バグDバトル、ファイト!! ~正真正銘「言ったもん勝ち」カードゲーム~ 作:龍川芥/タツガワアクタ
次の日、放課後。
下駄箱を越えた先、愛望高校の玄関口で、オレ、
「
メッセで決めた待ち合わせ場所はここだ。けれど何分待てども紗奈はやってこない。
まったく、カフェに行こうと言い出したのはアイツの方なのに……。
いや、紗奈が約束を破るのは珍しい。もしかしたら、何かトラブルに巻き込まれたのかもしれない。
「仕方ない、教室まで迎えに行くか……」
一度脱いだ上履きを履き直し、オレはとりあえず紗奈の
特に何事もなく、この曲がり角を曲がれば目的地は目の前だというタイミングで。
「きゃ――」
「!」
目の前の角の向こうから人が倒れ込んで来て、オレは咄嗟にその体を支えた。
転んだというよりは吹き飛ばされてきたという勢い――オレが受け止めなければ廊下に倒れ込んでいただろう――いや、それよりも今の声は。
慌てて抱き留めた相手の顔を確認すれば、オレが受け止めたのは紛れもない、
「紗奈!? 大丈夫かよ、おい!」
返事はない。意識はあるが、どうにも強いショックを受けているらしい。
「いったい何が……!」
「ファイ、ト。私の、バグD、が……」
辛うじて細い声が聴こえ。
オレは弾かれたように廊下の先を見た。
そこに立っていたのは、背後にバグDを従えた男子生徒。
その姿を見紛うハズは無い。
彼が何をしていたのかなどすら問うまでもない。
だって、そいつの名前は――。
「オマエ……紗奈のバグDまで奪ったのか、
「なんだ、またテメエかファイト」
カントー最強のバグDバトラー、無差別に他人からバグDを奪う、傍若無人にして唯我独尊の男。
彼はオレの姿を見るや否や、苛立たし気に吐き捨てる。
「バグDも持ってない奴は引っ込んでろ。バグDバトルができねえテメエが何をしようとも、現実は覆らねえんだからよぉ!」
「くそ……っ!」
奪われた紗奈のバグDを取り戻すには、アンティルールでのバグDバトルで勝つしかない。
だが勝負を挑もうにも、
(こんなとき
ぎり、と砕けんばかりに歯噛みする。
オレにはこのまま、悠々と去っていく
いや、バグDが居ない以上、どう足掻いてもそうするしか……!
『――バグDなら、ココに居ます!』
その声は。
オレの諦めを否定するようなその宣言は、オレのポケットの中のDフォンから放たれていた。
Dフォンの画面が服の上からでも分かるほど発行し――その中から昨日ぶりにバグDが現れる。
金髪碧眼の少女、その姿をした『喋るバグD』。
彼女こそ、昨日オレのDフォンから突然飛び出て来たバグD、その名を――。
「ミライ……!?」
『マスター、バグDバトルです! 力任せにバグDを奪うなんて……わたし、そんな人間さんを許してはおけません!』
そう言って、喋るバグD・ミライは――ずびしっ、と勢いよく
その声に、姿に、さしもの
「なに……? 喋るバグD、だと……!?」
だがその驚愕の顔は、すぐに獲物を見つけた肉食獣の笑みにすり替わった。
「――ハッ! レアそうなバグD持ってんじゃねえか、イイぜ、バトルだファイト! 俺様が勝ったらそのバグDを貰う!」
『アンティルールですか……どうしますか、マスター?』
「どうするったって――」
「残念だがテメエに拒否権はねえ! 当然、テメエが勝ったなら好きなだけバグDを返してやるよ……まァ現実的に考えて、そんな奇跡はありえねえがな!」
一切の反論を許さず、
そして猛々しく叫ぶ。
「バトルモードオン! バグD、カードチェンジ!」
瞬間、彼のDフォンが赤い光を放った。同時、そのDフォンが喋るように機会音声が流れる。
『承認、
「相手はそこの
慌ててDフォンを取り出せば、DフォンのバトルモードがONになっていた。
バトルモードはバトルが成立しなければ……つまり、お互いに最低1体でもバグDを持っていなければ起動しない。オレはバグDを持っていないハズなのに、何故――。
そんな疑問を掻き消すように、オレの眼前でミライは叫んだ。
『よぅし、こっちも行きますよ――カードフォーム・チェンジ!』
「え――」
瞬間、ミライが光に包まれ――次の瞬間、その体が40枚のカードにパラパラと分解されていく。
それはバグDバトルシステムによる、バグDのカードフォーム化。バグD自身をバグDカードに、バグDが持つ能力の一部などを
これが可能ということは。
「ミライ……オマエ、本当にバグDだったのか……!」
『最初からそう言っていましたよ! わたしはアナタの
その言葉を最後に。
ミライの姿は完全に40枚のカードと化し、そのうち35枚が山札としてDフォンの中に、5枚が最初の手札としてオレの手の中に収まった。
同様に、既に35枚の山札と5枚の手札を揃えた
そのぎらついた視線は真っ直ぐにオレを捉え、敵前逃亡など許されそうにない。
「やるしかないか……!」
言い訳するように呟いて、オレは手札を握りしめた。
これは
それでも……
出来る事なら、この手で紗奈や皆のバグDを取り戻したい……!
近くの壁に紗奈を座らせて立ち上がり。
複雑な心情を強い闘志で覆い隠すように、オレは吼えた。
同時、鏡写しのように
「「バグDバトル、ファイト!!」」
ファイト vs
――FIGHT !!