バグDバトル、ファイト!! ~正真正銘「言ったもん勝ち」カードゲーム~ 作:龍川芥/タツガワアクタ
▶TRUN 03
手札:5枚
場 :【電脳勇者
ファイト
手札:2枚
場 :【
遂に始まったファイトと
手札の数もバグDのパワーも
おまけにファイトのバグDであるミライには、効果を使う為のテキストがない。
苦しい状況の中、ファイトの2ターン目が始まる。
「くっ……オレのターン、ドロー……!」
▶TRUN 04
ファイト 手札:2→3枚
山札:24→23枚
ファイトはドローした手札を確認する……だが、その顔は険しいままだった。
(
少しの逡巡の後、ファイトは手札からそのカードを発動した。
「オレは
(手札交換……ハッ、どうやら状況を打開するためのカードが欲しい現実らしい、が!)
『ドローの代償に、更にマスターの
ファイト 手札:3→3枚(交換)
山札:23→20枚
ファイトの手札が全て
有効な手札を引き込むための行動……けれど、それは
不利状況での更なるリスクに思わず声を上げたミライに対し、ファイトは諫めるように言った。
「承知の上だ。今は多少の
『わ、わかってますよぅ。よりよいミライの為、なんですよね!』
ミライも少し前の説明で、バグDバトルにおける手札の重要さを理解している。
今のドローで有効なカードが手札に入れば、苦境を覆せるかもしれないのだから。
だが、故にこそ――それを黙って見過ごす
「テメエの
「な、なんだと……!?」
『マ、マスターどうしましょう、わたしたちの手札がスケスケに……これじゃせっかく新調した手の内が丸見えです……!』
「──」
(クク、文字が裏返ってるから細かい部分は見れねえが……思った通り、3枚全部Sカードだなぁ。恐らく、奴の持つバグDは【
透視によって敵の手札の大まかな内容を把握した
「【
「! 更に手札を……!」
手札:3→5枚
その様子を前に、ミライは驚愕の声を漏らした。
『ま、また相手の手札が増えました! でも、その為に
「……ああ。かなりリスクのあるドローだが、ちっとも迷いが見えなかった。つまり、オレたちは舐められてるんだ」
『うぅ……ごめんなさいマスター、わたしが役立たずなばっかりに……』
「違うぜミライ、バグDバトルの勝敗はバグDの性能だけで決まる訳じゃない……押されてるのはオレらふたりの責任だ」
そう言うファイトの推測は当たっていた。
(多少
そんな彼に対し、ファイトは効果で透けた己の手札3枚を見ながらただ静かに思考に耽る。
(このバトル、勝てる可能性は万に一つ──)
もし、
その対策
万に一つだが……万に一つだけなら、勝機はある。
だから。
「……このターン、オレはバグDで攻撃しない。ターン、エンドだ」
『そんなっ、マスター!?』
「ハッ、ようやく分かったか現実が! 俺様のターン、ドロー!」
予想外の言葉にミライの動揺が落ち着くのも待たず、
▶TRUN 05
山札:18→17枚
結局、
ゆえに、
「再び聖剣の輝きを見せろ
電脳勇者
その命令を受け、勇者が聖剣を手に再度突進を仕掛けて来る。
先程はファイトが身を挺して庇う事でミライは破壊を免れたが、今回は果たして。
ファイト 手札:3枚
(来た――コレに賭けるしかない!)
内心で叫び、ファイトは手札からそのカードを発動した。
「この瞬間、オレは手札から
発動されたのは
だが、
「ハッ、さっきテメエの手札を見たのを忘れたかファイトォ、そのカードへの対策札は持ってるから攻撃してんだよぉ! 俺様は【
見れば、
【
そして、
「――いいや、それはどうかな、だぜ!」
「何ィ!?」
死域で掴んだ『万に一つの可能性』に、笑った。
それは紛れもなく賭け、それも分の悪い賭けだった。
だが、ここに条件は全てクリアされた――そう、ファイトは己の幸運に感謝する。
何故ならば。
「【
「な――なんだとォ……ッ!?」
そうだ。
その赤い炎の正体とは、インターネットにおける『炎上』の炎。
物理的熱を持たぬまま人の心を焼き焦がす、正義にして悪罵たる電脳の
「そして!
まるで、ファイトの言葉が現実となるかのように。
『炎上』の炎に包まれながらも、今にも斬りかかろうとしていた電脳の勇者――その手から聖剣がすっぽ抜けた。否、それは剣自身が主を見放し、生物めいて手中から跳躍したかのようで。
ともあれ聖剣を失った勇者のパワーが、元の数値まで低下する。
電脳勇者
「バカな……! 聖剣が、
「これで装備状態は解除、上昇していた
赤い炎が揺らめく人影の姿を取り、勇者を取り囲んで非難を始める。
吹き荒れる誹謗中傷・罵詈雑言の嵐。囂々と燃え盛るは悪評の火。それに苛まれ、攻撃しようとした
電脳勇者
【
彼は強運で引き寄せた流れのままに、更なる
「そして
敵のバグDのパワーを下げたファイトが次に狙うのは、当然――自分のバグD、つまりミライのパワーアップ。
「このカードの効果で、デッキから好きなカード1枚を
その言葉を
発動された
『わわっ、なんだか力が溢れてきます!?』
その変化に、
「ま、まさかコレは――!」
「そうだ、これで聖剣を失い『炎上』した
電脳勇者
ここに来て、遂に両者の力関係が入れ替わって。
そしてバグDバトルでは、一度命じたバグDの攻撃を中断できない――。
「返り討ちだ、ミライ!」
『は――はいっ! マスターが切り拓いてくれた未来、この名に懸けて無駄にはしませんっ!』
聖剣を失い、『炎上』しながらも歩みを止めない勇者を迎え撃つのは、むんと気合いを入れ直したミライ。
彼女が両手を前に突き出せば、両の掌の先に現れるのは四角い光。
メールアイコンを模したそれは、質量を持たぬ光であると同時に敵を貫く砲弾であり。
その両の手は砲身、その意志は火薬。
果たして
『行きますよぅ! これがわたしの、
閃光、発射――。
ミライが叫ぶと同時、流星と化した光弾が放たれ。
空気に軌跡を刻みながら駆ける砲弾が、迫り来る勇者の胴を貫いた。
『――』
ミライと違い喋れないそのバグDは、自身を貫いた衝撃に声にならない呻きのみを漏らし。
ぶわん、と。
無力な光の塊になって、主たる
つまり、これは――。
【電脳勇者
そして攻撃力の差ぶんのダメージを、主たる
「――!」
手札:6→5枚
場 :なし
ファイト
手札:3→1枚
場 :【
反射的に衝撃に耐えながら、けれど
「バカな……コレは現実か……? 俺様の
がら空きになった自身の
そんな彼とは対照的に、ミライは予想外の出来事に――攻撃を耐えるどころか返り討ちにした大戦果に驚愕と歓喜の声を上げる。
『ポンコツなわたしが、あの勇者さんに勝っちゃうなんて……マスター、アナタのバグDバトルの腕前はカントーチャンピオンと互角、あるいはそれ以上です! 超凄いです見直しました!』
「『見直した』って……今までなんだと思ってたんだよ……」
微妙に失礼なミライの賛辞に対し、ファイトが呆れたように呟く。
それでもミライの感動は本物であった。
ほとんど博打とはいえ、バグDバトルのカントーチャンピオンに対し競り勝ったファイトの力は、それこそ予想外のもので。
『でも……だからこそこれほどの技術、一夕一朝で身につけられるものとは思えません。どうして昨日までバグDを持っていなかったマスターが、これほどのバトルの腕前を……?』
「……まあ、色々あんだよ。それより集中しろ、ミライ。まだ相手の
問いへの答えはあくまで濁し。
続いた戒めるような言葉は、けれど半ば自戒であった。
なにせファイトの内心でも、「賭けに勝った」という高揚と、顔を覗かせた勝機への興奮とが炎めいて渦巻いていたのだから。
そう、今はまだ
ただ、それ以前に
苦難の末、ようやく見えた勝機。
これを掴んで離すまいとファイトは気合いを入れ直して――。
けれど。
そんな心を打ち据えるように、怒号めいた叫びが響いた。
「――調子に乗るなよファイトォ!」
ぶるり、ファイトとミライの体が震えた。
おかしい……バグDを
「
叫んで、
「【電脳勇者
「な、なんだと……!?」
「ファイト、テメエの未来は、現実は絶望一択だ! カントーチャンピオンの俺様に勝つなど、ありえねえんだよ現実的にぃ!」
激昂しながら言い放ち――
瞬間、そのカードから膨大な闇が噴出し、世界を黒一色に染め上げていく。
「!?」
『そんな……このパワー、さっきの勇者さんよりずっと上……!?』
ギン、と暗黒の中から赤い双眸が瞬き。
怒りによって凶相を作った
「さあ、不快な雑魚を叩き潰せ! RPGラスボスのバグDにして俺様の真の相棒、【電脳魔王
そうして、虚空よりバグDが現れ――。
ずん、と地が揺れた。
巨木めいた太さの、地に牙を突き立てる双竜めいた脚だった。
ばさり、黒が翻った。
それだけで周囲を夜にする、闇そのものであるかのような黒衣だった。
ずあ、と圧が奔った。
腕のひと振りで、凶眼のひと睨みで、全てを平伏させてしまいそうな存在感だった。
びしゃり、降る雷霆の色さえ黒。
不吉極まる後光を背負いながら、そのバグDは咆哮する。
『オオオオオオオ――――!!』
電脳魔王
顕現せしは巨躯の魔王。
未来を絶望の色に染める