継国の娘   作:毎日読書

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まだだ! まだ終わらんよ!



大正時代
再転生


 何か気がついたら、捨てられていた。

 一面は菜の花でいっぱいだった。春だなぁ。

 

 どうやら、また転生したらしい。

 ついさっきまで黒死牟と死闘を繰り広げていた僕にとって、この落差はあまりにも激しかった。

 

 前世は赤子の頃から意識があったが、今世は前世と違って既にある程度成長していた。

 おそらく、五から六歳くらいの女の子だろう。

 

 「これからどうしよう」とか、「この世界はどこだ」とか、気になることは山ほどあった。

 

 しかし、目の前に山があるのだ!!

 

 行くしかない!野生の血が騒ぐぜ!!

 

 僕は、転生したばかりで混乱していたうえに、幼子であることもあり、感情の制御がうまくできなかった。

 

 ***

 

 前世、GORIRAと化していた頃の経験で、山暮らしは慣れていた。

 そんなこんなで一年ほど山で生活していたある日──

 

 「猪突猛進!!猪突猛進!!」

 

 と叫びながら突進してくる、イノシシ頭の子供と出会った。

 

 「まじかー」

 

 それしか言葉が出なかった。

 

 再転生先、まさかの”鬼滅の刃”確定!

 二回も同じ世界に転生することってある!?

 

 僕は叫びたい気持ちでいっぱいだった。

 そんな僕の困惑をよそに、イノシシは笑いながら叫んだ。

 

 「アハハハハ!!お前、強いな!勝負だ!!」

 

 と。

 

 伊之助との闘いは白熱した。

 この一年間、山で体を鍛えてはいたが、今世の僕は元捨て子。栄養をしっかりとれておらず、体は細かった。この一年栄養をしっかりとっていたとしても、限界がある。

 

 何とか引き分けに持ち込めたが、勝てた理由は伊之助が全集中の呼吸を知らなかったからだ。もし、伊之助が呼吸を身に着けていたら、今の僕では勝負にならなかっただろう。

 

 闘いの後、伊之助は

 

 「俺の名は嘴平伊之助だ。お前は強いから、俺の子分にしてやる!」

 

 と言った。

 

 正直、僕は疲れていた。

 平和な現代社会で生まれ育った僕が、戦国時代を生きることは並大抵のことではなかった。しかも、後に繋いだ、やっと終わったと思ったら、もう一度転生した。本当に勘弁してくれ、と思った。

 

 だから、僕は伊之助の明るさが眩しく見えた。

 

 今世の僕にはやることがなかった。転生者としての知識を活かしてやるべきことは前世のぼくがやったし、今世の僕には家族もいない。

 

 だからこそ、今世は伊之助と生きてみようと思った。彼を親分と呼び、共に過ごす時間はきっと楽しそうとも思った。

 

 「分かったよ、親分。僕の名前は…」

 

 ここで、僕は言葉が詰まった。今世の僕には名前がなかったからだ。そこで、僕が転生を自覚したときに着ていた服の柄が藤で、一面に広がっていたのが菜の花だったことを思い出し、

 

 「藤宮 菜葉」

 

 そう名乗ることにした。

 

 ***

 

 山での暮らしは、思った以上に快適だった。

 

 朝は鳥の声で目覚め、昼は木漏れ日の下で鍛錬し、夜は焚き火の前で獣の肉を焼く。文明の利器はないが、自由と静けさがあった。伊之助はというと、木の上で寝たり、川で魚を素手で捕まえたり、まるで山そのものと一体化しているようだった。

 

 僕はというと、前世の記憶を頼りに、呼吸の再習得に取りかかった。

 

 最初は体がついてこなかった。幼児の肉体では肺活量も筋力も足りない。だが、毎日少しずつ鍛え、「全集中・常中」への道を歩んだ。

 

 数年が経ち、体が成長し、ようやく常中を維持できるようになった頃、僕の動きは一変した。木刀を振るえば空気が震え、跳ねれば地面が軋む。伊之助との力関係は、明らかに逆転した。

 

 それが気に食わなかったらしい。

 

 「親分が子分に負けるなんて、ありえねぇ!!」

 

 伊之助は叫び、地面を転げ回った。だが、彼はただの猪ではない。悔しさをバネに、僕が使う呼吸に興味を持ち始めた。

 

 「そのスーハースーハーってやつ、教えろ!!」

 

 最初はまだ無理だ、まだ早いと思った。呼吸は繊細だ。感覚と集中力が要る。だが、伊之助は驚くほど理解が早かった。肺の使い方、重心の置き方、気の流れ──すべてを感覚で掴んでいった。

 

 「なるほど! こうやってスーハーして、ドカーンってやるんだな!!」

 

 いや、ちょっと違うけど、まあ合ってる。

 彼は型にはまらない。だが、型を壊しても、芯を掴む力がある。

 伊之助は僕が教えた呼吸を、彼なりの「猪突猛進」に変えていった。

 

 そして、ある日。

 

「見ろよ! 俺の呼吸、獣の呼吸だ!!」

 

 ……いや、それただの頭突きじゃないか?

 

 でも、空気が震えていた。確かに、彼は呼吸を掴み始めていた。

 僕たちは、山の中で木刀を交えながら、互いに高め合っていった。

 親分と子分。だけど、どこか兄弟のようで、ライバルのようでもあった。

 そして、僕は思った。

 

 この世界で、もう一度生きる意味があるとしたら──それは、誰かと共に、生きていくことなのかもしれない。

 




主人公が女性としての人生を歩む(二回目)。
主人公、今生で恋愛パートに入れるか…?
でも、原作カップルは壊したくない。相手は誰がよいのだろうか。
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