キングオブキングな俺様のヒーローアカデミア   作:松田ゐふ

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第70話

 一次試験を一抜けした俺は、ターゲットから流れる案内に従い、控室へと向かい試験が終わるのを待っていた。

 控室には大きい机と椅子がいくつかあり、机の上にはご自由にどうぞと水やティーパックやパンや菓子が置いてあった。

 

「なかなか充実してるな」

 

 部屋に置かれたポットからお湯をコップに注いで、ティーパックを入れる。

 必ず通過するであろうクラスメイトの為にもう一つ準備しながら、モニターに流れる試験の映像を見る。

 

 皆苦戦しているようだが、訓練の日々を知っている俺はそこまで心配はせず信じて待つことにした。

 

「あんたは!?雄英の!!」

 

「始まってすぐアナウンスがあったからビックリしたっス!」

 

 控室に新しく人が入ってきた。

 その声は大きくとても聞き覚えがあった。

 士傑の夜嵐イナサが俺の方に近づいてくる。

 

「……お前も120人脱落させたらしいじゃないか」

 

「見ててくれたんスね!」

 

 この控室に二人しかいないこともあり、俺は夜嵐と話すことになった。

 断ることも出来たが、気まづい空気になるのが耐えられなかったのだ。

 

「お前の活躍凄かったぞ、特に【個性】の練度が高いな」

 

「うっす!鳳さんに比べたらまだまだっス!」

 

「……タメだから呼び捨てでいいぞ」

 

「うっす!」

 

 うち(A組)にいないタイプだからか、慣れないが話しているうちにテンションが凄いだけで普通に良い奴だということはわかったので、会話につまることはなく互いの授業内容や実戦訓練についてなどの話をした。

 

 しばらく話して大分打ち解けたと思ったので、ずっと気になっていたことについて聞くことにした。

 

「夜嵐……俺の勘違いなら悪いが、轟のことを敵視してるよな」

 

「っ!?」

 

 俺の話を聞いた夜嵐の顔が歪む。

 会場前で会った時から、轟に向ける視線だけ他と違っていたので、気になっていたのだ。

 夜嵐の反応を見ると、その予想は的中しているようだ。

 

「……なんでそんなこと聞くんスか」

 

「お前がなぜ轟を嫌うのか気になったからな……余計なお節介ってやつだよ」

 

「……昔、俺はエンデヴァーにサイン貰いに行こうとしたんだ……でも邪魔だって言われたよ。あの目を俺は忘れない」

 

 俺の顔を見ていた夜嵐がポツポツと話し始めた。

 

「雄英の推薦入試で轟と会った時……すぐに誰かわかった……同じ目をしていたから。それでも仲良くしてみようと歩み寄った……でも彼奴はエンデヴァーと同じだったんだ」

 

「なるほどな……」

 

 夜嵐の話から状況が容易に想像できた。

 当時の轟はエンデヴァーに対する憎しみに囚われていた、今でこそ自分の中で一応ケジメをつけ入学時より態度が軟化したが、夜嵐はそれを知らない。

 

「確かに轟が悪いな……」

 

「そうっスよね!」

 

「俺からも一言伝えておく」

 

 夜嵐は俺が自分の主張に乗ったことで、気分が少し良くなったのか、テンションが少し戻った。

 

「だから俺からも一ついいか?」

 

「なんスか?」

 

「今日……轟の目をしっかり見たか?」

 

「え?」

 

「お前が轟に対していい感情を持っていないことはわかったよ……でも再会して轟が変わったことに気づいたか?」

 

「いや……それは……」

 

 俺が轟について聞いてみると、夜嵐はしどろもどろになる。

 

「別に悪いとは言ってない……原因を作ったのは轟だ。お前が轟が変わったことに気づかないのも無理はないさ」

 

「……」

 

「だから……もう一度だけ話してみてはくれないか?詳しいことは轟の了承がないと話せないが、彼奴は過去に囚われるのをやめて前に進んでいる。だから……頼む」

 

 俺は頭を下げた。

 これは轟のためでも夜嵐のためでもない、ただの自己満足だ。

 過去にケジメをつけて俺たちに歩み寄ってくれた轟が誤解されたままなのは嫌だった。

 だから俺が勝手にお節介を焼いた。

 

「なんであんたが頭を下げるんスか」

 

「……彼奴はクラスメイトでライバルで友達だからな」

 

「わかった……あんたに免じてもう一度だけ話してみるっス」

 

「ありがとう」

 

 夜嵐は俺の話を聞いて、轟にもう一度歩み寄ってくれるようだ。

 それを聞いて安心した俺は控室の入り口からこちらに向かって歩いてくる轟を呼ぶ。

 

「……そうだ夜嵐」

 

「ん?」

 

「さっきのことは秘密な」

 

「わかったっス」

 

 俺は夜嵐から離れ轟に近く。

 

「轟、彼奴から話があるそうだ……ちゃんと聞いてやれ」

 

「お、おう」

 

 それだけ伝えると、俺は少し離れたところで二人を見守るのだった。

 


 

「どうやら上手くいったようだな」

 

 紅茶を飲みながら轟たちの様子を見ていたが、無事に仲直り出来たようで安心した。

 俺はモニターに視線を移すと、残り10枠にまで試験は進んでいた。

 

「皆さん大丈夫でしょうか」

 

「要らぬ心配をするな……彼奴らは必ず通過する」

 

「言い切るね」

 

「当たり前だ。彼奴の努力を見てきた俺が言うんだ……間違いない」

 

 試験を通過した八百万や耳郎と話ながら試験の行方を見守る。

 皆を安心させるために大丈夫だと言ったが内心は俺も不安だ。

 それでも王として不安に思っている素振りは見せず、信じることにした体を装う。

 

「それにしても緑谷たちがやかましいな……何かあったのか?」

 

「なんか士傑の女子と色々あったらしいよ」

 

「なるほどな……」

 

 急に騒がしくなった緑谷たちについて耳郎に聞いてみると、士傑の生徒と何かあったらしい。

 俺は緑谷たちの視線の先にいる女子生徒を見てみる。

 

「……」

 

「どうかした?アンタも士傑の女子見てさ」

 

「いや……なんでもない」

 

 士傑の女子生徒からなんとも言えない気配を感じたが、気のせいだと思い視線を戻す。

 だからだろうか、俺の視線に気づいた女子生徒がこちらを見ていたことに俺は気づかなかった。

 

「……やるな」

 

 モニターでは青山が機転を利かせてバラバラになっていたクラスメイトが集まり、ラストアタックを仕掛けている。

 全員が力を合わせて次々に通過していく。

 最後の二枠を飯田と青山が通過するとアナウンスが入る。

 

『100人!!今埋まりました!!終了です!!ッハー!!これより残念ながら脱落してしまった皆さんの撤収に移ります』

 

「控室の入り口近くで飯田達を迎えてやるか」

 

「アンタ……ホントに変わったよね」

 

「気のせいだ……お前たちのおかげだ」

 

「えっ?」

 

「ぼーっとしてどうした?行くぞ」

 

 俺は耳郎たちを誘い入り口まで移動する。

 飯田たちがこちらに向かってくるのが見えてくる、俺は皆の分のドリンクを用意して労うことにした。

 

「一次試験通過おめでとう。疲れたろ、紅茶にコーヒーに水、好きなのを飲んでくれ」

 

「鳳くん!わざわざありがとう」

 

「気にするな、王として臣下を労うのは当然のことだ」

 

「これこれ!鳳はこうでなきゃね!」

 

「お前……こういう気遣いできたんだな」

 

 飯田たちを労いながら、控室の方へ視線を向ける。

 緑谷たちが、1年A組全員が一次試験を通過したことに喜んでいるのが見えた。

 俺たちもその輪に加わるように控室へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

ヒーロー仮免許取得試験 一次試験 1年A組全員通過

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