バグDバトル、ファイト!! ~正真正銘「言ったもん勝ち」カードゲーム~ 作:龍川芥/タツガワアクタ
夜半、自室にて。
頭を抱え、オレ、
「いったいどうなってるんだよ、コレは……」
『? どうしました、
心配そうにオレの顔を覗き込んで来る、金髪碧眼の少女型バグD。
ミライ。
だが、その存在こそがオレの頭痛の種であると、彼女はちっとも気付いていないようだった。
暫定「謎のバグD」、ミライ……ふよふよと空中を浮遊する彼女に対し、オレは取り合えず問いかけてみる。
「……なあ、オマエはいったい何者なんだ? バグD、だよな?」
『はい、わたしはミライ――新しいアナタの
胸に手を当て高々と言い放つミライ。
既に「可愛い」というよりは「騒がしい」という印象が強くなってきた彼女の宣言に対し、オレは首を横に振る。
「違う。オレの
バグDには知性がある。それこそ人間並みの知能を備えているバグDも多い。
だが……
椅子に深く座り直しつつ、オレはふよふよと空中に浮かぶミライに白い目を向ける。
「喋るバグDなんて聞いた事がないぜ。そもそも、オマエは一体何のバグDなんだ? それにどうやってオレのDフォンに入って来たんだ?」
『え? それは、ええと……』
『バグD』とは、
つまり彼等は無からポンと発生するワケじゃない……その根源にして揺籃たる電子機器、あるいはプログラムが存在する。バグDである以上、そこに一切の例外は無い。
例えば
だから、この『ミライ』にも発生源たる電子機器/プログラムがあるはずだ。
それを言い淀むということは、つまり。
「言えないってことは、やっぱりオマエ、バグDじゃないんだろ。なんだよ、誰かのイタズラか? やっぱり、あの迷惑メールにコンピュータウイルスでも添付してたってトコか?」
『ち、違いますよぅ! わたしは確かにバグDです! なんです、けど……』
「けど?」
『えっと……秘密です。好感度ゲージを溜めてからもう一度お尋ねください。てへ☆』
「……はぁ。仕方ない、Dフォンごと買い替えるかな」
『んな! なんて冷血で非道な人間さんなんでしょうか! でもそんなことしても無駄です、わたしはあなたの個人情報に
「な、なんて鬱陶しいイタズラなんだ……!」
オレは自称バグD・ミライの迷惑千万さに頭を抱え……けれど内心のどこかには、冷静にその正体を突き止めようとする動きがあった。
完璧に意思疎通できる言語能力も、ころころと変わる表情も、人間のそれとしか思えない。
だがそんな直感を否定するように、ミライは瞬きの間にDフォンの画面の中に引っ込んだ。そして中からとあるアイコンを引っ張り出し、ピコン、と通知音を鳴らす。
『おっと、メールですよマスター! どうです、わたしは役に立つでしょう。捨てたりなんてもったいないですよ!』
「いや、通知機能なんてDフォンにデフォルトでついてるし……」
『なにおう! 無機質な通知音と、カワイイわたしが通知するのとでは、こう、癒し
Dフォンの画面から小さくなった上半身だけを出し、
その姿に
「……はぁ。Dフォンの通知の代行なんて、『普通のバグD』らしいこともするんだな、オマエ。それで、一体誰からのメッセなんだ?」
『はい、紗奈さんという方からです! 内容を要約すると、明日学校帰りに駅前のカフェに行かないか、というお誘いですね!』
「うげ……駅前のカフェって、ちょうどオレがバイトの面接落とされたとこじゃないか……」
嫌な記憶を思い出して顔を顰めていると、ふとミライが首を傾げた。
『けれど、ちょっと不思議です。マスターはわたしが来るまでバグDを持っていなかったんでしょう? なら、どうして普通のバグDがメールの通知機能を持っていることを知ってるんですか?』
「それは――」
反射的に答えようとしたオレの口は、けれど苦い感情に蓋をされた。
誤魔化すようにミライから背を向け、ソファベッドの上で横になる。
「どうでもいいだろ。誰のイタズラかは知らないけど、オレは寝るから黙っといてくれよ」
『了解です! ですがよりよいミライの為に、アラームを設定しておきますね!』
(……以外に素直、というか普通のバグDっぽいな……いや、喋るバグDなんて居るはずない。どうせ誰かのイタズラだ……)
自分に言い聞かせるようにそう念じて、オレはDフォンに――ミライに背を向けるように、ソファの上で寝返りをうった。