性にしては高い身長に、細身ながら引き締まった体は実戦向けの筋肉がついている。

 総じて俺をそのまま女に落とし込んだような姿をしている。

 

「余から一本取ってみせよ」

 

【フェニックス】は腕を回し、これから始まる戦闘のアップを始める。

 

「勘違いするな、お前は挑戦者(チャレンジャー)だ」

 

 俺も構えをとり、始まりの瞬間を待つ。

 

 変化した精神世界の木々が揺れ葉が地に落ちる。それを合図に俺たちは接近し、拳を打ち合った。

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