貞操逆転世界~あそこの大きさだけで成り上がることができるかな?〜 作:漆黒闇男
「本当にイッちまうのか?」
ヴァイブの言葉に俺は静かに頷く。無事に武器と防具を手に入れた俺は、次なる扉を開くためにもここで立ち止まるわけにはいかないのだ。ここでできることは全てヤリ尽くした。お風呂でも工房でも新作のおもちゃを使ったプレイも何もかも。
そして俺は次の扉を開くため……じゃなくて、ヴァイブに作ってもらった武器と防具にふさわしい強さを手に入れるために、竜人の国を目指すことにした。
竜人。この世界で最強と呼ばれる種族。人間のように手足を持ち二足歩行ではあるが、その全身は硬い鱗で覆われており、顔もドラゴンに近い。鋭い爪や牙、尻尾などは人間にはない強力な攻撃手段となっている。何より、竜人の雄はあそこがでかいらしい。唯一の特徴であるあそこの大きさで負けるわけにはいかない。俺は並々ならぬ決意を持って竜人の国へ向かって歩き出す。
「ねえねえ、随分と長い間、ドワーフどもと一緒いたのね。あたしこと忘れちゃったのかと思った」
ドワーフの国を出てすぐに精霊のエマが現れて話しかけてきた。というか、召喚した記憶はないのだが、この世界の精霊は召喚されなくても自分で出てこれるのだろうか?
「忘れてはいないけど、ちょっとヤルことがあったんだ。それにしても、ほんとにドワーフが嫌いなんだな」
「あいつらは大地の民だからね。もともと、あたしとは相性が合わないのよ」
大地の民とかよくわからないが、そういうものなんだろうと納得する。
「それにしても、ずいぶんお楽しみだったわね」
「なに!? 見てたのか!?」
「ふふふ、さーて、どうかな?」
まさかこいつ、精霊界いながら全て見ているというのか!? こんな幼女みたいな見た目の精霊にあんなことやこんなことを……まずい興奮する。狙っていたものとは別の扉が開きそうだ。
そんな感じで久々にエマと軽口を叩き合いながら、森の中を歩いていく。街道だと誰にも見えないエマと話しながら歩く姿を見られたら、最悪襲われかねない。それに森の方がエマの機嫌がいいかなら。
普通、何の取り柄もない人間が森の中を歩くのは危険だが、俺は性剣エクスカリバーを通して相手の能力を手に入れることができるようなのだ。女性兵士から頂いた剣技のおかげで、森の浅いところに出る魔物は簡単に倒せている。しかも、今はドワーフの名匠ヴァイブに作ってもらった剣まである。かなりの業物なので、もっと強い敵でも倒せそうだ。
それにヴァイブと寝たことで、鍛治の能力も手に入ったようで武器や防具の手入れもお手のものだ。道具さえあれば、自分で作ることも可能だろう。
「あんた、いつの間にそんなことできるようになったの?」
武器の手入れをしていたら、エマに驚かれた。どうして急にとしつこく聞かれたから、『合体したら相手の能力を手に入れることができるみたいだ』と伝えたら首をかしげられた。どうやら、物知りのエマでも知らない能力みたいだ。それにしても、首をかしげるエマのなんとかわいいこと。実体がないのが残念だ。
森の中を敵を倒しながら進んでいく。俺が倒せない敵はエマに任せているから安心だ。今のところ、エマが苦戦したところは見たことがない。この戦闘力、本当にただの精霊なんだろうか?
という疑問を胸に抱きつつ、二週間ほどかけて竜人の国へと到達することができた。
凸凸凸
「あれが竜人か。確かに強そうだ」
竜人の国に着くまで、不思議と一人の竜人にも会わなかった。エマに聞いてみたら、竜人は狩り以外ではめったに自分達の国からでないそうだ。この世界でも最強の種族なので、用があるなら会いに来いというスタイルらしい。だから俺は、この竜人の国に着いてから初めて門番をしている竜人を目にしたのだ。
竜人は見た目、二足歩行する竜だから、正直、雄の竜人と雌の竜人を見分けられる自信はない。だからあの衛兵がどっちなのかはわからないが、たぶんこの世界のことだから基本は雌の竜人なのだろう。俺は竜の国に入るべく正門へと近づいていった。
入国するのは思ったよりも簡単だった。自分達の強さに自信があるせいか、ろくに検査もしないで通してくれたのだ。人間の男であるも特に騒がれることはなかった。むしろ、全く興味がなくまるで石ころを見るような目つきだった。それはそれでドキドキしたのだが。
「おお、これが竜人の国か」
門をくぐり目に入ってきたのは、思いの外綺麗に整えられた町並みだった。思わず感嘆の声が漏れる。
竜人の国は人間の国より几帳面に作られていた。建物も道路も碁盤の目のように美しくそろっていて、各建物に振り分けられている番号さえわかれば迷わずに目的地に到達できそうだ。ただし、メインストリートを外れると似たような家ばかりあるので、何も考えずに歩いていると道に迷いそうになる。
だが、国の中央に行くにはメインストリートを真っ直ぐ進めばいいので簡単だ。普通、外敵から国を守るために中央には簡単にはたどり着けないように工夫をするものだが、最強を謳う竜人達には必要がないのかもしれない。それは入国時の雑な身分検査を見ても明らかだしね。
ここでは道を歩いていてもあまり奇異な目では見られていないようだ。かといって、決して一人の人間として見られているわけでもない。おそらく、彼女たちにとって人間の男なぞ路傍の石と同じくらいの扱いなんだろう。その辺に転がっている石に誰も意識を向けないのと同じように、誰も俺の存在など気にかけていない。それはそれで悲しい気もするが、いつぞやのように捕まって裁判にかけられるよりはましか。
それにしても、こんな状態で宿とか取れるかな。路傍の石に部屋を提供してくれるところなどあるだろうか? それならいっそのこと、中央の建物を目指して偉い人に取り入った方がいいのかもしれないな。
そこまで考えた俺は、中央に一際高くそびえ立つ塔のような建物を目指した。
凸凸凸
「人間の男がここに何のようだ? 石ころは石ころらしくその辺に転がっていろ」
予想はしていたが、本当に石ころと同じ扱いだった。塔まで来たのはいいが、入り口にいた屈強そうな竜人に止められてしまった。さて、どうしたものか。無理に入ろうとすればここで殺されてしまいそうだ。エマも街に入った途端に精霊界に戻っちゃったしな。ここは一度出直すとするか。
俺は塔の中に入るのをいったん諦め、情報を集めることにした。最悪、街の外で野宿をしてもいいし、まずはこの国のことを知ることにした。
ということで、俺は冒険者ギルドにやってきている。ここには色々な情報が集まってそうだしね。俺は併設されている食堂の一番手前の席に座り、早めの昼食を取りながら聞き耳を立てる。ちなみに、お金さえ払えば普通に食事を出してもらえた。本当に蔑むというより、興味がない感じだった。
「今日はどこに狩りに行くんだい?」
「いつものところさ。娘がデビルベアーの肉が食べたいってうるさいんでね」
「そういえば、あの話はどうなってるの?」
「あの話? ああ、竜の姫の初めての狩りのこと? 確か明日だったはずよ」
「ああ、それでか。暗黒の森が立ち入り禁止になるのは」
ふむふむ。これは中々いい情報が聞けたぞ。明日、この国の姫が初めての狩りにいくといいう。つまり、これはあれだな。予想以上に強い魔物が出て、ピンチになったお姫様を俺が助けて城に呼ばれるパターンだな。
よし、明日になったら立ち入り禁止になるならば、今日のうちから森に入っておこう。野営はもう慣れてるしね。善は急げとばかりに、食事をすぐに終わらせてギルドを後にする。
暗黒の森は、竜人の国の北に位置する広大な森の名前だ。巨大な木がうっそうと茂り、昼間でも薄暗い様子から名付けられたそうだ。この森に済む魔物はかなり強く、深部に済むようなものだと竜人でも苦戦することがあるとか。
その森に単身で入っていく。
「ふむ、これが先ほどの冒険者が言っていたデビルベアーか」
森に入ってすぐにクマの魔物に出遭った。クマといっても、立ち上がった身長は三メートルほどもある。鋭い爪と牙は鋼鉄でも引き裂くとか。目は赤く、よだれを垂らしながらこちらをにらみつけている。完全に獲物としてロックオンされてしまった。
「エマ助けてくれ!」
僕が呼びかけると、つむじ風が舞い、中からエマが登場する。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーんって、デビルベアーじゃないの。このくらいの魔物なら自分で倒せるようにならないと」
どうやら、エマにとってデビルベアーはこの程度の魔物らしい。何とも頼もしい幼女だこと。俺はそんなエマに恥も外聞もなく助けを求める。死んだら元も子もないからね。使えるものは何でも使って生き残るのだ。
体長三メートルを超すデビルベアーが、突如目の前に現れた少女を警戒したように一歩下がる。
「へえ、獣の割に勘が鋭いじゃない。でも、残念。もう遅いわ」
デビルベアーが後退したのを見たエマが、右手を前にかざす。それだけで、何十本もの風の刃が発生しデビルベアーを切り刻んだ。
「はい、いっちょあがり!」
風が止んだときには、ズタズタに切り裂かれ事切れたデビルベアーが倒れていた。相変わらず、圧倒的な強さを見せつけてくれる。今倒したデビルベアーだって、確かBランクとかの魔物のはずだ。それをあっさり倒してしまうなんて、絶対エマを怒らせることだけはしないでおこう。
俺は森の入り口から少し離れたところにある大きな木によじ登り、これまた大きな枝の上にテントを張った。何本もの枝が絡みついていて、しっかりとした足場になっているからできた芸当だ。ここなら上から森の入り口を監視出来るし、逆に下からは枝に隠れてほとんど見えない。
完璧な拠点を作った俺は、夜までエマと一緒に狩りをして時間を潰し、その後はテントの中で朝までぐっすり眠って竜の姫を待った。
朝起きて、テントの中で簡単な朝食を食べていると、森の入り口の方が騒がしくなってきた。どうやら、先にこの国の兵士達が集まって森の入り口を封鎖しているようだ。
とは言っても、竜人は最強の種族。その自信からか、封鎖は適当で森の中を調べることもしない。例え何者かに襲われても返り討ちにする自信があるのだろう。だからこそ、俺にもお近づきになれるチャンスがあるというわけなのだが。
「森の中に異常はないか?」
「はい! いつも通りで異常はありません!」
しばらくすると、一際立派な鎧を着た竜人が現れた。そいつは入り口を見張っていた竜人に声をかける。おそらく、竜の姫の側近なのだろう。兵士の言葉に頷き、後ろにいた竜人に声をかけた。声をかけられた竜人は、ピンクを基調とした可愛らしい鎧を身につけ、手には大剣を持っている。たぶん、こいつが竜の姫なのだろう。俺には鎧以外全く見分けがつかないが。
側近が先頭に立って暗黒の森へと足を踏み入れる。その後ろに竜の姫、さらにその後ろから三人の竜人がついていく。合計五人の集団は、俺のテントの真下を通り暗黒の森の奥へと入っていった。
(よし、追いかけるとするか)
俺はそのまま枝を伝って追いかける。時折現れる魔物は側近が全て倒している。どこかに向かって迷いなく進む様子を見るに、何か目的があるのかもしれない。竜の姫の狩りという割には姫自体は全く戦闘に参加していないからね。
そんな風に進むこと約二時間。いい加減飽きてきた頃に竜人たちの一団が歩みを止めた。
彼女たちの視線の先にはぽっかりと穴の空いた洞窟が見える。一瞬、ダンジョンかとも思ったけどどうやら違うようだ。俺は木の上からそっと地面に降り立ち、木の陰に隠れて様子を見る。
その間に、五人の竜人たちは竜の姫を忠臣にその穴を囲むような陣形をとっていた。そして、姫の右隣にいる側近が火のついたたいまつを穴へと投げ込んだ。
たいまつの煙が穴の中に充満していく。その様子を緊張した面持ちで見ている竜人たち。戦闘態勢を崩していないところを見ると、この穴の中にいるであろう魔物は相当に強いのかもしれない。あの竜人が慎重になるくらいの魔物だ。どんなものが出てくるか楽しみだね。
「グオォォォォォォ!」
待つこと数分。突如、穴の中から叫び声が聞こえてきた。その声は空気を震わせ、聞くものに恐怖を与える怒りの咆哮だった。その声を聞いた途端、恐怖に駆られ逃げ出したくなった。そんな俺をここにつなぎ止めてくれたのは、隣でかわらずにニコニコしているエマの存在だった。エマを見た途端、恐怖がスーッと薄らぎ何とかこの場に踏みとどまることができた。
一方、竜人たちにも咆哮の効果はあったようで、硬そうな鱗に汗が流れていた。しかし、そこはさすが竜人。誰一人逃げ出すものはおらず、ぽっかり空いた穴をにらみつけながら咆哮の主が現れるのを待っている。
「グルゥゥゥゥ」
しばらく待つと、再び穴の中から唸り声が聞こえ、デビルベアーよりも二回りは大きい黒いクマが現れた。体には赤く光る血管のようなものが浮かび上がり、どくどくと脈打っている。
「でたぞ! エンペラーベアーだ! 姫様、我々がサポートします!あやつを討ってください!」
エンペラーベアーとやらの出現に側近の竜人が怒声をあげる。竜人の姫は果敢にも前に出るが、その剣先は震えている。初陣でこの強そうな魔物を相手にしないとならないなんて、何かの儀式だろうか? 強さを求める竜人というのも、案外楽じゃないのかもね。
「よし、行く……ごふ!?」
姫が覚悟を決めて一歩を踏み出そうとしたそのタイミングで、エンペラーベアーが想像以上のスピードで姫に体当たりをかました。完全に虚を突かれた姫は、腕で体を守るのが精一杯だったようで簡単に後ろに吹き飛ばされてしまった。
「姫!?」
「は、速い!?」
側近もお供の竜人たちもそのスピードについていけてないようだった。
(なんでこんな強い魔物を選んだんだ?)
竜人の姫の初めての狩りだからもっと楽な相手を選べばよかったのに、なぜこんな強い魔物に挑戦したのだろうか。俺は不思議に思ったが、まあ彼女たちにも何か事情があるのだろう。結果、俺にとっては理想的な展開になりつつある。
側近が姫を守るように間に割り込み、お供の竜人が慌ててエンペラーベアーを持ってる武器で牽制するのだが……
「がは」
「つ、強い」
「うごぉ」
エンペラーベアーにちょっかいをかけた三人のお供が反撃にあい、立て続けに殴り飛ばされてしまった。一方のエンペラーベアーは未だに無傷。残るは側近の竜人ただ一人。この側近の強さ如何によって助っ人に入らねばなるまい。
「エマ、いける?」
「あいつ、ただのエンペラーベアーじゃないわね。変異体かな。あれじゃあ、いくら竜人でも分が悪そう」
ほほう。変異体なんてものがいるのか。そいつは通常のものよりも強くなる傾向にあるようだ。
「エマでもきびしい?」
心配になって聞いてみる。
「あは! あたしがあの程度の魔物に負けるわけないでしょ! あんたの性欲がある限りね!」
無用の心配でした。それにしても、こんな小さな女の子の口から性欲とか出てくると……ドキッとする。
「ぐぉぉぉぉ! くらえ!」
バキン!
「なっ、剣が!? がはぁ」
側近が振り下ろした剣は、エンペラーベアーに噛みつかれ折れてしまった。さらに前足の爪が鎧を打ち付け、地面に叩きつけられてしまった。
「よし、エマ、いくよ!」
「まかせて!」
護衛を全て倒し、竜人の姫に向かってのっしのっしと歩くエンペラーベアー。護衛たちは意識はあるが、体が動かないようで誰も姫を助けにいけない。
「おいこのクマ野郎! この俺が相手だ!」
この絶好のチャンスをものにすべく、俺はエマの後ろから大声を上げた。