主人公の手紙が登場!
ただ、手紙の内容は原作知識を書き出しているだけなので、読み飛ばしてしまってもOKです。
時系列は知らん!!
柱合裁判の場にて――
禰豆子は確かにそっぽを向いた。
その姿を見届けたお館様は、穏やかな声で告げた。
「これで、禰豆子が人を襲わないことの証明はできたね」
場に漂っていた緊張が、わずかに緩んだ。
続けて、お館様は言葉を継いだ。
「それと、竈門家の者が来たら渡すようにと、産屋敷家で代々保管してきた手紙がある」
「炭治郎、それをここで読んでもいいかな」
突然の申し出に、炭治郎は戸惑った。そんな手紙に心当たりはなかった。
その様子に、風柱・不死川実弥が苛立ちを露わにする。
「お館様が聞いてるだろうがァ」
怒鳴られ、炭治郎は慌てて「どうぞ」と答えた。
「では、手紙を」
お館様の言葉に応じ、左右に控えていた娘のひとり、産屋敷ひなきが「はい」と言って懐から手紙を取り出す。
それは先ほど読まれた鱗滝の手紙とは異なり、明らかに時を経た古いものだった。
ひなきは説明する。
「この手紙は戦国の世より産屋敷家で保管されていたもので、宛名には“竈門家の子孫へ”とあります。三枚ございますが、内容は私どもも把握しておりません。一枚目から全文を読ませていただきます」
柱たちは驚きと疑念を抱きながらも、静かに耳を傾けた。
ひなきは読み始める。
「”――始めに、この手紙の趣旨を述べておく。この手紙は、僕の知る限りの情報を記し、後の鬼殺隊の者たちを助けるためのものである。ただし、竈門家の者の前でのみ開封されること。もし竈門家の者が鬼殺隊に所属していない場合、この手紙はまだ読まれる時ではない。そのため、読まないでいただきたい”」
「なんだァ、この手紙はよォ」
実弥が困惑を隠せず呟く。場にいた者たちも、心の中で同意していた。
「”――では、竈門家の者がいるとして話を進める。僕としては、竈門家の者が鬼狩りに関わってほしくはなかったが、今は置いておこう。僕の名前は、竈門ひかり。そこにいるであろう竈門炭治郎の遠い先祖の縁者にあたる。とはいっても、竈門家と血の繋がりはなく、養子ではあるがね”」
炭治郎は息を呑んだ。自分が生まれる前に書かれた手紙に自分の名が記されていることに、驚きを隠せなかったのだ。
ひなきは続ける。
「”――あるいは、竈門家の者には、呼吸の指南書の作者は僕だ、と言えば伝わるかな”」
炭治郎は思わず叫ぶ。
「あの本の作者!?」
お館様が静かに尋ねる。
「炭治郎、心当たりがあるのかな」
炭治郎は頷きながら答えた。
「俺の家には、代々神楽と耳飾り、それと一冊の本が伝わっています。呼吸の指南書というのは、おそらくその本だと思います。ただ、俺の名前を知っていることについては……わかりません」
お館様は「そうか」とだけ呟き、ひなきに続きを促した。
「続けます」
「”僕がなぜ炭治郎の名前を知っているか、不思議に思っているだろう。それに関しては、僕は未来を知っているとだけ答える。炭治郎は鬼を連れていたことで裁判にかけられているだろう。故に、この手紙に残した情報で、僕は炭治郎たちの助命をお願いする。この願いも、手紙を書いた目的の一つである。三枚の手紙のうち、一枚目と三枚目は僕の知る未来をもとに作った。そのため、この手紙の内容と状況が異なっていた場合、未来は僕の知るものとは違うものとなっているため、二枚目のみを読んで他の手紙は破棄してくれ。二枚目の手紙には、呼吸について記してある。痣については産屋敷家も把握しているだろう。だからこそ、戦国の世でも習得者が少なく、失伝の可能性が高い、全集中の呼吸を極めた先にある、透き通る世界。それと、鬼の再生力を一時的に落とす赫刀について記した”」
未来を知っている――そんなこと、信じられるはずがない。
だが、炭治郎の名を言い当てたこと。そして、鬼狩りにとって有益な情報が記されている可能性。
誰もが静かに、手紙を読む、ひなきの声に耳を傾けていた。
「”さて、僕がこの一枚目の手紙に残す情報は二つだ。一つ目は、十二鬼月に関してだ。その上弦の壱についての情報を残す。上弦の壱の名は黒死牟、人間だった頃の名は継国巌勝。僕の血縁上の父であり、霞柱の遠い先祖でもある。ちなみに、そこにいる霞柱は僕の兄の子孫であり、僕自身の子孫ではないことを伝えておく。それは置いといて、黒死牟はかつて鬼狩りであり、月柱として名を馳せた男だ。そのため、鬼でありながら呼吸も使う強力な鬼となった。使う呼吸は月の呼吸。その特徴は攻撃範囲が広すぎることだ。月の呼吸の剣閃は紙一重ではなく、余裕を持って回避しなければならない。それと、黒死牟は透き通る世界を習得しているため、対峙する者は透き通る世界を会得していることが必須だ。透き通る世界は二枚目の手紙にも書かれているが、簡潔に言えば、攻撃の動作がまるで未来を読まれているかのように見抜かれると思えば良い。実際、僕の知る未来では、霞柱・時透無一郎、不死川玄弥、風柱・不死川実弥、岩柱・悲鳴嶼行冥の四名によって討伐に成功しているが、そのうち霞柱・時透無一郎と不死川玄弥はその闘いで命を落としている”」
命を落とす、その言葉に実弥は「なっ!!」と動揺し、時透は「へぇ」と興味を示した。
手紙は続く。
「”それと、他の上弦についてと鬼舞辻についての情報を三枚目の手紙に残す。ただ黒死牟とは違い、他の上弦の鬼は僕の死後に誕生しているため、上弦の鬼の情報については何か差異があるかもしれないことに留意してくれ”」
「”あと、黒死牟については、本来なら僕自身でけりをつけたかった。しかし、僕は痣者で寿命が近い。それでも、黒死牟とはもうすぐ会える予感がするから、黒死牟には一生治らない傷を刻んでおくつもりだ。僕たちの時代の鬼の始末を後世の人に頼むことには、心苦しいものがあるがよろしく頼む。縁壱さんが討ってくれれば良いのだが、縁壱さんは兄を深く慕っていたから、おそらく黒死牟を殺すことはできないだろう。僕たちでは無理だった。すまない”」
「”次に、二つ目の情報だが、それは竈門家の重要性だ。これには、先ほど登場した縁壱さんが深く関わっている。縁壱さんは簡潔に言うと、僕の叔父で、黒死牟の弟。そして、呼吸の開祖だ。未来では、戦国の世に現れた呼吸を使う鬼狩りを始まりの呼吸の剣士たちと呼称しているようだが、それは間違っている。厳密には、縁壱さんが生まれながらにして全集中の呼吸と透き通る世界を習得しており、それを鬼殺隊に伝えたことで、呼吸を扱う鬼狩りが現れたのだ。そして、縁壱さんは無惨を追い詰めたが、奴は千八百の肉片になって爆発し、逃げた。しかも、縁壱さんが生きている間は一切行動を起こさなかった。しかし、縁壱さんは瞬時に千五百の肉片を切って見せたからすごい。つまり、鬼舞辻無惨は不利になると、すぐに逃げる。このことを覚えておいてほしい。話を戻すと、竈門家には代々受け継がれてきた神楽があると思うのだが、それは縁壱さんが使っていた日の呼吸だ。これに関しては、煉獄家の歴代炎柱の手記に情報が残されているだろう。他に記録は残っていないはずだ。無惨は縁壱さんを極度に恐れた。そのため、無惨と黒死牟により、縁壱さんの情報は徹底的に縁壱さんの死後、消されたはずだ。故に、日の呼吸を扱う竈門家の存在は無惨と闘う上で大きな鍵となる。無惨が炭治郎に追手を放っているのは、縁壱さんがつけていた耳飾りを炭治郎がつけていたからだ”」
炭治郎は次々と重大な情報は流れてきて、完全に混乱していた。だが、それはその場にいた他の人たちも同様であった。
「”だから、炭治郎、頑張れ!君が追手を倒していけば、いずれ無惨に辿り着ける。もっと日の呼吸を極めるんだ!!僕は応援しているよ”」
「はい、頑張ります!!!」
正直な炭治郎は応援していると言われ、返事をしてしまうのであった。
周囲の人はそんな正直な炭治郎を見て、呆れたり、笑いを堪えたりしていた。
「”最後に鬼殺隊に伝えたいことがある”」
この言葉に鬼殺隊の者たちは身構えた。それは、最後に伝えたいことって何だ!?
度重なる情報に、鬼殺隊は割と疲れていた。
「”青い彼岸花を探せ”」
青い彼岸花とは?そんなものがこの世に存在するのか?
そもそも、それを探して何の意味がある。
困惑する鬼殺隊。
「”無惨は完璧な存在になりたいそうだ。しかし、鬼には致命的な弱点がある。それが太陽だ。無惨は太陽の克服を目指している。無惨が太陽の克服手段として考えているものは二つある。一つは太陽を克服した鬼を無惨が吸収することだ。まぁ、これに関しては気にするな。およそ千年間、鬼を増やし続けても現れなかったんだ。気にしても無駄だ。ただ、竈門家の鬼は太陽を克服する可能性がある。だからと言って、竈門家の者を殺してはならない。竈門家の鬼が太陽を克服した場合、鬼殺隊がすぐにその鬼を殺すと思い、無惨の方から鬼殺隊を襲撃するはずだ。そこで、無惨を殺せ。むしろ、竈門家の鬼を殺していた場合、無惨はすぐさま逃げる可能性がある”」
「”そして、もう一つの克服手段が青い彼岸花だ。もともと無惨は青い彼岸花を用いた薬で鬼となった。当時の医師が無惨の病のために調合した薬だったのだが、それは未完成だった。そのため、無惨は人を食う鬼という化け物となった。ちなみに、薬を調合した医師は無惨が人であった頃に殺された。それで、薬は未完成。病気が治らないことからの苛立ちでやってしまったそうだが、何とも愚かなことだ。青い彼岸花を無惨は上弦に探すよう命じ、無惨自身も薬学を学んでいるようだが、見つかるはずもない。青い彼岸花は一年で三日だけ昼間に咲くものだ。なんとも皮肉なことか。笑えてくる”」
「”兎に角、青い彼岸花を探して、できれば燃やしてほしい”」
「”これで、一枚目はおしまいだ。鬼殺隊の健闘を祈っている”」
「これで、一枚目が読み終わりました」
と、ひなきが告げる。
それを聞いたお館様は、目を閉じ、深く息を吐いた後、言った。
「とりあえず、いったん休憩としよう」
と。その言葉に、柱たちは静かに頷いた。
だが、誰一人として気を緩めてはいなかった。
天元は「元柱の鬼か。実に、派手だな」と叫んだ。
義勇は「…俺は関係ない」と呟く。
杏寿郎は「よもや、よもやだ。父上に聞かなければならないことができたな」と大声で言う。
実弥は「玄弥が死ぬだと……!」と苛立ちを隠せず、壁に拳を打ちつけた。
悲鳴嶼は目を閉じ、涙を流しながら、祈るように数珠を握りしめる。
無一郎は、どこか遠くを見るような目で「…僕、死ぬんだ」と呟いていたが、その声には不思議な静けさがあった。
伊黒は黙っていたが、蜜璃の不安げな表情を見て、そっと手を握った。
そして、手紙の最後に記された”青い彼岸花”。
その言葉が、隊士たちの間に新たな謎と緊張を生み出していた。
「青い彼岸花……」としのぶが呟く。
「薬学的に考えても、そんな花が存在するとは思えません。でも、無惨がそれを探している以上、探す価値はあるかもしれませんね」
──なお、二枚目と三枚目の手紙には、一枚目に記されていた通り、淡々と情報が綴られていた。
***
そう遠くない未来、闇が蠢く無限城の一角にて――
霞柱・時透無一郎は、静かに刀を構えていた。
その前に立つのは、上弦の壱・黒死牟。
異形の姿に、上弦が纏う威圧。
だが、無一郎は一歩も退かない。
その瞳は、濁りなく澄んでいた。
「……お前は、私の子孫だ」
黒死牟の声は低く、重く響いた。
その言葉は、かつての無一郎なら動揺を誘っただろう。
だが、今の彼は違った。
無一郎は、ほんの少し眉を上げただけで、淡々と答えた。
「知ってるよ。手紙に書いてあったから」
その声は、まるで天気の話でもするかのように平坦だった。
黒死牟の瞳がわずかに揺れる。
「……手紙?」
「うん。お前の娘が残した手紙。お前のことも、月の呼吸のことも、透き通る世界のことも――全部、そこに書いてあった」
無一郎は一歩踏み出す。
「それに……お前、呼吸が乱れてるね。自分の娘に、何か爪痕を残されたんじゃない?」
その言葉に、黒死牟の顔がわずかに歪んだ。感情が、ほんの一瞬、侍の仮面を突き破る。
「……黙れ」
低く唸るように言い放ち、黒死牟は刀を抜いた。
「月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮」
空間が軋む。
月の斬撃が、闇を裂いて奔る。
だが、その一閃は無一郎には届かなかった。
霞のように、彼はすでにそこにはいなかった。
「月の呼吸、確かに広範囲で厄介だけど……」
無一郎は言う。
「今のお前の剣閃は、ほんの少しだけ鈍い。“紙一重では避けられない”って聞いてたけど――今のは避けられるよ」
無一郎の言葉は、冷静でありながら、確実に黒死牟の心を抉っていた。
彼の瞳は、黒死牟の内側の“揺らぎ”を見抜いていた。
「……貴様……」
黒死牟の声が低く唸る。
「私の呼吸に、私の剣に、口を挟むな。貴様ごときが、私を測るなど――」
「測ってるんじゃない。見えてるだけだよ」
無一郎は、霞のように静かに構え直す。
その姿は、風に溶けるように儚く、それでいて揺るぎなかった。
「感情も、血縁も、俺には関係ない。ただ、倒す。それだけだ」
その瞬間、黒死牟の怒気が爆発した。
月の呼吸が、空間を裂くように放たれる。
だが、無一郎はそれを見切っていた。
彼の瞳には、透き通る世界が――確かに、見え始めていた。
これで、第一部は完!!
第二部は既に考えてあります。
主人公を大正時代にぶち込みます。再転生。
少し休むかもしれませんが、更新は続きます。
この一週間はとても楽しいものでした。
これからもよろしくお願いします。