バグDバトル、ファイト!! ~正真正銘「言ったもん勝ち」カードゲーム~   作:龍川芥/タツガワアクタ

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⑧絶体絶命! 絶望のバグD、Zエンド降臨

 ▶TRUN 05

 

 理或(リアル)   山札(ライフ):12枚

      手札:4枚

      場 :【電脳魔王Z(ゼット)エンド】ATK 30

 

 ファイト 山札(ライフ):19枚

      手札:1枚

      場 :【o-BUG(オーバーグ)ミライ】ATK 15↑

 

 

 神山(かみやま)理或(リアル)相棒(バグD)【電脳勇者AAAA(オールエー)】を、接戦の末なんとか撃破したファイトとミライ。

 これで逆転への道が開かれると思いきや――希望の光は闇に呑まれることとなる。

 理或(リアル)(フィールド)に召喚された新たなバグD、【電脳魔王Z(ゼット)エンド】。AAAA(オールエー)を遥かに超えるパワーと威圧感を持つバグDが、ミライの前に立ちはだかった。

 

 動揺するファイトとミライへ、理或(リアル)はプライドを傷つけられた激昂のまま叫ぶ。

 

「まだ俺様のターンは続いているって現実を忘れてんじゃねえぞ、ファイトォ! さあZ(ゼット)エンド、ファイトのバグDを蹴散らせェ! 絶対絶滅絶望波(ゼロ・エンド)――!!」

 

 その声に従い、闇そのものを衣として纏ったような巨大なる魔王が動き出す。

 

 電脳魔王Z(ゼット)エンド:ATK 30

 o-BUG(オーバーグ)ミライ:ATK 15

 

『ひええ、マスター来ますよっ、アナタのミライが今まさに絶体絶命ですよぅ!?』

「くッ、分かってる!」

 

 【渾身の一投(オールイン・ポスト)】の効果でミライのパワーも上昇しているのだが、それでもパワーの差は歴然。

 魔王が黒い魔力を放つ腕を構える――そこから超破壊の魔法が放たれる前に、ファイトは手札に残った最後のS(サポート)カードを発動した。

 

 ファイト 手札:1→0枚

 

「オレはSカード自演工作:水増し編(セルフ・インフレーション)*1を発動! 効果終了後にパワーダウンする代わりに、1ターンミライのパワーを大きくアップさせる。これで何とかパワーを互角に――」

 

 バグDどうしのバトルでは、パワーが同じなら引き分けとなり破壊もダメージも発生しない。

 ゆえに、何もできず破壊されるよりはとS(サポート)カードを発動したファイトだったが――。

 

「ハッ、甘い甘ぇ甘過ぎんだよぉ! 俺様の【電脳魔王Z(ゼット)エンド】*2は、この世にある全ての力を使う事が出来る! その強大な効果のコストとして手札1枚を使うが……つまり、相手が使ったSカードの効果を模倣(コピー)し自分のモノとして使えるって現実だァ!」

「な、何――!?」

「これがZ(ゼット)エンドの能力(チカラ)ァ、全能絶技(ゼウス・オーラ)!」

 

 理或(リアル) 手札:4→3枚

 

 理或(リアル)が手札1枚を墓地(トラッシュ)へと送る。

 すると墓地(トラッシュ)から溢れ出た漆黒の魔力をZ(ゼット)エンドが操り、ファイトのS(サポート)カードを複製してみせた。

 そしてミライのパワーが上昇するのと同時、Z(ゼット)エンドのパワーもそれと同じだけ上昇する。

 

 o-BUG(オーバーグ)ミライ:ATK 15→30

 電脳魔王Z(ゼット)エンド:ATK 30→45

 

 引き分け狙いどころか、パワーの差が少しも縮まらない。

 ここに来て、ファイトの狙いは完全に不発となる。

 更に追い打ちをかけるように、理或(リアル)が新たな手札を切った。

 

「更に俺様はS(サポート)カード強化藥Z(パワーポーション・ズィール)*3発動ォ! 自分のバグD1体のパワーを1ターンの間上昇させる!」

「(ッ、不味い――) いや、ソレは勇者(プレイヤー)側が使うアイテムだろ!? 魔王(エネミー)側には使えない、あるいは効果が薄れるハズだ!」

「チッ、せせこましい反論を……!」

 

 理或(リアル)S(サポート)カード発動に対し、咄嗟に反論を挟み込んだファイト。

 審判(ジャッジ)AIの判断は、果たして。

 

 電脳魔王Z(ゼット)エンド:ATK 40→42

 

 その結果に、ファイトも理或(リアル)も眉を顰める。

 

(くそ、流石に不発にはならないか……!)

「これは、パワーの上昇値が下がったか……だが、バトルの結果は変わらねえ!」

 

 電脳魔王Z(ゼット)エンド:ATK 42

 o-BUG(オーバーグ)ミライ:ATK 30

 

 理或(リアル)の言う通り。パワーの差は終ぞ逆転せず、そしてもうファイトに打つ手(てふだ)はない。

 そして理或(リアル)は凶悪に笑い、大砲の発射でも命じるかのように勢いよく手を振り下ろす。

 

「改めて喰らえ、現実の痛みをォ! 絶対絶滅絶望波(ゼロ・エンド)――!!」

 

 魔王が咆哮した。

 黒衣を裂いて突き出すは(かいな)

 その掌から放たれしは、げに禍々しき漆黒の波動――おそらくは魔王にのみ許されし、禁忌にして破滅の大魔法。

 闇、(ほとばし)る。

 黒き魔力が怒濤めいて空を奔る様は、世界そのものが蹂躙されるという形容すら相応しく。

 そんな邪悪なる魔の波動が、今、何の奇跡もなくミライを呑み込んだ――。

 

『ゃ、あああああああああ――っ!』

 

 全身を破壊の奔流に呑み込まれ、ミライが壮絶に悲鳴を上げる。

 それでも闇の勢いは衰えを見せず、寧ろ嗜虐の悦にいっそうの猛りを増したようでさえあって。

 蹂躙する。

 暗黒が、金の髪も青の目も全てを汚さんと邪悪に唸り暴れ狂う。

 

「ミライ……ッ!」

Z(ゼット)エンドは弱者を甚振る性質でなぁ、そう簡単にバトルでバグDを破壊したりはしねえ。だが当然、ダメージは受けて貰うぜファイトぉ!」

 

 そして。

 理或(リアル)の叫びに呼応したように、漆黒の波動はミライを通り越してファイトにも襲い掛かった。

 凄まじい衝撃に全身を叩かれ、ファイトの体がミライともども後ろへ吹き飛ぶ。

 

「ぐッ、うあああああああああああ――!!」

 

 悲鳴と共に山札(ライフ)も吹き飛び、それらが墓地(トラッシュ)に消えるのと同時、ファイトとミライの体は床に強く叩きつけられた。

 

 ファイト 山札(ライフ):19→2枚

 

「ぐ、あ……!」

『ぅ、うぅ……』

 

 一気に17枚もの山札(ライフ)を失うという大ダメージを受けたファイト。

 破壊こそ免れたものの、パワー差17の恐るべき攻撃をまともにくらってしまったミライ。

 

 そんなボロボロの主従を見下しながら、理或(リアル)は更に1枚の手札を切る。

 

「更にターンエンドの前に、俺様はS(サポート)カード教会での解呪(セーブポイント・ヒール)*4を発動! Z(ゼット)エンドに適用されるデメリット効果、つまり効果終了後にパワーが0になるという現実を打ち消す! これでZ(ゼット)エンドのパワーは元の値の30までしか下がらねえ!」

 

 電脳魔王Z(ゼット)エンド:ATK 42→30

 o-BUG(オーバーグ)ミライ:ATK 30→0

 

 ターンエンド時、【自演工作:水増し編(セルフ・インフレーション)】のデメリット効果でミライのパワーが0まで下がる。

 だが【自演工作:水増し編(セルフ・インフレーション)】をコピーしたZ(ゼット)エンドの方は、理或(リアル)の発動した【教会での解呪(セーブポイント・ヒール)】によって効果終了時のデメリット効果から逃れていた。

 

「クク、どうやら見えて来たみてえだなぁ、現実ってヤツが」

 

 自身の圧倒的有利を確信し、理或(リアル)はいくばくかの余裕を取り戻しせせら笑った。

 

「パワーが0になったテメエのバグDで、パワー30のZ(ゼット)エンドを倒すことはほぼ不可能。しかもテメエの手札はゼロ、ターンが回ってもたった1枚! それでどうやって俺様の残りライフ12枚を削るつもりだぁ? テメエの山札はたった2枚……つまり次のテメエのターンに俺様のライフを削り切れなきゃ、更に次のターンが回ってこようとも、テメエは最後の山札(ライフ)をドローで失い自動的に敗北するって現実なのになァ!」

 

 バグDバトルは、山札(ライフ)が0枚になった瞬間に敗北する。

 そしてターン開始時、プレイヤーはカードを1枚ドローしなければならない。

 つまり山札が残り2枚のファイトにとって、次が最後のターンとなる……。

 

「どうした、さっさとカードを引きやがれファイトぉ! それでテメエの(ライフ)たる山札は最後の1枚となり、テメエの最後のターンが訪れる……それがテメエの、絶対の現実なんだからよぉ!」

 

 言い放つ理或(リアル)の声には確信があった。

 それは現状を見れば無理なからぬことであろう。

 

 理或(リアル)   山札(ライフ):12枚

      手札:1枚

      場 :【電脳魔王Z(ゼット)エンド】ATK 30

 

 ファイト 山札(ライフ):2枚

      手札:0枚

      場 :【o-BUG(オーバーグ)ミライ】ATK 0↓

 

 山札(ライフ)の差、実に10枚。

 ファイトに手札はなく、更にバグDもパワーは0、効果テキストもなし。その上理或(リアル)のフィールドには、パワー30かつ強力な効果を持つバグD。

 そして次のターンが、ファイトに残された正真正銘最後のターンとなる。

 

 暗黒に包まれてしまった(フィールド)のように、最早どこにも希望はなく。

 絶望のラストターンが、ファイトとミライに訪れようとしていた。

*1
S / 自分の場にある任意の数値を大幅に増加させる。ただし元の数値の倍までしか増えず、この効果に関係する現象で相手へのダメージは発生しない。またターン終了時に数値の上昇は解除され、更に増加したぶんと同じだけ元の数値が減少する。

*2
バグD / ATK 30 / 世界を絶望で染め上げた性格最悪の大魔王という設定を持つ、RPGゲームのラスボスから発生したバグD。普通に召喚することはできず、世を照らす希望が翳ったときにのみ顕現し地平を絶望の闇で閉ざす。全ての武術・魔法を使いこなすことができるが、力が強大過ぎるため制御は難しい。

*3
S / 攻撃力のステータスを短時間高めるポーション、その最終改良版。一口飲めば巨岩をも砕く怪力を得る。とあるゲームのアイテムが現実世界に再現されたもの。

*4
S / 自分のバグDに対する毒や呪い、パワーダウン状態などを全て解除する。ただし戦闘中には使えない。

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