「飯食ったら次行くぞ」
「わかっている」
ミルコからインターンのオファーがあった日から4日が経った。
俺は雄英のある静岡を出て新潟にいた。
ビルの屋上で、コンビニで買った昼食を食べながら、隣にいるミルコとこの後の予定について話す。
「一応聞くがこの後はどこに行くつもりだ?」
「あ?
「やることは変わらずか」
「当たり前だろ」
(皆、元気にしてるかな)
ミルコの話を聞き俺は遠い目をしながら、クラスメイトのことを思っていた。
一昨日から始まった俺のインターンは、忙しいなんてものじゃなかった。
ミルコから連絡があったあの後、俺は相澤に事情を説明した。当然、インターンの受け入れ実績どころか事務所を持ってないミルコからのオファーに、いい顔はしなかった。
だが、一昨日の朝ミルコがアポもなしに雄英に訪れたことで状況は変わった。
校長も交えて話し合った結果、そんなことはしないと思いたいが、機嫌が悪くなったミルコが暴れるのを危惧して、俺のインターンが認められた。
体良く生贄にされた感が半端ないが、トッププロの活躍が間近で見ることができ、その技術も盗めるというのだから文句は無い。
そんなこんなで始まったインターン。
初日は、ミルコとの模擬戦から始まった。
仮免試験で、ハンデがあったとはいえ互角に渡り合った俺を気に入ったらしく、インターンが始まるなりどこかの訓練施設に直行し戦うことになった。
模擬戦が終わると、俺の【個性】が再使用できるまで休むことになり、ミルコの活動方針や互いの自己紹介……といっても俺ができること等を、一方的に喋らされただけだったが、それが終わるとすぐに訓練施設を後にし、助けを求める声、恐怖に染まった悲鳴、轟音と共に調子乗った敵の声、ミルコの耳に入った音の方に
一日半あちこちを飛び回り様々事件を解決した俺は、一躍有名になった。
これまでサイドキックがいなかったミルコに突如現れた俺。しかも、雄英体育祭の優勝者という箔付き。
当然話題になった。
初日はネットニュースに載った程度だったのだが、3日目にもなるとテレビでも扱われるようになった。
「この3日で十件以上事件解決をすれば当たり前か」
ニュースでは、ミルコと併走して事件解決に向かう俺が取り上げられていた。
リアルタイムで皆の呟きを見ることができるSNSで、エゴサをすると俺のファンを名乗る者まで現れ始めた。
クラスのグループにも結構なメッセージが届いた。皆、凄いとかテレビに出て羨ましい等のメッセージを送っていたが、峰田は俺がミルコと一緒にいると知って嫉妬に狂っていた。
「行くぞ!」
「ああ」
昼食を食べ終わると、ミルコはビルの屋上から飛び降りた。
俺も後を追うようにフェニックスと一体化し、翼を生やす。
ミルコは飛んでいるはずの俺が、気を抜くと追いつけなくなるほど速い。初日は模擬戦でかなり消耗したこともあり、追いつくだけで精一杯だったが、2日もあればどれだけ消耗していようが、並走できるくらいにはなった。
「やはり来て良かった」
ミルコからのオファーを受けてよかった。この3日で俺の体力は増し、回復速度もかなり上がった。
「なんか言ったか?」
「お前が聞き漏らすわけないだろう」
「素直にもう一回言えよ」
「何度も言ったら価値が下がるだろう」
「男のツンデレに価値はねーよ!」
俺たちは軽口を叩き合いながら、次の現場に向かうのだった。
『敵グループが現金を奪い逃走中です!!至急ヒーローを……』
「聞こえたな?」
「ああ」
「行くぞ!」
敵の攻撃を受けたのか、大破したパトカーから出てきた警察官が無線で応援を呼ぶのが聞こえた。
強化された視覚は既に逃走車両を発見している。ミルコも一般道を爆走する車の音を聞き逃すはずがない。
俺たちは逃走車両を追いかけた。
「そこの車!止まれェ!」
“月半月輪”
俺たちは、数分も掛からず車に追いついた。ミルコは車に追いつくなり、勢いよく飛び出すとかかと落としを放った。
ミルコのかかと落としが車に放たれるが、ドライバーは敵ながら素晴らしいテクニックで回避する。
「ミルコだと!?」
「新潟にいたはずだよな!?」
「狼狽えんな!俺達には例のブツがある!」
「ア、アニキ!」
車に乗っている敵たちはミルコにビビるが、奥の手でもあるのかリーダー格の男は諦めていなかった。
「サブ任せた」
「……うっす」
リーダー格の命令でふくよかな体格の男が車から降りてミルコと対峙する。
ふくよかな体格の男はミルコから車を守るように立ち塞がり、リーダー格の男たちが逃げる時間を稼ぐ。
「デブが私について来れんのかよ!」
ミルコは俺にふくよかな男を任せるとアイコンタクトで伝え、車を追おうとする。
「させねぇよ」
「どけデブ!」
ふくよかな男は意外と速く動けるようで、走り出しだしたミルコの前に出て、その腹で動きを封じ込める。
「俺の【個性】はダイラタンシー、おめぇみたいな物理特化は絶好のカモだ」
「ミルコ行け!」
“炎鳥・火刻苦”
一体化したことで、伸ばせるようになった尾羽でふくよかな男を拘束すると、ミルコを車に向かわせる。
「フェニックス!すぐにこっちに来いよ!」
「わかっている」
「離せ!」
「黙っていろ!」
「うっ……」
ミルコを先に行かせた俺は、ふくよかな男が尾羽の拘束を抜け出そうともがいているので、更に締め付けて意識を落とす。
意識が落ちた男を、懐から取り出したワイヤーで拘束すると、翼を広げミルコの後を追った。
「遅かったな!」
「10秒もかかってないだろう」
「その数秒が左右すんだよ!」
「肝に銘じておく」
車で逃走した敵グループは【個性】を使い、ビルや道路を破壊して俺たちがその対処にあたっている間に遠くに逃げていく。
“炎鳥・鋭弓矢”
降ってきた瓦礫を翼から飛ばした羽で受け止め、下にいた人を逃がす。
車を追いかけながら、二次被害を防いでいくのはなかなかに大変だった、目の前を跳ぶミルコはそれを感じさせないほどスムーズに、追跡と救助を同時に行っていた。
「埒が明かねェな……フェニックス!先に行け!」
「……了解!」
「ヘマすんなよ!」
このままだと被害が拡大することを考え、ミルコは俺に敵グループを止めるよう指示を出す。
俺は上空に向かって飛び上がると、足に炎纏う。
足に纏った炎で推進力を強化して飛び出してた。一陣の風がビル群を通り抜けると、俺は一気に車を追い越した。
“炎鳥・鋭弓矢”
上空から車に向けて羽を降り注ぐ。
無数に放たれた羽は、車のタイヤを破壊し敵グループの逃走手段を奪う。
俺は圧を掛けるために、尾羽を使い三対六枚の翼を広げて、目の前に降りていく。
「クソ!」
「アニキどうしましょう」
「ビビってんじゃねぇ!せっかくアレを手に入れたんだ!こんなとこで終わってたまるか!」
追い詰められても希望があるのか、リーダー格の男は【個性】なのか髪を棘に変化させる。
その姿に感化されたのか部活の男たちも【個性】発動し始める。
「目立ちたがりの餓鬼のようだ……そろそろ寝る時間だぞ」
「巫山戯んな!」
「アニキ!あいつミルコのサイドキックっすよ!」
「それがどうした?数じゃこっちが勝ってんだ!いざとなったらアレを使う」
リーダー格は髪が変化した棘を飛ばすが、俺に当たる前に全身に纏った炎が焼き尽くす。
「俺と貴様らの格の違いを思い知るがいい」
“炎鳥・炎鳳”
巨大な火球を生み出すと、その光景にリーダー格も含めてその場に跪き許しを乞い始めた。
俺はその姿を見て火球を消す、その瞬間リーダー格の男が銃をこちらに向けるが、尾羽によって部下共々拘束し、地面に叩きつける。
意識を失った男が持っていた銃が地面に落ちその衝撃で弾が排出される。
その弾は先端に注射器のような特殊な形をしていた。
「……これは」
「お手柄だったなフェニックス!」
「ミルコ」
敵グループの鎮圧が完了し、警察の到着を待っているとミルコと合流した。
後方を確認すると、敵グループが壊したビルや道路で怪我をした人はいないようだ。
「それより……ほらあっちになんか言ってやれよ」
「あっち?」
「ん」
ミルコが指差す方を向くと、いつの間にかマスコミが駆けつけていたようで、カメラをこちらに向けている。
「ミルコのサイドキックですね!一言いただけませんか!?」
「……」
「こういうのも仕事だ。行ってこいフェニックス」
「……わかった」
マスコミにあまりいい思い出はないが、客商売の面もあるヒーローには避けては通れ道だと思い、カメラの前に立ち見ているか分からないが、まだ見ぬ敵に宣言する。
「敵共よ俺様が来た」
俺はあえて昔の一人称を使って宣言する。ここからがヒーローとしての伝説が始まりだと、世界に伝える。俺は
カメラを通して一言伝えると、俺はミルコの元に戻り警察に後を任せて次の現場に向かうのだった。