バグDバトル、ファイト!! ~正真正銘「言ったもん勝ち」カードゲーム~   作:龍川芥/タツガワアクタ

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④バグでデビルでデータなバディ、その名をバグD!

 夜半、自室にて。

 頭を抱え、オレ、拓条(たくじょう)ファイトは重苦しく呻いた。

 

「いったいどうなってるんだよ、コレは……」

『? どうしました、ご主人(マスター)?』

 

 心配そうにオレの顔を覗き込んで来る、金髪碧眼の少女型バグD。

 ミライ。

 だが、その存在こそがオレの頭痛の種であると、彼女はちっとも気付いていないようだった。

 

 暫定「謎のバグD」、ミライ……ふよふよと空中を浮遊する彼女に対し、オレは取り合えず問いかけてみる。

 

「……なあ、オマエはいったい何者なんだ? バグD、だよな?」

『はい、わたしはミライ――新しいアナタの相棒(バグD)です!』

 

 胸に手を当て高々と言い放つミライ。

 既に「可愛い」というよりは「騒がしい」という印象が強くなってきた彼女の宣言に対し、オレは首を横に振る。

 

「違う。オレの相棒(バグD)()()()だけだ。それに……」

 

 バグDには知性がある。それこそ人間並みの知能を備えているバグDも多い。

 だが……()()()()()()()D()、なんてのは、見たことも聞いたこともない。そんなものを目の当たりにした衝撃は、それこそ犬猫が喋ったのと同じくらいだった。

 椅子に深く座り直しつつ、オレはふよふよと空中に浮かぶミライに白い目を向ける。

 

「喋るバグDなんて聞いた事がないぜ。そもそも、オマエは一体何のバグDなんだ? それにどうやってオレのDフォンに入って来たんだ?」

『え? それは、ええと……』

 

 『バグD』とは、()()()()()()()()データデビル。

 つまり彼等は無からポンと発生するワケじゃない……その根源にして揺籃たる電子機器、あるいはプログラムが存在する。バグDである以上、そこに一切の例外は無い。

 例えば神山(かみやま)理或(リアル)のバグD【電脳勇者AAAA(オールエー)】は、魔王の脅威から世界を救う王道RPGから生まれた存在……そうオンライン誌のインタビューで語られていた。

 

 だから、この『ミライ』にも発生源たる電子機器/プログラムがあるはずだ。

 それを言い淀むということは、つまり。

 

「言えないってことは、やっぱりオマエ、バグDじゃないんだろ。なんだよ、誰かのイタズラか? やっぱり、あの迷惑メールにコンピュータウイルスでも添付してたってトコか?」

『ち、違いますよぅ! わたしは確かにバグDです! なんです、けど……』

「けど?」

『えっと……秘密です。好感度ゲージを溜めてからもう一度お尋ねください。てへ☆』

「……はぁ。仕方ない、Dフォンごと買い替えるかな」

『んな! なんて冷血で非道な人間さんなんでしょうか! でもそんなことしても無駄です、わたしはあなたの個人情報に存在(データ)を紐づけしているので、新しい機種に変えてもつきまとうことが可能なんですからね!』

「な、なんて鬱陶しいイタズラなんだ……!」

 

 オレは自称バグD・ミライの迷惑千万さに頭を抱え……けれど内心のどこかには、冷静にその正体を突き止めようとする動きがあった。

 

 完璧に意思疎通できる言語能力も、ころころと変わる表情も、人間のそれとしか思えない。

 だがそんな直感を否定するように、ミライは瞬きの間にDフォンの画面の中に引っ込んだ。そして中からとあるアイコンを引っ張り出し、ピコン、と通知音を鳴らす。

 

『おっと、メールですよマスター! どうです、わたしは役に立つでしょう。捨てたりなんてもったいないですよ!』

「いや、通知機能なんてDフォンにデフォルトでついてるし……」

『なにおう! 無機質な通知音と、カワイイわたしが通知するのとでは、こう、癒し(パラメータ)が全然違うでしょう!? それにわたしなら、このメールを読み上げたりもできますよぅ!』

 

 Dフォンの画面から小さくなった上半身だけを出し、SNS(メール)アプリのアイコンを抱きかかえてアピールするミライ。

 その姿に()()()の面影を見て、オレの警戒心は少し解けた。

 

「……はぁ。Dフォンの通知の代行なんて、『普通のバグD』らしいこともするんだな、オマエ。それで、一体誰からのメッセなんだ?」

『はい、紗奈さんという方からです! 内容を要約すると、明日学校帰りに駅前のカフェに行かないか、というお誘いですね!』

「うげ……駅前のカフェって、ちょうどオレがバイトの面接落とされたとこじゃないか……」

 

 嫌な記憶を思い出して顔を顰めていると、ふとミライが首を傾げた。

 

『けれど、ちょっと不思議です。マスターはわたしが来るまでバグDを持っていなかったんでしょう? なら、どうして普通のバグDがメールの通知機能を持っていることを知ってるんですか?』

「それは――」

 

 反射的に答えようとしたオレの口は、けれど苦い感情に蓋をされた。

 誤魔化すようにミライから背を向け、ソファベッドの上で横になる。

 

「どうでもいいだろ。誰のイタズラかは知らないけど、オレは寝るから黙っといてくれよ」

『了解です! ですがよりよいミライの為に、アラームを設定しておきますね!』

(……以外に素直、というか普通のバグDっぽいな……いや、喋るバグDなんて居るはずない。どうせ誰かのイタズラだ……)

 

 自分に言い聞かせるようにそう念じて、オレはDフォンに――ミライに背を向けるように、ソファの上で寝返りをうった。

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