バグDバトル、ファイト!! ~正真正銘「言ったもん勝ち」カードゲーム~   作:龍川芥/タツガワアクタ

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⑫拓条ファイト、バグDと絆を結びし少年

拓条(たくじょう)ファイトです。私立愛望(あいぼう)高校の一年生、15歳。志望動機は――」

「ああ、そこまでで大丈夫です」

「……」

 

 高校の近くにある本屋のバックヤード、そこでの面接中のこと。

 オレ、拓条(たくじょう)ファイトの自己紹介を早々に制止したのは、オレを面接しているこの本屋の店長。

 けれどそれは、彼女が冷たい人間であることを意味しない。

 だって、店長はがたりと音を立てて椅子から立ち上がり――。

 

「堅苦しいのは抜きにして……やりましょう、バグDバトル!」

 

 そう言って『Dフォン』、つまりバグDが住める現代のスマホを構えたのだから。

 冷静沈着に見えて隠しきれぬ熱意を宿した店長は、Dフォンを構えながら高らかに語る。

 

「相手の事を理解したいなら、言葉よりもまずバグDバトル……相手の戦術、ガッツ、バグDとの向き合いかたを見れば、あなたがここで働くに足るかどうかすぐに分かります。さあ、いざ尋常に勝負!」

 

 そうやって、ずびしとDフォンを突き付けて来た店長に対し。

 残念ながら、オレは頭を下げざるを得なかった。

 何故なら――。

 

「……すいません。オレ、バグD持ってないんです」

 

 数秒後。

 頭を上げたオレが見たのは、宇宙人でも見つけたかのように愕然と目を見開く店長の姿であった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 ガラリ、ベルのない引き戸を開いて外へ出る。

 件の本屋を後にしたオレの足取りは重かった。

 

「また駄目だったかぁ……」

 

 溜息を吐く。

 やはりバグDバトルができなければ、この街でバイトの面接に受かるのは不可能なのだろうか……。

 そんなオレに対し、声をかけてくるものが居た。

 

『ホントによかったんですかマスター? マスターにはもう、わたしというバグDが居るのに』

「……ミライ」

 

 ふよん、と普段とは異なる妖精サイズでDフォンの中から飛び出してきたそいつは、金髪碧眼の少女の姿をしていた。

 それこそバグで悪魔(デビル)でデータな相棒(バディ)、通称バグⅮ……の中でもかなり特殊なバグⅮ。

 喋るバグD、ミライ。

 

 つい先日オレのⅮフォンに迷惑メールを介して勝手に入ってきた彼女は、理或(リアル)とのバトルが決着して数日経った今でもオレのⅮフォンの中に住んでいた。

 つまりまあ、先の面接でオレが言ったことは嘘ということになる。

 けれど、オレは唇を尖らせて開き直った。

 

「別にいいだろ。オレはまだ割り切れてないんだよ」

『それは……相棒さんのコト、ですね。やっぱり、まだ完全に過去を消化するのは難しいですか。でも大丈夫ですよマスター。わたしはアナタのミライですからね、その時を気長に待ちましょうともっ!』

「……」

 

 オレには今横で騒がしくしているミライではない、別の相棒(バグⅮ)が居た。

 1年前にオレを庇い消滅してしまった――死別してしまったバグⅮが。

 理或(リアル)とのバトルを通してミライともそれなりに絆を深めたが……やはり、オレの相棒は死んだあいつだけだという誓いを、オレは捨てるつもりはない。

 そういう複雑な心境が、オレにミライを使ったバグDバトルを躊躇わせていた。

 

 そもそもミライには謎が多すぎる。

 喋る理由に、バグDxという見たこともない形態への進化……それが解明しない今、どうしても慎重になるオレの心理も理解して欲しいものだ。

 

 そんなこんなで道を歩いていると……ふと、怒鳴り声が聴こえた。

 

 見れば、街の隙間にできた暗い路地裏にて。

 体格の良い学ランの男が、小柄な少年を壁際に追い詰め何事かを叫んでいた。

 よく見ればデカい方にはいかにもバトル向きのゴツいバグDが。ヒョロい方にはバトル向きではなさそうな小さいバグDがそれぞれついている。

 

 2人とも学ランだからうちの生徒ではないし、当然見覚えもない。が……どう見てもデカい方がヒョロい方を虐めている。カツアゲなのか()()()()()なのか……まあ、少なくとも「仲が良い」って感じじゃあないな。

 

 路地裏で人目を避けて行われるその様を見て。

 数日前のオレなら、黙って踵を返したかもしれない。あるいは声をかけてもぶん殴られて終わったか。

 けれど、今は――。

 

「――ミライ」

 

 呼べば、妖精サイズだったミライがオレの意図を察して元の人間サイズに戻る。

 

『はいマスター! バグDバトルですね?』

「ああ。それと、紗奈(さな)に『ちょっと遅れる』って連絡も頼む」

「了解です!」

 

 元気な――これからバトルだというのに微妙に緊張感に欠ける――返事と共にミライがオレの言う通りにDフォンを遠隔操作し……。

 ふと、ぴたりと止まって呟いた。

 

『アレ、でもでも……面接バトルでは使えずに、人助けのバトルでは使えるって、マスターはわたしを何だと思っているのでしょうか? 相棒、ではないんですよね?』

「……それは、おまえももう分かってるだろ」

 

 1回言ったし、と言葉を濁すも、ミライはぴんと来ていない様子。

 はぁ、と溜息を吐いて言ってやる。

 

「だってオレがバイトの面接に受かろうが、おまえには何の得もないだろ。なのにソレを手伝ってもらうのは気が引けるってモンだ。でも、目の前の()()を見逃せばおまえだって後味悪い、よな? まあ要するに、そういうことだ」

『……? ええと、要するにどういうコトですか? もっと分かりやすく、一言で簡潔に表してくださいよぅ!』

「……」

 

 ほんとにこいつは、と言う言葉を何とか呑み込んで、オレは要望通りに簡潔に言った。

 

「……おまえは『友達』だ、ミライ。ま、どっちかっていうと悪友寄りだがな」

『む、失礼な。わたしのどこに悪要素があると言うのでしょうか! こんなにも可憐で善良なのに!』

 

 ぷんすこ、と全身で抗議しつつ……けれど次の瞬間には、ミライはにんまりと笑っていた。

 

『でも、トモダチという響きは気に入りました。いいでしょう。いずれ親友、相棒へとバージョンアップできるよう、ここらで良いトコ見せるとしましょうっ!』

「……ま、やる気があるのはいいけどさ」

 

 それだけ言って、オレは路地裏に突入した。

 ミライも空中を浮遊しながらオレに追従する。

 

 ざり、地面を踏む音が聴こえたのか、ガタイの良い学ランの男とそのバグDがこちらを振り向く。

 

「? なんだテメエらは!」

「別に名乗るほどの者じゃない。ただ……バグDバトルでオレが勝ったら、虐めてるソイツを置いて立ち去って貰おうか」

「ふん、誰かは知らねえが上等だ! バトルモードオン、バグDカードチェンジ!」

『勝負成立ですね! では行きますよぅ――カードフォーム・チェンジ!』

 

 オレと学ラン男は互いにDフォンを取り出し、バトルモードを起動する。

 互いのバグDが40枚のカードとなってDフォンに吸い込まれ、35枚の山札と5枚の手札が出現する。

 そして、オレたちは同時に吼える。

 

「「バグDバトル、ファイト!!」」

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 バグで悪魔(デビル)でデータな相棒(バディ)……通称バグD(ディー)

 あらゆる電子機器やプログラムの『異常(バグ)』から突然変異的に生まれた彼等は、今や人類の新たな友人として深く社会に浸透していた。

 そんなバグDをカード化させ、絆と戦略を競う決闘(デュエル)――バグDバトルもまた、世界中で大流行しているのだった……。

 




☆オレたちの戦いはこれからだ――!
 (ここで「みらいいろ」を流して終了)


というわけで、ここまで読んで頂きありがとうございました。
100%趣味全開の、自分が楽しむためだけの作品でしたが……楽しんで頂けたなら幸いです。
よければ最後に評価なり感想なり頂ければもっと幸いです。実はね。
では、機会があればまたどこかで。
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