バグDバトル、ファイト!! ~正真正銘「言ったもん勝ち」カードゲーム~   作:龍川芥/タツガワアクタ

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①宙斗と理或のチュートリアル!

 バグで悪魔(デビル)でデータな相棒(バディ)……通称バグD(ディー)

 あらゆる電子機器やプログラムの『異常(バグ)』から突然変異的に生まれた彼等は、今や人類の新たな友人として深く社会に浸透していた。

 そんなバグDをカード化させ、絆と戦略を競う決闘(デュエル)――バグDバトルもまた、世界中で大流行しているのだった……。

 

 

 

『バグDバトルカントー大会決勝戦! 宙斗(ちゅうと)選手と理或(リアル)選手とのバトルも終盤だ! ここまでの展開はほぼ互角、果たして優勝はどちらの手に――!?』

 

 極東の島国、カントー地方の某所にて。

 声援を上げる観客達の視線を一身に受けながら、巨大なドームの中心で、ふたりの少年が向かい合っていた。

 互いの手に握られているのは、立体映像(ホログラム)で形成されたカード。それを唯一の武器として、ふたりの決闘者は激戦を演じていた。

 

 宙斗(ちゅうと) 山札:5枚 

    手札:2枚

    場 :0枚

    墓地:33枚

 

 理或(リアル) 山札:4枚

    手札:1枚

    場 :0枚

    墓地:35枚

 

 観客が見守る中、向かい合う少年、その片側が動く。

 

「俺様のターン、ドロー!」

 

 ▶TRUN 08

 理或(リアル) 手札1→2枚

    山札4→3枚

 

「来た来た来たぁ! 行くぜ相棒――俺様は手札からRPGゲームのバグD、【電脳勇者AAAA(オールエー)を現実世界に召喚(サモン)!」

 

 電脳勇者AAAA(オールエー):ATK 15*1

 

 少年――理或(リアル)選手がカードを虚空に叩き付けると、それに呼応してカードに描かれたバグDが姿を現した。

 ファンタジーの勇者ド真ん中の外見を持つ、鎧を着た人型のバグD。そのバグDが天高く手を掲げれば、聖雷が来たりて闇を裂く。

 

「そして。勇者の聖剣は決して壊れず、真の持ち主の元に舞い戻る――そうだよなぁ!? 審判(ジャッジ)AI!」

 

 理或(リアル)選手の呼びかけに答えるのは、姿なき三人目の機会音声。

 

『審議中……完了。理或(リアル)選手の要請を承認。墓地(トラッシュ)S(サポート)カード【電脳聖剣A(エース)カリバ】が、フィールドの【電脳勇者AAAA(オールエー)】に装備されます。これにより【電脳勇者AAAA(オールエー)】のパワーが5ポイント上昇します』

「よし、通ったァ! さあ、不壊の誓いで舞い戻り、聖なる刃で敵を討て――【電脳聖剣A(エース)カリバ】*2!」

 

 バグDバトルでは、それぞれのカードに厳密な効果が記されている訳ではない。

 それ故にプレイヤーはそのテキストから可能であろう効果を推測・提示し、それを審判AIが「あり」だと判断することで、提示したアイデアが実際の効果として適用されるのだ。

 

 アイデアが認められた理或(リアル)選手の快哉の声に応えてか。

 勇者が掲げた腕目掛けて落雷が降り……次の瞬間には、落雷が変じたと思しき剣がその手の中に握られていた。

 

 電脳勇者AAAA(オールエー):ATK 15→20

 

 理或(リアル)選手の剣として(フィールド)に現れた『バグD』。

 対する宙斗(ちゅうと)選手の(フィールド)に、その盾となる『バグD』は居ない。

 好機と笑い、理或(リアル)選手が相棒に命じる。

 

「行け、AAAA(オールエー)! 直接攻撃で相手の山札(HP)を削り切れェ!」

「させるか! ボクは手札からS(サポート)カード秒針奪取(チクタクロック)*3を発動!」

「なんだと!?」

 

 だが、宙斗(ちゅうと)選手にも策はあった。それこそが彼の手に握られていた、バグDカードならぬ『S(サポート)カード』。

 相棒たるバグDを支え、時には反撃の一手となる補助用カード――手札にさえあれば相手ターンだろうといつでも使えるS(サポート)カードの発動によって、宙斗(ちゅうと)選手は絶体絶命のピンチを覆すチャンスを手に入れる。

 

「【秒針奪取(チクタクロック)】は1秒だけ時間に干渉できるSカード! これで1秒だけ時間を止め、ボクのターンを前借りだ!」

『審議中……完了。宙斗選手の要請を承認。宙斗選手は1アクションだけ自分ターンと同じ行動を実行できます』

「よし! この奪った1秒で、ボクは自分ターンにのみ許されるバグDの召喚(サモン)を行う! 手札より現れよ、デジタル時計のバグD――星刻の魔術師(タイマージシャン)クロノスターシス】!」

 

 星刻の魔術師(タイマージシャン)クロノスターシス:ATK 20*4

 

 カチリ、世界の時が一瞬停止し。

 星空が透けて見える不思議なマントを纏った魔術師が、時間の狭間より降臨した。魔術師は宙斗(ちゅうと)選手を守るように勇者の前に立ちはだかり、その手に持った杖を掲げる。

 

 宙斗(ちゅうと) 手札:2→0枚

 

「クロノスターシスは時間に干渉したターンのみ召喚(サモン)でき、更に時間が歪んだターンは時の修正力でパワーアップ! これで――」

「ハッ、テメエお得意の時間操作コンボを現実にはさせねえよ!」

「何!?」

 

 勇者の行く手を阻むように現れた魔術師。だが理或(リアル)選手も、それを黙って見てはいない。

 

 理或(リアル) 手札:1枚

 

 理或(リアル)選手の手元に最後に残ったその手札は、相棒たるバグDを支え、時には反撃の一手となるS(サポート)カード。

 そう。それを発動できるのは、なにも守る側だけではない。攻撃する側も同様に、いつでも手札のS(サポート)カードを発動可能。

 果たして、理或(リアル)選手が発動したのは。

 

S(サポート)カード、禁忌作戦:増減反転(オーバーフロー・グリッチ)*5発動! パワーなどの数値が変化するとき、その変化の増減(プラスマイナス)を入れ替える!」

『審議中……完了。両者の要請を承認。【星刻の魔術師(タイマージシャン)クロノスターシス】のパワーが5ダウンします』

「よっしゃあ!」

「し、しまった……!」

 

 星刻の魔術師(タイマージシャン)クロノスターシス:ATK 20→15

 電脳勇者AAAA(オールエー):ATK 20

 

 本来、自身の効果によりパワーを上昇させるはずだったクロノスターシス。だが理或(リアル)選手のS(サポート)カードにより、そのパワーは上昇するどころか低下してしまった。

 両選手の手札は共に0枚。ここに趨勢は決定した。

 

「これでパワーは上回った! 行けAAAA(オールエー)、クロノスターシスを攻撃! 絶対勝利勇猛剣(オールアサルトアタックアーツ)!」

 

 主の命に従い、聖剣の勇者が突進し――。

 一閃。

 雷光を帯びた斬撃が、魔術師を杖ごと両断する。

 

「これでバトルに負けたテメエのクロノスターシスは破壊。そして貫通ダメージとして、パワーの差の数値……つまり5枚のHP(デッキ)墓地(トラッシュ)に消し去る! これで終わりだ――!」

「うわあああああ――!!」

 

 宙斗(ちゅうと) 山札(ライフ):5→0枚

 

 ダメージの衝撃によって、宙斗(ちゅうと)選手が吹き飛ばされる。その(ライフ)たる山札は0枚……つまり、彼は立ちあがる資格を失って。

 

 理或(リアル) WIN !!

 

『決まった――! バグDバトルカントー大会、優勝は理或(リアル)選手だ――!!』

 

 大歓声がドームを包んだ。

 それらの声はドームの中心に立つ1人の少年に、勝利した理或(リアル)選手に注がれる。

 そして()()()()()()は、いっそ傲慢とも思える自尊の表情で、その歓声に応えるのだった――。

 

 

 

 そんな()()を前に、画面のこちら側たる現実でも歓声が上がった。

 

「何回見てもスゲー!」

理或(リアル)くん強すぎっしょ!」

「こんなにバグDバトルが強いなんて、憧れます!」

 

 教室の中、口々に騒がれる賛辞の声。

 そんな賞賛を受けて、机に腰掛けていた当の本人、この学校の生徒でもある神山(かみやま)理或(リアル)は鼻を鳴らした。

 

「ハッ、当たり前だろ。俺様以上のバグD使いなんているワケねえよ、現実的になァ」

 

 その強気の態度に、またもすげーと声が上がる。

 それがここ最近の教室の日常。

 バグDバトルのカントーチャンピオンとなり一躍時の人となった理或(リアル)と、それを憧れの目で見つめるクラスメイトたち。

 ああ、けれどお決まりの流れには続きがあって。

 

「それに比べて、()()()()のヤツは」

「ああ。イマドキ『バグD』も持ってないなんて、遅れすぎだぜ」

 

 そんな声とクスクス笑いが、今日もオレに注がれる。

 そうだ。残念ながら、この物語の主人公たる『オレ』は、学校中で大人気の神山(かみやま)理或(リアル)くんではない。

 言うなれば、その正反対。

 

「……はぁ。バグDバトルできるのがそんなに偉いのかよ、まったく」

 

 頬杖を突き、そう呟く。

 

 オレの名前は拓条(たくじょう)歩愛斗(ファイト)

 この学校内で――いいや、きっとこのトーキョーの中で唯一、バグDを持ってない高校生だ。

*1
バグD / ATK 15 / 聖剣に選ばれし伝説の勇者という設定を持つ、RPGゲームの主人公から発生したバグD。あらゆる武器・魔法を使いこなすだけの潜在能力を秘めているが、凝った名前はつけてもらえなかったようだ。

*2
S / 魔王を討ち滅ぼすことができる唯一の聖剣、という設定を持つゲームの武器。決して壊れず売れず失くさない親切仕様。その刃は常に正しい者の手中に収まり、邪悪な者に対して真の力を発揮すると謳われている。

*3
S / 1秒間だけ時間に干渉できる、刻魔術師が生み出した特殊な魔術のうちのひとつ。秒針が再び動くまでの刹那、世界は術者のものとなる。

*4
バグD / ATK 20 / どのような状況においても正確に時を刻むデジタル時計の中に住んでいた、星の刻を観測・管理している天才魔術師。時間に乱れがあったときのみ姿を現し、時の修正力を自身の魔力に変えて悪を正す。

*5
S / とある世界の法則、臨界を超越した数値の増減が反転する現象を現実に再現するコマンド。乱用すれば世界線の崩壊を招くと言われている。




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