「君たちまとめて俺と戦ってみようよ!!」
ミリオからの突然の提案で、俺たちは戦うことになった。
相澤が許可を出したため、皆戸惑いながらも体操服に着替えて、仮免試験でお世話になった体育館γに集まった。
「あの……マジすか」
「マジだよね」
瀬呂が本当に、一人でA組21人と戦うのかミリオに聞く。
体をほぐしながら、ミリオは本気だと返す。
その様子を見て、体育館の壁に頭をもたれて俺たちに背を向ける天喰が口を開く。
「ミリオ……やめた方がいい。形式的にこういう具合でとても有意義ですと語るだけで充分だ」
「遠」
「皆が皆、上昇志向に満ちているわけじゃない。立ち直れなくなる子が出てはいけない」
「あ"?」
天喰の言葉に、クラスの皆はムッとした。
俺たちを気遣っているようで、明らかに自分たちを下に見た発言に、特に爆豪は青筋を浮かべて機嫌が悪くなった。
「あ、聞いて知ってる。昔、挫折しちゃってヒーロー諦めちゃって、問題起こしちゃった子がいたんだよ、知ってた!?大変だよねぇ通形、ちゃんと考えないと辛いよ、これは辛いよー」
「おやめください」
天喰の言葉を合わせた波動が芦戸の角をいじりながら、ミリオ……通形と戦う俺たちが、負けて挫折するのではないのかと心配する。
「待って下さい……我々はハンデありとはいえ、プロとも戦っている」
「そして敵との戦いも経験しています。そんな心配される程、ザコに見えますか……?」
3年生の言葉を聞き、常闇と切島が通形に自分たちが弱く見えるのか聞く。その声には僅かに怒りが混じっていた。
「うん、いつどこから来てもいいよね。一番手は誰だ!?」
「俺だァッ「僕……行きます!」おい!デク!」
「問題児!!いいね君やっぱり元気があるな!」
通形の言葉に、真っ先に反応した爆豪に被せるように、緑谷が前に出る。
その姿に皆も驚きながらも陣形を組んでいく。
「近接隊は一斉に囲んでやろうぜ!!」
「よっしゃ先輩、そいじゃあご指導……よろしくお願いしまーっす!!!」
切島の合図で緑谷が飛び出し、一気に距離を詰める。
フルカウルの出力を見るに、上限が上がり常時12%までならノーリスクで維持できるようになったようだ。
「……」
通形に接近する緑谷を見ながら、俺もすぐに動けるように構えを取る。
雄英トップと戦う機会なんてそうそうないので、この申し出はありがたかった。
全身一体化を発動後にしばらく【個性】が使えなくなることが、この前の仮免試験で分かったので、今回は一体化は使わず俺がどこまでやれるか試してみる。
「相手にとって不足なし」
俺は“王の瞳”を発動した。
その瞬間だった。
「は?」
通形の服が落ちた。
脱いだのではなく、落ちたのだ。まるで体を
俺の強化された視覚に、ご立派なモノが入り思わず“王の瞳”を解除してしまった。
「あー!!」
突然の光景に皆が驚く中、耳郎が顔を赤くして声を上げる。
「ああ失礼、調整が難しくてね!」
通形はそう言うと、落ちたズボンを急いで履くが大きな隙ができる。
そこを緑谷が見逃すはずもなく、強烈な蹴りを放つ。
しかし、緑谷の蹴りは通形の顔をすり抜けて、空を切った。
「顔面かよ」
蹴りが空振ぶった緑谷は、勢いのまま通形の体を通過した。
そんな緑谷に視線を向けた通形に、遠距離隊が攻撃を仕掛けるが、全てすり抜けてしまう。
すり抜けた攻撃がコンクリートの壁に当たり、爆発が起きる。
「いないぞ!」
煙が晴れると通形の姿はなく、飯田の言葉で皆は周りを見渡すが、見当たらない。
俺も“王の瞳”を発動するが、体育館内を探すがどこにもいない。
「まずは遠距離持ちだよね!!」
突然後ろの方で声がした。
振り向くと、耳郎の背後から通形が姿を現した。
全裸で。
「ギャアァァァ」
間近で男の裸を見た耳郎が叫ぶ。
「ワープした!!」
「すり抜けるだけじゃねえのか!?どんな強個性だよ!」
突然現れて俺たちの背後を取った通形に、攻撃を仕掛ける。通形は俺たちの攻撃をすり抜けとワープを併用して接近し、次々に腹パンを喰らわせていく。
「お前らいい機会だ。しっかりもんでもらえ、その人……通形ミリオは俺の知る限り、最もNO.1に近い男だぞ」
常闇、轟、八百万を含めた、強力な遠距離攻撃を持つクラスメイトが腹パンを喰らい倒れてしまう。
一瞬でクラスの半数以上がやられてた。
「なるほどな!通りで強いわけだ!」
「君も厄介だよね!」
通形は、相澤の言葉にやる気が上がった俺の足下から飛び出し、腹に目掛けて拳を突き上げる。
俺は後ろに飛んで回避し、近接隊と合流する。
「何したのかさっぱりわかんねえ!!」
「すり抜けるだけでも強ェのに……ワープとか……!それってもう無敵じゃないすか!」
「よせやい」
今の一瞬でクラスの士気が下がった。
通形のあまりの強さに怖気付いてしまった……この男を除いて。
「死ねェ!!」
爆豪は、地形を利用して通形の死角から爆破を浴びせた。
此奴は俺と同じで高い壁を前にして燃えるタイプだ。
「危ないね!君も寝ててもらおうかな!」
爆豪の至近距離からの爆破も、やはりすり抜けていた通形は、爆破直後で隙ができた爆豪に腹パンを喰らわせる。
しかしその拳は爆豪には届かなかった。
“炎鳥・鋭弓矢”
“王の瞳”で【個性】を看破した俺は、個性因子の動きから、すり抜け……透過していない箇所を狙って羽を飛ばした。
「ッ!?……やるね!」
通形も【個性】を看破されたとは思っていなかったのか、爆豪への攻撃を止めて回避した。
「勝手なことすんなエセキング!」
「ありがとうも言えんのかお前は」
「2人とも喧嘩はダメだよ!」
「「していない/ねェわ!」」
相変わらず爆豪の態度は悪いがほっておく。
そして、今の一連の流れで緑谷がなにかに気づいたようだ。
「皆!通形先輩は強い!でも付け入る隙はあると思うよ!」
「さっきの鳳くんの攻撃、ワープならあんな風に避けるかな……多分【すり抜け】が個性なんだと思う。どういう原理でワープしてるのかは分からないけど、先輩は直接攻撃してるわけだから、カウンター狙いでいけばこっちも触れる時があるハズ……!とにかく仮説を立てて勝ち筋を探っていこう!」
「オオ!サンキュー!謹慎明け緑谷スゲー良い!」
緑谷の分析に、無敵の【個性】持ちから強い人に認識が変わり、クラスの士気が元に戻った。
分析を披露した緑谷は俺に近づくと声をかけてくる。
「……鳳くん、サーチでわかったりしない?」
「すまんな、俺のサーチもすり抜けてしまうようだ」
「そっか……じゃあさっき言ったように」
「仮説を立てて勝ち筋を探る……か」
俺はあえて緑谷に嘘をついた。
通形がこの模擬戦を通じて何を言いたいのか、
それはそれとして、俺の実力が通形にどこまで通じるのか試しはするがな。
「探ってみなよ!」
「!!
通形も俺たちの意識が変わったことに微笑むと、一気に接近する。
その体は、徐々に地面に沈んでいき完全に見えなくなる。
「ッ!!」
地面に沈んだ通形は緑谷の背後から一気に飛び出した。
緑谷も遠距離隊がやられたパターンを分析し、背後からくることを予測していたようで、通形に蹴りを放つ。
「必殺!!!ブラインドタッチ目つぶし!!」
「うっ!!?」
しかし、通形の方が上手だった。
緑谷が通形の出現位置を予測して、迎撃したがこれまでの経験からすぐに対応した。
「ほとんどがそうやってカウンターを画策するよね……ならば当然、そいつを狩る訓練!するさ!!」
「緑谷くん!?」
通形の腹パンでダウンした緑谷を心配した飯田だったが、その隙を通形は見逃さない。
遠距離隊と同じく、瞬く間に俺と上空に逃げ隙を伺っている爆豪以外が全滅した。
「さてあとは君だね」
クラスメイトの殆どを倒した通形は俺に視線を向ける。
まるで次の獲物は俺だと言っているようだ。
「わざとこの状況を作ったな?」
「さて?なんのことかな!」
俺の質問に首を傾げてはぐらかす通形に俺は笑って返す。
「丁度いい!タイマンだ!」
俺と通形の戦いが始まる。