「おはよう」
「おはよう鳳くん!」
「おはよう……ってなにその怪我!?」
「気にするな……どうせすぐ治る」
「そういうものではないだろう!?」
朝起きると、共同スペースで歯を磨いていた緑谷たちと会ったので挨拶をすると、顔が腫れていることに驚かれた。
眠っている時に【フェニックス】と殴り合いをしたと言っても信じてもらえるわけもない(この二人なら信じそうだが説明が面倒な)ので、ベッドから派手に落ちたと誤魔化す。
実際、腫れ自体はすぐに治ったので二人もそれ以上は詮索することはなかった。
「平気ならいいんだけど……あッ!そうだった!」
「どうした急に?まだ俺の顔に何か付いているのか?」
俺の顔の腫れが治り、歯磨きをしていた緑谷がいきなり声を上げ俺の方を見る。
「ち、違うよ!そうじゃなくて鳳くんに蹴り主体の戦い方を教えて欲しかったんだ!」
「……すまんが一から説明してくれ。どこをどうしたら俺に戦い方を教えてもらう流れになるんだ?」
「ご、ごめん。実はね……」
緑谷は慌てて昨日の出来事を話し出す。
まとめると、度重なる腕の破壊によって靭帯が劣化し、あと数回同じような怪我を負うと二度と腕が使えなくなると医者に言われたそうだ。
それにより、今までのような戦闘スタイルやコスチュームでは不安が残るため、昨日の夕方に靭帯の負担をアイテムで軽減できないか工房へ相談しに行ったらしい。
そこでサポート科の
「そういうことなら構わんぞ。俺も改めて基礎を見つめ直したかったからな」
「ほんと!ありがとう!」
緑谷やぱぁっと顔を明るくすると、笑顔で食堂の方に向かっていった。
緑谷たちが洗面所を出たのを確認すると、鏡に映る俺を見る。
一体化をものにするために【フェニックス】と殴り合いをしたのだが、現実の俺が目覚めるまでの間に決着はつかなかった。
「【フェニックス】必ず俺が勝つからな」
(やってみよ)
鏡に映る俺が不敵に笑った気がした。
「さて今日もやろうか」
「もう三日目だがまだ一本も取れていないぞ?」
「そう言っていられるのも今のうちだ」
精神世界で今夜も【フェニックス】と戦う。
見た目が違うだけで互いの実力はほぼ互角で、現実の俺が目覚めるまでに勝負がつかない。
初日から始めてもう3日が経過した。
今ではコイツがどう動くかわかってきた。
「だがそれはお前も同じだろ!」
「その通りだ」
俺の拳を受け止めた【フェニックス】は、腕を掴んだまま至近距離から蹴りを放つ。
俺は掴まれてる腕を無理矢理引き剥がし、腹に向かってくる蹴りをガードし後方に飛び威力を受け流す。
「だがそれも今日で終わりにする!」
互いに距離を取り出方を伺っているが、状況を変えるために俺が攻めに出る。
「昨夜もそれで何か変わったか!」
「変えるんだよ!今からな!」
【フェニックス】の考えを行動を理解して隙を突いていく。緑谷に蹴り主体の動きを教えたことで、自分自身の技を見つめ直すことが出来た。
「弱点がないことが弱点だと!相澤!皆の前では恥ずかしくて言えんかったが俺にもちゃんと弱点があったぞ!」
【フェニックス】の死角から蹴りを放つ。
ギリギリで避けられるが、次の攻撃に繋げて【フェニックス】が攻める隙を与えない。
「俺は唯が……皆が傷つくのが怖い!もう二度とあんな経験はしたくない!……だから俺は強くなるんだ!!」
「ぬっ!?」
攻撃の速度に緩急を付け、【フェニックス】のリズムを崩して攻める。
今まで得た経験を活かして【フェニックス】を追い込んでいく。
「俺は一度地に落ちた!……だが折れた翼は更に大きく強くなり……俺をPlus Ultraさせる!」
更に速度を上げ【フェニックス】の反応速度を突破する。
それでも致命傷を避け、俺に喰らいついてくる【フェニックス】に勝負を決める為に全力の拳を放つ。
「それはもう見た!」
【フェニックス】も俺の行動を読んでいたのか、恐らく全力の拳で迎え打つ。
ここまでは昨夜までと同じだ、毎回ここで激突した後互いに吹き飛び俺が目覚めるの繰り返しだった。
だが今夜は違う。
「なッ!?」
振り上げた拳を下ろし、速度を落とす。
いきなりのことで【フェニックス】は対応できないだろう。
そのままの勢いで接近する【フェニックス】の顔の前で手を大きく鳴らす。
相撲で言うところの猫騙しというやつだ。
【フェニックス】の体が強ばった。
「俺の勝ちだ!」
その隙をついて、拳を放つ。
俺の拳は【フェニックス】の顔面スレスレで止める。
「は?」
「隙あり」
拳の代わりに額にデコピンを放ち一本を取った。
床に座り込む【フェニックス】に手を差し伸べる。
「俺の勝ちだ……理解できたか?」
「王を名乗るものが卑怯だぞ」
俺の手を握り体を起こす【フェニックス】は悪態をつきながら俺を真っ直ぐに見つめる。
「正道も邪道も俺の王道だ」
「理解したか……これが俺だ!」
「あぁ嫌という程理解した」
【フェニックス】……フェニックスは人の姿から変わり元の鳥の姿へと戻る。
「これからもお前の夢のため余の力を貸してやる」
「ありがとよ」
ようやく一歩進めた気がした。
ずっと足踏みし続けていた俺がやっと前に進めた。
今この瞬間を俺の伝説の一頁に刻むとしよう。