▶TRUN 05
理或 山札:12枚
手札:4枚
場 :【電脳魔王Zエンド】ATK 30
ファイト 山札:19枚
手札:1枚
場 :【o-BUGミライ】ATK 15↑
神山理或の相棒【電脳勇者AAAA】を、接戦の末なんとか撃破したファイトとミライ。
これで逆転への道が開かれると思いきや――希望の光は闇に呑まれることとなる。
理或の場に召喚された新たなバグD、【電脳魔王Zエンド】。AAAAを遥かに超えるパワーと威圧感を持つバグDが、ミライの前に立ちはだかった。
動揺するファイトとミライへ、理或はプライドを傷つけられた激昂のまま叫ぶ。
「まだ俺様のターンは続いているって現実を忘れてんじゃねえぞ、ファイトォ! さあZエンド、ファイトのバグDを蹴散らせェ! 絶対絶滅絶望波――!!」
その声に従い、闇そのものを衣として纏ったような巨大なる魔王が動き出す。
電脳魔王Zエンド:ATK 30
o-BUGミライ:ATK 15
『ひええ、マスター来ますよっ、アナタのミライが今まさに絶体絶命ですよぅ!?』
「くッ、分かってる!」
【渾身の一投】の効果でミライのパワーも上昇しているのだが、それでもパワーの差は歴然。
魔王が黒い魔力を放つ腕を構える――そこから超破壊の魔法が放たれる前に、ファイトは手札に残った最後のSカードを発動した。
ファイト 手札:1→0枚
「オレはSカード【自演工作:水増し編】を発動! 効果終了後にパワーダウンする代わりに、1ターンミライのパワーを大きくアップさせる。これで何とかパワーを互角に――」
バグDどうしのバトルでは、パワーが同じなら引き分けとなり破壊もダメージも発生しない。
ゆえに、何もできず破壊されるよりはとSカードを発動したファイトだったが――。
「ハッ、甘い甘ぇ甘過ぎんだよぉ! 俺様の【電脳魔王Zエンド】は、この世にある全ての力を使う事が出来る! その強大な効果のコストとして手札1枚を使うが……つまり、相手が使ったSカードの効果を模倣し自分のモノとして使えるって現実だァ!」
「な、何――!?」
「これがZエンドの能力ァ、全能絶技!」
理或 手札:4→3枚
理或が手札1枚を墓地へと送る。
すると墓地から溢れ出た漆黒の魔力をZエンドが操り、ファイトのSカードを複製してみせた。
そしてミライのパワーが上昇するのと同時、Zエンドのパワーもそれと同じだけ上昇する。
o-BUGミライ:ATK 15→30
電脳魔王Zエンド:ATK 30→45
引き分け狙いどころか、パワーの差が少しも縮まらない。
ここに来て、ファイトの狙いは完全に不発となる。
更に追い打ちをかけるように、理或が新たな手札を切った。
「更に俺様はSカード【強化藥Z】発動ォ! 自分のバグD1体のパワーを1ターンの間上昇させる!」
「(ッ、不味い――) いや、ソレは勇者側が使うアイテムだろ!? 魔王側には使えない、あるいは効果が薄れるハズだ!」
「チッ、せせこましい反論を……!」
理或のSカード発動に対し、咄嗟に反論を挟み込んだファイト。
審判AIの判断は、果たして。
電脳魔王Zエンド:ATK 40→42
その結果に、ファイトも理或も眉を顰める。
(くそ、流石に不発にはならないか……!)
「これは、パワーの上昇値が下がったか……だが、バトルの結果は変わらねえ!」
電脳魔王Zエンド:ATK 42
o-BUGミライ:ATK 30
理或の言う通り。パワーの差は終ぞ逆転せず、そしてもうファイトに打つ手はない。
そして理或は凶悪に笑い、大砲の発射でも命じるかのように勢いよく手を振り下ろす。
「改めて喰らえ、現実の痛みをォ! 絶対絶滅絶望波――!!」
魔王が咆哮した。
黒衣を裂いて突き出すは腕。
その掌から放たれしは、げに禍々しき漆黒の波動――おそらくは魔王にのみ許されし、禁忌にして破滅の大魔法。
闇、迸る。
黒き魔力が怒濤めいて空を奔る様は、世界そのものが蹂躙されるという形容すら相応しく。
そんな邪悪なる魔の波動が、今、何の奇跡もなくミライを呑み込んだ――。
『ゃ、あああああああああ――っ!』
全身を破壊の奔流に呑み込まれ、ミライが壮絶に悲鳴を上げる。
それでも闇の勢いは衰えを見せず、寧ろ嗜虐の悦にいっそうの猛りを増したようでさえあって。
蹂躙する。
暗黒が、金の髪も青の目も全てを汚さんと邪悪に唸り暴れ狂う。
「ミライ……ッ!」
「Zエンドは弱者を甚振る性質でなぁ、そう簡単にバトルでバグDを破壊したりはしねえ。だが当然、ダメージは受けて貰うぜファイトぉ!」
そして。
理或の叫びに呼応したように、漆黒の波動はミライを通り越してファイトにも襲い掛かった。
凄まじい衝撃に全身を叩かれ、ファイトの体がミライともども後ろへ吹き飛ぶ。
「ぐッ、うあああああああああああ――!!」
悲鳴と共に山札も吹き飛び、それらが墓地に消えるのと同時、ファイトとミライの体は床に強く叩きつけられた。
ファイト 山札:19→2枚
「ぐ、あ……!」
『ぅ、うぅ……』
一気に17枚もの山札を失うという大ダメージを受けたファイト。
破壊こそ免れたものの、パワー差17の恐るべき攻撃をまともにくらってしまったミライ。
そんなボロボロの主従を見下しながら、理或は更に1枚の手札を切る。
「更にターンエンドの前に、俺様はSカード【教会での解呪】を発動! Zエンドに適用されるデメリット効果、つまり効果終了後にパワーが0になるという現実を打ち消す! これでZエンドのパワーは元の値の30までしか下がらねえ!」
電脳魔王Zエンド:ATK 42→30
o-BUGミライ:ATK 30→0
ターンエンド時、【自演工作:水増し編】のデメリット効果でミライのパワーが0まで下がる。
だが【自演工作:水増し編】をコピーしたZエンドの方は、理或の発動した【教会での解呪】によって効果終了時のデメリット効果から逃れていた。
「クク、どうやら見えて来たみてえだなぁ、現実ってヤツが」
自身の圧倒的有利を確信し、理或はいくばくかの余裕を取り戻しせせら笑った。
「パワーが0になったテメエのバグDで、パワー30のZエンドを倒すことはほぼ不可能。しかもテメエの手札はゼロ、ターンが回ってもたった1枚! それでどうやって俺様の残りライフ12枚を削るつもりだぁ? テメエの山札はたった2枚……つまり次のテメエのターンに俺様のライフを削り切れなきゃ、更に次のターンが回ってこようとも、テメエは最後の山札をドローで失い自動的に敗北するって現実なのになァ!」
バグDバトルは、山札が0枚になった瞬間に敗北する。
そしてターン開始時、プレイヤーはカードを1枚ドローしなければならない。
つまり山札が残り2枚のファイトにとって、次が最後のターンとなる……。
「どうした、さっさとカードを引きやがれファイトぉ! それでテメエの命たる山札は最後の1枚となり、テメエの最後のターンが訪れる……それがテメエの、絶対の現実なんだからよぉ!」
言い放つ理或の声には確信があった。
それは現状を見れば無理なからぬことであろう。
理或 山札:12枚
手札:1枚
場 :【電脳魔王Zエンド】ATK 30
ファイト 山札:2枚
手札:0枚
場 :【o-BUGミライ】ATK 0↓
山札の差、実に10枚。
ファイトに手札はなく、更にバグDもパワーは0、効果テキストもなし。その上理或のフィールドには、パワー30かつ強力な効果を持つバグD。
そして次のターンが、ファイトに残された正真正銘最後のターンとなる。
暗黒に包まれてしまった場のように、最早どこにも希望はなく。
絶望のラストターンが、ファイトとミライに訪れようとしていた。