「今日モ【個性】伸バシヲ兼ネテ組手ヲスルカ」
翌日、俺は今日も体育館γで仮免取得に向けて訓練に励んでいた。
「そうだな……新しいことも試してみたいし、組手に付き合ってくれ」
「ワカッタ」
昨夜フェニックスとの殴り合いに勝利し、互いを理解したことで、俺たちのシンクロ率が高まり一体化が可能になったと教えられた。
「始めから全力で行くぞ」
「構ワナイ」
初めて一体化を実戦で使うので、エクトプラズムに前もって伝えておく。
互いに距離を取ると、俺はフェニックスと息を合わせる。
「「融合!!」」
フェニックスが一体化の合図として定めた言葉とともに、俺の右腕から爆炎が放たれ、その形を変えていく。
髪も少し伸び、一部が赤く染まる。
瞳の色が赤から金色に変わる。
「ソノ姿ハッ!?」
右腕の爆炎を払うとその姿が露になる。
合宿時と比べて、分厚かった腕は細く鋭利になり、赤い羽根が覆い尽くしていたが数が減ったのか所々皮膚が露出おり、触れたもの全てを傷つける鋭利な爪は短くなったが、その切れ味は変わっていないことを示すかのように黒く輝いている。
「ついに一体化をものにしたんだ……安心しろあれから自分を傷つけるようなことはしていない」
初日にやらかしたのでエクトプラズムに一応伝えておく。
とにかく組手の準備が整ったので、エクトプラズムと一体化を慣らしていく。
この状態になるとフェニックスと目が共有され、“王の瞳”が常時発動している。
“王の瞳”は発動すると個性因子とその因子を持つ者の輪郭が見えるだけで、壁等は透けてしまう欠点があった。
だが、その欠点は一体化によって解消された。
「昨日ヨリ格段二強クナッテイルッ!?」
エクトプラズムが俺の強さに押されている。
昨日までと違うと実感し、これ以上一体化を進めるとどうなるのか好奇心が湧いてくる。
そんな時だった。
爆豪が新技開発の為に的にしたコンクリが崩れ、真下にいるオールマイトへ向かって落ちていく。
別方向から緑谷が飛び出したのが見えたので、俺はフェニックスとの一体化を進め肩甲骨から翼を生やすと、オールマイトのもとへ向かう。
「オールマイト!伏せろ!」
俺はオールマイトを翼で覆うと、緑谷が蹴り砕いた瓦礫から守る。
オールマイトは落ちてくる瓦礫には目もくれず、新たなスタイルを獲得した緑谷の成長を目に焼き付けていた。
「様になってるじゃないか」
体育館での訓練の後、蹴り主体の動きを実戦形式で教えていたが、元々飲み込みが早いこともあり、数日で通用するものになっていた。
「大丈夫でしたか!?オールマイト!」
着地した緑谷は、オールマイトのもとに駆け寄り怪我はないか確認する。
「ああ!」
「何 緑谷!?サラッとすげえ破壊力出したな!」
「おめーパンチャーだと思ってた」
「上鳴くん!切島くん!」
瓦礫騒ぎで周りにいた皆が集まってくる。
近くにいた上鳴や切島は緑谷のキックに驚いている。
「破壊力は発目さん考案の
緑谷が足に装備した新たなアイテムについて解説し、破壊力について皆に教える。
「方向性が定まっただけでまだ付け焼刃だし、必殺技と呼べるものではないんだけど……」
「いいや!多分付け焼刃以上の効果があるよ。こと仮免試験ではね」
まだまだだと言う緑谷をオールマイトが励ます。
しかし、今の言い方に何か違和感を感じた。
仮免試験では付け焼き刃以上の効果がある……そういう事か。
例年通りなら仮免試験は他校の生徒と合同で受ける。その際、ふるい落としの試験があるとすれば雄英体育祭で【個性】が割れている俺たちは必然的に不利になるだろう。
だが、緑谷は新たなスタイルを得たことで初見殺しが可能になり、パンチとキックという選択肢を相手に突きつけることができるわけだ。
「緑谷もそうだけどよ、鳳もなんだその姿」
俺がオールマイトの言葉の違和感に気づき満足していると、切島に声をかけられる。
「【個性】伸ばしで新たに得た能力だ。フェニックスに変身すると、腕が翼に変わるせいで何かと不便を感じていたからな、この状態なら腕も使えて機動力も維持できる」
「また先に行かれちまったな」
「王だからな……それにお前たちだって色々変わっているではないか」
「おう!ニュースタイルはお前らだけじゃねぇよ」
切島や上鳴だけでなく皆もコスチュームを改良し、仮免試験に向けて各々準備している。
「そこまでだA組!!!」
コスチュームや新たな技について話していると、入口からブラドキングの声が体育館に響き渡る。
「今日は午後から我々が
「B組」
「タイミング!」
上鳴が緑谷にサポートアイテムを実演しようとしたところで、B組と交代の時間が来てしまう。
「ねぇ知ってる!?仮免試験試験って半数が落ちるんだって!……
またA組に嫌味を言う物間を無視して、俺はB組の中にいる唯のもとへ向かう。
「唯、久しぶりだな」
「んん」
(おおげさ、あれから五日だよ?)
「五日も直接会ってなかったんだ……忙しいとはいえ、せっかく付き合ったんだから……」
「ん」
(甘えんぼかな)
「頭を撫でるな……皆が見ている」
「ん」
(見せつけようよ)
「何をイチャイチャしてるんだい!?」
五日ぶりに唯と直接話せたのに、空気を読まず物間が叫ぶ。
「物間やめなって。あの二人やっと付き合えたんだからさ」
「初耳なんですけど!?」
「……言ってなかったのか?」
「ん」
(物間にはね……うるさいから)
「あぁ」
「なんだいその顔は!?」
皆の反応を見る限り、どうやらB組の中で唯一俺たちが付き合ったことを教えて貰っていなかったらしい。
俺たちがそんな茶番をしていると、常闇が先程の物間の発言について口を開いた。
「……しかし同じ試験である以上、俺たちは蠱毒……潰し合う運命にある」
「だから、A組とB組は別会場で申し込んである」
常闇の心配に相澤が別会場だから大丈夫と言う。
「ヒーロー資格試験は毎年6月と9月に全国三ヶ所で一律に行われる。同校生徒での潰し合いを避ける為、
「ホ」
ブラドキングがより詳しく試験について説明してくれる。
その説明を聞いた物間だが、安心したかのように「ホ」っと言った。
「直接手を下せないのが残念だ!」
「無理だぞ?」
「病名のある精神状態なんじゃ?」
物間の言動に対して上鳴たちがツッコミを入れる。
「どの学校でも…………そうだよなフツーにスルーしてたけど、他校と合格を奪い合うんだ」
「しかも僕らは通常の過程を前倒ししている」
ギャグっぽくなった空気を瀬呂と緑谷が変えてくれる。
二人の会話を続けるように相澤は話し始める。
「1年の時点で仮免を取るのは全国でも少数派だ。……つまり、君たちより訓練期間が長い者。未知の【個性】を持ち洗練してきた者が集うワケだ」
「試験内容は不明だが明確な逆境であることは間違いない。意識しすぎるのも良くないが忘れないようにな」
相澤の言葉に俺たちの気持ちが引き締まる。
仮免試験まであと五日程だがやれることは全部やろう。
必ず仮免試験を合格できるように俺たちは訓練に励むのだった。