バグDバトル、ファイト!! ~正真正銘「言ったもん勝ち」カードゲーム~ 作:龍川芥/タツガワアクタ
▶TRUN 06
ファイト
ボロボロだが二足で立っているオレと、倒れ伏し気を失った
オレたち2人のバトルの決着がつき、バトルモードが解除される。
そして、すぐに
廊下に転がった
その内の1体は……壁を背に座っていた
ああ、つまり。
「
それでようやく勝利を実感し、オレの全身から力が抜けた。
どっと疲れた、というやつか。
まあ、紙一重の接戦だったからな……何とか勝利を収めたものの、気を抜けば今にも膝を突いてしまいそうだ。
だが、そんなオレに元気全開で声をかけてくる奴が居た。
『これにて一件落着、ですねっ!』
「ミライ……」
喋るバグD、ミライ。
彼女はオレのデッキとなっていたカードを全身に吸収することでカードモードを解除しつつ……その過程で「バグDx」形態から元の姿に戻りつつ、オレに屈託のない笑顔で話しかけて来る。
『最後の攻防、お見事でしたマスター! でもでも、なんでマスターはあの人の考えが分かったんですか? 魔王さんの能力を、【
「……まあな。プライドの高い
そこで言葉を切って、オレはにこにこと嬉しそうな――全部解決したみたいな顔をしているミライに対し、胡乱気な目を向ける。
「というか、質問したいのはこっちの方だ。おまえ、あの変身はなんだったんだ? バグ
問えば、ミライは明らかに「まずい」みたいな顔で硬直した。
『え! ええと、それはそのう……』
「なんだよ、また秘密か?」
『……は、はい。すみませんマスター……』
しゅん、とそのまま項垂れるミライ。
申し訳なさそうに押し黙ったその姿を見て、オレはなんだか気が抜けて笑ってしまった。
それを誤魔化すように溜息を吐いて、言う。
「……はぁ、なら別に良いよ。おまえの言う『好感度』とやらが上がったときに、改めて聞かせてもらうさ」
『マ、マスター……っ!』
「おいやめろバカ、急に抱き付いてくるな! この、暑苦し、い……」
がばっ、と抱きついてきたミライを引きはがそうとして、そしてミライは非情だなんだと抵抗しようとして……ぴたり、互いの手が止まる。
何故なら、オレもミライも同時にそのことに気付いたから。
そしてその例外たる2体は、気付いたときには、行き場を失ったようにオレの傍に立っていたのだ。
その2体の姿を見て、オレは思わず呟く。
「こいつは、
『【電脳勇者
オレたちの前に現れた勇者のバグD・
先の激戦を思い出し、すわ仇討ちかととっさに警戒のポーズを取るミライだったが。
「いや、これは……」
『……? 攻撃して、こない?』
2体のバグDに敵意はなかった。
ただ何をするでもなく、オレの前に立ち尽くしている。
その不可解な行動の理由に思い至ったのだろう、ミライが唐突に声を上げる。
『あ、そうか! マスターがアンティルールで勝ったから、この2体もマスターのDフォンに……!』
その言葉にDフォンを確認すれば、なるほど、この2体の所有権がオレのDフォンに移っていた。
ということは、恐らく
オレが
「……」
オレは
不思議なもので、敵として
いや、これは穏やかさというより……。
少し迷って、オレは勇者と魔王へ言った。
「……悪いな。オレはまだ、新しいバグDをそうほいほい手に入れる気はないんだ」
言って、Dフォンを操作する。
そして操作後の画面を彼等へ向けた。
「オマエら2体の所有権を放棄した。後は、オマエらの好きにすればいい」
『え――』
オレの行動に、ミライが何かを言う前に。
ぺこり、と。
2体はともすれば見間違いかと思えるほど小さく頭を下げて……そうして、
ああ、よかった……アイツらが「戻りたい」と思っていたのは、どうやらオレの勘違いではなかったらしい。
ほっと安堵の息をつくオレとは対照的に、ミライはまだ複雑な表情のまま尋ねて来る。
『……よかったんですか、マスター? あの怖い人間さんがバグDを取り戻したら、また他人のバグDを奪おうとするかもしれませんよ……?』
「……そうかもな」
『なっ……そうかもなって、そんなテキトーな――』
「――大丈夫だよ、きっと。
オレの視線の先で。
その様を見れば、
そもそも
それが変わったのは、地方大会で好成績を残した者だけが出場できる『全国大会』に彼が出場してからだろう。
全国大会での
そうして他人のバグDを奪うという横暴に出始めた
いや、分かっている。悲劇を繰り返さない為に確実なのは、
だが……オレは、そうしたくなかった。
「それに……
そうだ。
あんな思いをする奴は、できるだけ少ない方がいい。
中々デリケートな話題ゆえか、ミライはそれ以上何も言わなかった。いや、流石の彼女でも何も言えなかったのだろう。
なんだかズルして黙らせたみたいだな、と思ったので、オレは言葉を付け加える。
「ま、読みが外れたらまた挑むさ。その時は一緒に戦ってくれよ、ミライ?」
『!』
言えば……ミライの表情がぱあっと明るくなった。
彼女はどんと胸を張り、心底嬉しそうに頷く。
『もちろんですとも! なにせわたしは、マスター、アナタの【ミライ】ですからねっ!』
バトルの時の頼もしさがすっかりどこかに行ってしまった子供じみたその姿に、オレは若干呆れつつも。
なんだか笑えてきてしまって、思わず声を上げて吹き出した。
『な、何が可笑しいんですか!? マスター、ちょっと! 言っておきますけど、今更取り消しとか捨てるとか、絶対許しませんからね――!』
そうして、ミライにぽかぽか叩かれながら。
1年ぶりくらいに出した笑声は、オレの喉が枯れるまで校舎の中に響き続けた――。