俺たちは始業式が行われるグラウンドに向かっていた。
「A組は仮免試験どうだったのかなぁ~!!?」
野生の物間が現れた。
相変わらず喧しい。
「B組物間!相変わらず気がふれてやがる!」
「……でもこのパターンは……さてはオメーだけ落ちたな」
「ハッハッハッハッハッ」
毎度のことのようにテンションがおかしい物間は、俺たちに茶々を入れてきたが、切島の言葉を聞くと、急に落ち着き決めポーズとともに結果を知らせる。
「こちとら全員合格さ」
「なるほどな」
「そ・れ・よ・り……爆豪くんと緑谷くんはどこかなぁ?」
「うっ……それは」
「聞いたところによると……ケンカして謹慎なんだってねぇ!いつかやるとは思ってたけど!ついに問題を起こしたねぇッ!?」
何故か、うちのクラスの2人が喧嘩して謹慎処分を受けていることを知った物間はここぞとばかりに煽ってくるが、拳藤の手刀で意識を失った。
「ん」
(なんか久しぶりだね)
「そうだな……。仮免で互いに忙しかったし、連絡は取り合ってたが、こうして会うのは1週間ぶりくらいか」
「ん」
(大変だったもんね)
「……今更だが仮免取得おめでとう」
「火鳥もね」
「……不意打ちはずるいぞ」
物間が静かになったので、唯と仮免取得を祝っていたら、急に耳打ちで話しかけられてドキッとした。
そんなことをしているといつものように峰田が血涙を流しながら、俺ににじり寄ってくる。
「鳳ィ!許さんぞ!……お前だけは!お前だけは!!」
「峰田落ち着け!?相手は鳳だぞ!?」
「イケメンが女にモテるのはわかる……でもそれはそれ!これはこれだ!目の前でイチャつきやがってぇ!!」
物間と同じように、峰田のこれにも慣れたものだ。これを見ると日常に戻った感じがする。
「なに微笑んでんだよ!」
「峰田くん!静かにしたまえ!!」
俺は別に気にしてないが、周りに迷惑がかかると飯田が峰田を止めた。
「んん」
(そういえば、ブラド先生から聞いたんだけど、二学期からはクラス合同で行う授業もあるみたいだよ)
「模擬戦だったらまた手合せができるかもな」
「ん」
(今度は負けないよ)
「どれだけ強くなったか見せてもらおうか」
「ん」
(火鳥が見てないところで特訓したからね)
「そうか……一緒に暮らしてた時はほぼ毎日、特訓を見ていていたが……寮だと機会がないからな」
「あ」
「ん?」
唯と話していると、周りが急に静かになった。
俺はなぜだと思い首を傾げたが、自分の発言に気づいた。
「お、お前ら……ど、同棲してたのか!?」
「……しまった」
「その反応マジかよ……」
「ん」
(火鳥にしては珍しい失敗だね)
「スマン」
「んん」
(全然大丈夫だよ。むしろ火鳥が素を出せるくらいに、クラスメイトと打ち解けたんだってわかったから安心したよ)
「……そうか」
俺たちの同棲について騒いでいる皆をよそに、俺は唯の言葉に虚をつかれた。
確かに思い返してみると、これまで唯以外の誰かとこれほど打ち解けたことなんてなかったから、自覚していなかったが、俺はこのクラスが好きになっていたようだ。
「ん」
(大事にしなよ)
「お前は俺の母さんか」
「ん///」
(どうせならお母さんよりお嫁さんがいいな///)
「ッ!?……あまりそういうことを言うな///」
唯が小声でとんでもないことを言ってきた。
最初からそのつもりでいたが、唯の方から言われるのは初めてだったので、表情管理が出来ず赤面する。
「君たち落ち着きたまえ!!」
俺の突然のカミングアウトから始まった騒ぎは、収拾がつかないなっていた。飯田が皆に注意するが、あまり聞いていないようだ。
「オーイ……後ろ詰まってんだけど」
「すみません!!さァさァ皆、私語は慎むんだ!迷惑がかかっているぞ!」
「かっこ悪ィとこ見せてくれるなよ」
「心操!久しぶりだな」
「あぁ」
夏休み前までは週に何度か俺たちの家で特訓をしていたが、夏休みに入ると色々と都合が合わなくなりそれっきりになっていたが、元気そうで良かった。
「体……仕上がってきてるな」
「鳳の特訓メニューのおかげだよ」
「……俺は毎朝5時に寮の近くをランニングしている。都合が着くならその時に少し組手でもするか?」
「頼む」
「都合のいい日に連絡してくれ」
「おう」
心操はそう言うと、普通科のクラスメイトとグラウンドに向かった。
I・アイランドに誘った時、相澤から特訓をつけてもらえると言っていたから、このままいけば編入は確実だろう。
もしかしたら、ヒーロー科編入前に一緒に授業を受ける機会があるかもしれない。俺は二学期に期待を膨らませた。
「ん」
(良かったね)
「ああ」
「鳳くん!君も早くグラウンドに向かうんだ!」
「わかっている」
さっきまで騒がしかったウチのクラスも、足早にグラウンドに向かっていった。
俺は唯の傍を離れると、A組の後を追うのだった。
「ご迷惑おかけしました!!」
三日後、緑谷の謹慎が解けた。
この三日間、俺たちは相澤から授業内容等の禁じられていた。
HRで聞いたインターンや、急に進んだ授業について話している俺たちを見て、緑谷はモヤモヤしていた。
「デクくんオツトメごくろうさま!!」
「オツトメって……つかなに息巻いてんの?」
「この三日間でついた差を取り戻すんだ!」
「あ!良いな!そういうの好き俺!」
翌日。
爆豪の謹慎が解けた。
「全員が揃ったところで、本格的にインターンの話をしていこう」
A組が全員揃ったので、始業式に軽く説明されたインターンについて、相澤は本格的に話してくれるようだ。
「入っておいで」
「ん?」
「?」
「職場体験とどういう違いがあるのか。直に経験している人間から、話してもらう」
話が始まると思ったら相澤は廊下に向けて声を掛けた。
扉が開き外から三人の生徒が教室に入ってくる。
「多忙な中、都合を合わせてくれたんだ、心して聞くように。……現雄英生の中でもトップに君臨する3年生の3名……」
「通称……雄英ビッグ3」
金髪のガタイの良い男子生徒、青色がかった長髪の女子生徒、黒髪の猫背気味の男子生徒。
その中で俺は、金髪の男子生徒だけは見覚えがあった。去年、唯と一緒に見ていた雄英体育祭で、悪い意味でインパクトを残したからだった。
「あの人たちが……的な人がいるとは聞いてたけど……!」
「びっぐすりー」
「めっちゃキレイな人いるし、そんな感じには見えねー……な?」
皆が言うように、この3人から特別強そうな気配は感じない。だが、相澤がトップに君臨すると言ったのだから、その実力は本物なのだろう。
「じゃ手短に自己紹介よろしいか?天喰から」
相澤から名前を呼ばれた、天喰は弱々しい表情からこちらを威圧するような険しい顔に変わる。
その迫力に皆は身じろぐが、俺は強者の圧に口角が上がる。
「駄目だミリオ……波動さん……」
「ジャガイモだと思って臨んでも……頭部以外が人間のままで、以前人にしか見えない……後、目の前の子が俺を見て笑ってる……。どうしたらいい?言葉が出てこない……」
「は?」
「頭が真っ白だ……辛いっ……!」
「帰りたい……!」
先程の圧は何処へ行ったのか、天喰は俺たちから背を向け、黒板に額を押付けてしまう。
「雄英……ヒーロー科のトップ……ですよね……」
「あ!聞いて天喰くん!そういうのってノミの心臓って言うんだって!ね!人間なのにね!不思議!」
「彼はノミの『
天喰に波動と呼ばれた女子生徒は、二人の自己紹介をして軌道修正を図ったと思ったが、急に障子に近づいた。
「けどしかし、ねぇねぇところで君は何でマスクを?風邪?オシャレ?」
「!」
波動は急に障子に疑問をぶつけた。
しかも、障子のデリケートな部分について、なんの躊躇いもなくぶっ込んだ。
「これは昔に……」
「あら、あとあなた轟くんだよね!?ね!?何でそんなところを火傷した!?」
波動は障子の答えを聞かずに轟を標的に定めた。
誰か止めてくれ、このままだと暗い過去を持つ奴のウィークポイントを的確に撃ち抜いていくぞ。
「……!?それは……」
「芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる?動くの?ね!?峰田くんのボールみたいなのは髪の毛?散髪はどうやるの!?蛙吹さんはアマガエル?ヒキガエルじゃないよね?鳳くんの髪は何でユラユラしてるの?どの子も皆気になるところばかり!」
轟の話を聞かずに、次々に俺たちに疑問をぶつける波動。
校外活動について説明するはずが、俺たちの気になる部分を片っ端から聞き出してくる。
因みに、俺の髪が揺らめいていいる理由は、俺にも分からない。物心ついた時から揺れていたので【個性】の影響だとは思うが、はっきりとした理由は俺も知らない。
「天然っぽーいかわいー」
「幼稚園児みたいだ」
「オイラの玉が気になるってちょっとちょっとー!!?セクハラですって先パハァイ!!」
「違うよ」
校外活動の説明の前に
「ねぇねぇ、尾白くんは尻尾で体を支えられる?ねぇねぇ答えて気になるの」
「合理性に欠くね?」
「イレイザーヘッド安心して下さい!!大トリは俺なんだよね!」
波動があまりに自分勝手に喋るので、とうとう相澤がキレた。
ミリオと呼ばれた男子生徒は、冷や汗をかきながら大丈夫だと言う。
「前途ー!!?」
急にレスポンスを求められたが、いきなり言われても返せるわけがないだろう。
まだ、皆元気かなー?みたいな答えやすいものなら何とかなったかもしれんが、四字熟語は無理だろう。
「多難ー!っつってね!」
「よォしツカミは大失敗だ」
雄英はメンタルが強くなければいけない決まりでもあるのだろうか?
プレゼント・マイクといいミリオといい、スベってなんともいえなくなった空気で、よく平気でいられるな。
「……3人とも変だよな?ビッグ3という割には……なんかさ……」
「風格が感じられん」
3人の様子に、皆もこれが雄英のトップなのかと疑問を抱き始める。
「まァ何が何やらって顔してるよね。必修ってわけでもない校外活動の説明に、突如現れた3年生だ。そりゃわけもないよね」
先程のハイテンションから急に真面目な表情になったミリオは淡々と話し始める。
「1年から仮免取得……だよね。フム。今年の1年生ってすごく……元気があるよね……。そうだねェ……何やらスベリ倒してしまったようだし……」
「ミリオ!?」
「君たちまとめて俺と戦ってみようよ!!」
「「「「「え……ええ~!?」」」」」
ミリオからの突然の提案に皆が驚く。
「俺たちの
「好きにしな」
こうして俺たちは、雄英ビッグ3の1人……ミリオと戦うことになったのだった。