バグDバトル、ファイト!! ~正真正銘「言ったもん勝ち」カードゲーム~   作:龍川芥/タツガワアクタ

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⑤バグDバトル、ファイト!

 次の日、放課後。

 

 下駄箱を越えた先、愛望高校の玄関口で、オレ、拓条(たくじょう)ファイトは待ち惚けして呟いた。

 

紗奈(さな)のヤツ、遅いな……」

 

 メッセで決めた待ち合わせ場所はここだ。けれど何分待てども紗奈はやってこない。

 まったく、カフェに行こうと言い出したのはアイツの方なのに……。

 いや、紗奈が約束を破るのは珍しい。もしかしたら、何かトラブルに巻き込まれたのかもしれない。

 

「仕方ない、教室まで迎えに行くか……」

 

 一度脱いだ上履きを履き直し、オレはとりあえず紗奈の教室(クラス)に向かう。

 特に何事もなく、この曲がり角を曲がれば目的地は目の前だというタイミングで。

 

「きゃ――」

「!」

 

 目の前の角の向こうから人が倒れ込んで来て、オレは咄嗟にその体を支えた。

 転んだというよりは吹き飛ばされてきたという勢い――オレが受け止めなければ廊下に倒れ込んでいただろう――いや、それよりも今の声は。

 慌てて抱き留めた相手の顔を確認すれば、オレが受け止めたのは紛れもない、七沁(ななじみ)紗奈(さな)その人であった。

 

「紗奈!? 大丈夫かよ、おい!」

 

 返事はない。意識はあるが、どうにも強いショックを受けているらしい。

 

「いったい何が……!」

「ファイ、ト。私の、バグD、が……」

 

 辛うじて細い声が聴こえ。

 オレは弾かれたように廊下の先を見た。

 

 そこに立っていたのは、背後にバグDを従えた男子生徒。

 その姿を見紛うハズは無い。

 彼が何をしていたのかなどすら問うまでもない。

 だって、そいつの名前は――。

 

「オマエ……紗奈のバグDまで奪ったのか、神山(かみやま)理或(リアル)……ッ!」

「なんだ、またテメエかファイト」

 

 神山(かみやま)理或(リアル)

 カントー最強のバグDバトラー、無差別に他人からバグDを奪う、傍若無人にして唯我独尊の男。

 彼はオレの姿を見るや否や、苛立たし気に吐き捨てる。

 

「バグDも持ってない奴は引っ込んでろ。バグDバトルができねえテメエが何をしようとも、現実は覆らねえんだからよぉ!」

「くそ……っ!」

 

 理或(リアル)の背後から、オレを牽制するように彼のバグDが目を光らせる。

 

 奪われた紗奈のバグDを取り戻すには、アンティルールでのバグDバトルで勝つしかない。

 だが勝負を挑もうにも、理或(リアル)の強さは有名だし……何よりオレには、バグDバトルをするための相棒(バグD)が居ない。

 

(こんなとき()()()が……バグDが、居れば……!)

 

 ぎり、と砕けんばかりに歯噛みする。

 オレにはこのまま、悠々と去っていく理或(リアル)を見逃すことしかできないのか……。

 いや、バグDが居ない以上、どう足掻いてもそうするしか……!

 

 

『――バグDなら、ココに居ます!』

 

 

 その声は。

 オレの諦めを否定するようなその宣言は、オレのポケットの中のDフォンから放たれていた。

 Dフォンの画面が服の上からでも分かるほど発行し――その中から昨日ぶりにバグDが現れる。

 金髪碧眼の少女、その姿をした『喋るバグD』。

 彼女こそ、昨日オレのDフォンから突然飛び出て来たバグD、その名を――。

 

「ミライ……!?」

『マスター、バグDバトルです! 力任せにバグDを奪うなんて……わたし、そんな人間さんを許してはおけません!』

 

 そう言って、喋るバグD・ミライは――ずびしっ、と勢いよく理或(リアル)を指さした。

 その声に、姿に、さしもの理或(リアル)も瞠目する。

 

「なに……? 喋るバグD、だと……!?」

 

 だがその驚愕の顔は、すぐに獲物を見つけた肉食獣の笑みにすり替わった。

 

「――ハッ! レアそうなバグD持ってんじゃねえか、イイぜ、バトルだファイト! 俺様が勝ったらそのバグDを貰う!」

『アンティルールですか……どうしますか、マスター?』

「どうするったって――」

「残念だがテメエに拒否権はねえ! 当然、テメエが勝ったなら好きなだけバグDを返してやるよ……まァ現実的に考えて、そんな奇跡はありえねえがな!」

 

 一切の反論を許さず、理或(リアル)は懐からDフォンを取り出した。

 そして猛々しく叫ぶ。

 

「バトルモードオン! バグD、カードチェンジ!」

 

 瞬間、彼のDフォンが赤い光を放った。同時、そのDフォンが喋るように機会音声が流れる。

 

『承認、審判(ジャッジ)AI起動。対戦相手の設定をしてください』

「相手はそこの拓条(たくじょう)ファイトだ! 俺様が勝てばバグDを貰う!」

 

 理或(リアル)がそう叫ぶと同時、オレのバグDも赤く光る。

 慌ててDフォンを取り出せば、DフォンのバトルモードがONになっていた。

 バトルモードはバトルが成立しなければ……つまり、お互いに最低1体でもバグDを持っていなければ起動しない。オレはバグDを持っていないハズなのに、何故――。

 そんな疑問を掻き消すように、オレの眼前でミライは叫んだ。

 

『よぅし、こっちも行きますよ――カードフォーム・チェンジ!』

「え――」

 

 瞬間、ミライが光に包まれ――次の瞬間、その体が40枚のカードにパラパラと分解されていく。

 それはバグDバトルシステムによる、バグDのカードフォーム化。バグD自身をバグDカードに、バグDが持つ能力の一部などをS(サポート)カードにしてデッキを自動生成する機能。

 これが可能ということは。

 

「ミライ……オマエ、本当にバグDだったのか……!」

『最初からそう言っていましたよ! わたしはアナタの相棒(バグD)、【o-BUG(オーバーグ)ミライ】です!』

 

 その言葉を最後に。

 ミライの姿は完全に40枚のカードと化し、そのうち35枚が山札としてDフォンの中に、5枚が最初の手札としてオレの手の中に収まった。

 

 同様に、既に35枚の山札と5枚の手札を揃えた理或(リアル)

 そのぎらついた視線は真っ直ぐにオレを捉え、敵前逃亡など許されそうにない。

 

「やるしかないか……!」

 

 言い訳するように呟いて、オレは手札を握りしめた。

 これは()()()への裏切りかもしれないと、心のどこかがそう言っている。

 それでも……理或(リアル)の奴は許せない。

 出来る事なら、この手で紗奈や皆のバグDを取り戻したい……!

 

 近くの壁に紗奈を座らせて立ち上がり。

 複雑な心情を強い闘志で覆い隠すように、オレは吼えた。

 同時、鏡写しのように理或(リアル)も叫ぶ。

 

「「バグDバトル、ファイト!!」」

 

▶バグDバトル◀

ファイト vs 理或(リアル)

――FIGHT !!

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