バグDバトル、ファイト!! ~正真正銘「言ったもん勝ち」カードゲーム~ 作:龍川芥/タツガワアクタ
金の髪は翼のように、長さを伸ばしひとりでに広がる。
全身の服は武装を増し、スカートの横には
そして頭頂と双肩の上には、フキダシを模したのか、円形の一部が突き出した
ああ――変貌し美しささえ増したその姿は、どこか地上に降臨した天使を思わせて。
絶望という闇に立ち向かうように、ミライは強い光を帯びて立つ。
その変化――変身というべきか――に対し、驚いたのは敵である
ミライの主であるファイトもまた、テキストの無かったバグDの変身に驚愕と困惑を思わず漏らす。
「ミライ……? その姿はいったい――」
『はい、これはバグ
「バグ
聞いた事のない単語に、ファイトの困惑は強まるばかり。
だが、ミライはそれ以上詳しく語らなかった。
代わりに、彼女は高らかに叫ぶ。
『さあ! 恐れずカードを引いてください、マスター!』
「!? どういうことだ、ミライ――」
『どうか信じて! わたしと、絆と、アナタの「未来」を!』
先程までの――何の効果も持たず威勢だけだったミライとは違う、芯のある強い言葉。
それを受けて、ファイトはデッキトップに、そこにおいた自らの腕に意識を向ける。
何が何だか分からないが……この
ぎちり、鎖の音を幻聴する。
過去の誓いは、捨てれぬ絆は、未だにその体を縛り付けている。
それでも、ソレを否定するのではなく。
抱えたままで未来へ行こうと、そう言った彼女の言葉ならば――。
「……ああ、分かった! ミライ、おまえを信じる!」
言って、ファイトはドローする姿勢で固まった腕に力を籠め。
その想像以上の軽さに、彼はようやくそのことを理解した――ミライのお陰で、理解できた。
ああ、そうか。
この腕に巻き付いた鎖は、過去から伸びた、オレを縛り付ける呪いではなく。
オレの心の底から生まれ繋がった、アイツを忘れない為の祈り。
オレはあいつとの絆を失ったんじゃない……あいつはずっと、
ならさ――カッコ悪いとこ、見せれないよな……!
ぐっ、とカードにかけた指に力が入るのと、ミライが叫ぶのは同時。
『行きます、ミライ☆アクセス! 今一番必要なカードを、マスターの手に!』
瞬間、デッキトップのドローカードが光り輝き――。
「――オレのターン、ドロー!」
空に鮮やかな軌跡を描いて、拓条ファイトはデッキから希望をその手に引き抜く――!
▶TRUN 06
ファイト 手札:0→1枚
ファイトはドローカードを横目で確認し……目を見開く。
「! このカードは――」
だが、彼の正面に立つ
それは自身の圧倒的優位を確信しているがゆえ。
「ハッ、手札1枚で何ができる! 今更バグDがちょっと変わろうが、俺様の勝利は揺るがねえ! テメエの現実は絶望だと決まってんだよ、ファイトォ!」
ファイト
手札:1枚
場 :【
手札:1枚
場 :【電脳魔王
正真正銘
だが
けれど、ファイトは笑った。
諦念という絶望ゆえではなく、勝機を見出した希望のために。
そして、彼は言う。
「――
「何ィ?」
その言葉に、
「ここに来てドロー系カードか? 間抜けヤロウが、テメエの
指摘は事実。ファイトにはこれ以上のドローは許されない。
だが、彼は絶望しない。
「いいや! 山札からドローはしない!」
「ハァ? なら何を――」
ここで、ファイトはたった1枚の手札を掲げた。
彼は今しがた山札から引き抜いたばかりの、希望のカードを発動する――!
「これがミライが繋げてくれた――いや、未来に繋がる希望のカード!
「――! そうか、墓地回収カード……!」
――バグDバトルは
故に、必須とされるのが『墓地回収カード』。
そして墓地回収カードの中には、墓地のカードを複数枚回収できるものもある――。
ファイトの
ファイト 手札:1→3枚
「手札、3枚だと……!」
「ああ、それもただの3枚じゃない……オマエが削ったオレの
こうして、墓地のカード3枚はファイトの手札に戻った。
即ち、過去と現在は繋がった。
そして、主従は前を向く。
燃える決意、硬い絆、ひとつの心で未来を目指す――。
「行くぞミライ!」
『はい、マスター!』
「オレは【
電脳魔王
今現在、ミライの方がパワーは低い。
だが、ミライは一切の衒いなくファイトの指示に従い攻撃姿勢に入る。
それは、未来を信じているから。
ファイトがその手札を使って状況を好転させるという、希望を――。
その信頼に応えるように。
ファイトは3枚の手札のうち、1枚目のカードを切る。
「そして再びの発動だ、【
それは、ミライが【電脳勇者
「ぐッ、またそのクソカードをッ……だが忘れてんじゃねえぞファイトぉ! 手札1枚をコストに、
電脳魔王
ファイトのSカードから『炎上』の火が放たれる。
同時、
こうしてお互いのバグDは、『炎上』の火に包まれた。
ミライはそれより暗い色の炎に、それぞれ全身を包まれ。
そうして悪罵の火は猛り、両者のパワーが低下する――。
だが、ファイトはそれに待ったをかけた。
そして残った2枚の手札、その片割れをここで切る。
「この瞬間! オレは次なる
それは、ファイトが【
その効果は、奇しくも。
「何ィ!? テメエも相手のカード効果をコピーするだと……ッ!? そんな高度な効果、雑魚のテメエに使いこなせるハズが……!」
「ないかどうかはこれで分かるさ! オレが効果を複製するのは――オマエの
「な……そのカードは、俺様がカントーチャンピオンを勝ち取った――!」
そのSカードこそは、
ゆえに。そのカードの存在は、同じ教室内に居たファイトも知っていたのだ。
ファイトとミライが決死で削った――あるいは
暗い炎の色は、黄色に近い明るい色へ。囂々と猛る悪罵の声は、ミライを応援する声援へ。
「これにより『炎上』で下がるハズだった数値が反転し、そのぶんミライのパワーが上昇! オマエが放った絶望は、これで希望へと反転した!」
電脳魔王
単純にパワーの減少効果を受けた
ここに両者の
だが、
なればこそ。
最後、3枚目の手札にして正真正銘のラストカードを、
「そして、これで最後だ――【
それは、【
なればこそ、
「――バカが、最後の最後に詰めを誤ったなァ! ソイツは確か、
土壇場での鋭い指摘。彼もまた地方を統べる程の猛者。
だが――それでもファイトは不敵に笑い、言う。
「いいや、それはどうかな!」
「な、なんだと……ッ!?」
そうして、ファイトは叫ぶ。
自身が発動した
「【
「なァ――テメエッ、『炎上』を逆手に取って――ッ!?」
「ああ! それもただの『炎上』じゃない、【
そうして、ファイトの言葉が現実となるかのように。
ミライの全身を包む炎が、金色となって天を衝かんばかりに燃え盛った。
その炎は希望の光となって、ミライのパワーを大幅にアップさせる――!
『凄い、この力なら――流石ですっ、信じてましたよマスター!』
そんな、闇など寄り付くこともできない眩い光を受け。
眼前に広がる『現実』を前に、
「バカなッ、バカなバカなバカなぁッ! だってテメエのバグDを包むその炎は、元は俺様の効果でコピーした『炎上』だろうがァ! まさかッ……ありえねえ! そんな現実がありえてたまるかぁ! ファイト、テメエ、
問いへの答えは、ファイトの表情が言葉にせずとも語っていた。
即ち、正義と闘志を湛え敵を睨む、どこまでも真っ直ぐなその瞳が。
その視線に焼かれるような錯覚を覚え、思わず
そんな彼に、ファイトは/ミライはひとつになった心で叫んだ。
「
『わたしたちの手で切り拓きます! 皆が笑える、新しい未来を――!!』
電脳魔王
そうして、ここに全ての手札は切られ。
猛る黄金の炎を推進力とするように、ミライが自分の肉体を砲弾に変えて飛翔する。
構えられた拳には、フキダシを模した
剣めいたその切っ先が、今、魔王を穿つ鏃へと。
ああ、黄金は鮮烈に闇を裂いて。
繋がった絆が生み出す力が、ここに未来を切り開く光となる――!
「『これが
十字の閃光、闇を穿つ。
ミライという砲弾が、全霊を乗せたミライの拳が、魔王の体を貫いて――。
大爆発。
衝撃が世界を揺らし、黄金の波動が魔王の背後にいた
即ち、ミライと
「バカなッ――この俺様が負けるなんてッ、そんな現実が――ぐ、がああああああああァッ!」
衝撃を受け、残っていた
どさり、廊下に叩き付けられたその男は……衝撃にか気を失っており、立ち上がって来る気配はなく。
つまり、これは。
ファイト WIN !!
――バグDバトル、決着。
勝者、