ちょっと長いです。7995文字!
大変だったけど、楽しかった。
原作が変わっていきます。
かまぼこ隊の鍛錬が終わり、ついに刀が届いた。
始めて見る鋼鐵塚さんはすごかった。
「殺してやるー!!」と叫びながら、炭治郎を追い回す三十七歳──あの迫力はなかなか強烈で、思わずその身体能力に感心してしまった。
そして、刀を石でガチーン、ガチーンと叩いて刃毀れさせ「よし!」と満足げな伊之助。
それを見て、「ぶっ殺してやるこの糞餓鬼!!」と怒る鉄穴森さんにびびる伊之助。
あまりにも怖かったのか、謝る炭治郎の服を掴み、背中に隠れる伊之助。
色々な伊之助が見られて、僕は大満足だった。
ところが──僕がちょっと遠出の任務に出ている間に、かまぼこ隊は蝶屋敷を出発してしまっていた。
戻ってみると誰もいなくて、「置いて行かれた…」とショックを受ける僕。
なほちゃん、きよちゃん、すみちゃんの三人が炭治郎からの伝言を預かっているらしく、聞いてみると──なんと、炎柱から「一緒に任務をやってみないか」と誘われたらしい。
原作では、炎柱にヒノカミ神楽について聞きたくて炭治郎の方から接触していたはず。
だから、もしかしたら無限列車にはかまぼこ隊は関わらないかも…とか思っていたのに。
「なんでそうなった!?」と不思議に思う僕。だって、炎柱とかまぼこ隊には接点がなかったはず。
聞けば、酔っ払いの父親から炎柱が日の呼吸について聞き出せたらしく、その話を炭治郎にしたかったらしい。
どうやら、前世の僕が残した手紙には様々な記述があったものの、内容に確証が持てず──炎柱は歴代炎柱の手記を探して確認しようとしたらしい。
ところが、その手記はボロボロでまともに読める状態ではなかった。
そこで、炎柱は父親に直接問いただすことにした。
だが、父親は酔っていて話にならず、ついには殴り合いの喧嘩に発展。
その末にようやく、断片的ながら「日の呼吸」についての情報を聞き出すことができたらしい。
だったら、なんで任務のついでにその話をしようと思うんだよ!!
任務がないときに、落ち着いて話せばいいじゃん!
そうツッコミたくなる僕であったが、こうなるとまずい。
まじで乗り遅れた!!
いくらかまぼこ隊の三人が鍛錬で強くなったとはいえ、上弦の参には敵わない。
僕との鍛錬で原作より強くなったことで、もし無謀に挑んで、三人のうち誰か一人でも死んでしまったら──この世界がどうなるかわからない。
まぁ、僕がこの世界にいる時点で、すでに原作からは逸れてしまっているのだけれど。
とにかく、間に合うかはわからないけど──無限列車の場所を聞いて、僕は蝶屋敷から走り出した。
***
主人公ダッシュ中
主人公「間に合えぇぇえ!」
このときの無限列車:煉獄「うまい!うまい!うまい!」
主人公、駅に到着
このときの無限列車:全員ぐっすりお休み中
主人公、線路の上を爆走
このときの無限列車:煉獄「よもや、よもやだ。柱として不甲斐なし!!穴があったら入りたい!!」
横転している無限列車!
主人公、「見えた…あれか!!」
結論
ぎりぎり間に合っちゃう主人公は人外入り!!
これで、君はもう縁壱だ!!
(※実際には、主人公は並の柱を超えているだけで、まだ縁壱には程遠い。それでも十分やばいが)
***
side : 炭治郎
藤宮さんが任務で蝶屋敷を離れていた、ちょうどその頃だった。
炎柱・煉獄さんから任務の誘いが届いたのは。
手紙の件で話があるとのことだった。
藤宮さんには申し訳ないと思いつつ、伝言を残して蝶屋敷を後にした。
炎柱の煉獄さんはとても豪快で、それでいて面倒見のいい人だった。
俺たちが、煉獄さんを無限列車で見つけたとき、彼は「うまい!うまい!うまい!」と弁当を何個も頬張っていた。
煉獄さんが弁当を食べ終わると、彼は俺に話しかけてきた。
「柱合裁判以来だな、竈門少年!」
彼は呼吸の歴史を語ってくれた後、手紙のことについて話した。
「父に確認したところ、日の呼吸――始まりの呼吸は実在したようだ。そして、その剣士が身につけていた耳飾りは、君のものとよく似ている!」
煉獄さんは俺の耳飾りを見ながら言った。
「それと、手紙を書いた“ひかり”という人物は、始まりの呼吸の剣士の子供ではないかと記されていた。どうやら、かつての炎柱は始まりの呼吸の剣士と深い交流があったようだ!」
その後、煉獄さんは
「俺の継子になるといい。面倒をみてやろう!」
と言ってくれた。
そのとき、列車が動き出した。
伊之助が窓から身を乗り出しながら叫んだ。
「うおおお!!すげぇすげぇ速ぇええ!!」
煉獄さんはその様子を見ながら、任務の概要を説明してくれた。
この列車では、短期間のうちに四十名以上の人が行方不明となっていて、送り込んだ隊士も全員消息を絶ったらしい。
そして、車掌さんに切符を切られてからは、怒涛の展開だった。
夢を見させられる。
自害して、起きたら下弦の壱がいた。
頸を斬ったと思ったら、鬼は列車と融合していた。
最後には、列車の横転だ。
それでも、俺たちは無傷で乗り越えることができた。
なんとかなったと安堵しているところに、煉獄さんが来て
「皆無事だ!怪我人は大勢だが、命に別状はない」
と言った。その言葉に胸を撫で下ろした瞬間――ドオンという衝撃音とともに、鬼が現れた。
現れた鬼は――上弦の参だった。
突如として姿を現したその鬼に、俺たちは一瞬、息を呑んだ。
だが、驚きはしたものの、完全に動揺はしなかった。
その性格も、血鬼術も、俺は手紙で知っていたからだ。
ひかりさんが残してくれた情報が、今まさに俺の心を支えていた。
だからこそ、俺は冷静に構えることができた。
煉獄さんも、俺の隣で微動だにせず、鬼の気配を見据えていた。
その眼差しは、炎のように揺るぎなく、まっすぐだった。
上弦の参・猗窩座は、俺たちを見て笑った。
「お前たち二人、強いな。片方は柱で、もう片方はその継子か。とても鍛えられている」
そして、猗窩座はとんでもない提案をしてきた。
「お前たちも鬼にならないか?」
そう言ってきたのだ。
「「ならない」」
煉獄さんと俺は、迷いなくそう答えた。
「俺は猗窩座。お前たちの名は?」
「俺は炎柱、煉獄杏寿郎」
「俺は竈門炭治郎。それと、俺は継子じゃない」
猗窩座は頷きながら言った。
「そうか、杏寿郎に炭次郎。お前たちの闘気は練り上げられている。特に、杏寿郎は至高の領域に近い。だが、至高の領域に至れていない理由がある」
「それは、お前たちが人間だからだ。老いるからだ。死ぬからだ」
「だからこそ、鬼になろう。鬼になれば、永遠に鍛錬することができるぞ」
その言葉に煉獄さんは静かに、しかし力強く答えた。
「老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ。人は終わりがあるからこそ、その生はたまらなくいとおしく尊いのだ」
「それに、強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない」
「俺たち鬼殺隊は如何なる理由があろうとも鬼にはならない」
猗窩座は「そうか」とだけ返し、次の瞬間――
「術式展開 破壊殺・羅針」
「鬼にならないなら殺す」
空気が裂けた。
猗窩座の拳が、音を置き去りにして迫ってくる。
「破壊殺・乱式!」
打撃が空間を歪ませながら飛んできた。
俺は前に出て「ヒノカミ神楽 烈日紅鏡」で迎え撃ち、打撃を相殺した。
その隙に、煉獄さんが前に出る。
「炎の呼吸 伍ノ型 炎虎!!」
炎が咆哮のように猗窩座を包み込む。
だが――傷は、瞬く間に再生される。
「やはり、再生速度が異常だ……!」
俺は煉獄さんと共闘し、二人で猗窩座に対応する。
藤宮さんとの訓練で、俺は連携の経験を積んでいた。
また、煉獄さんの力量はすさまじく、俺が危ない場面では即座に助けてくれる。
加えて、ひかりさんの手紙に記されていた血鬼術の情報が、今まさに生きていた。
すべてが、俺の動きを支えてくれる。
だが、俺の攻撃は、猗窩座には通用しない。
自然と、俺は防御に回り、煉獄さんが攻撃を担う形になった。
「竈門少年!右から来るぞ!」
煉獄さんの声が、戦場を導く。
俺では目に追えない攻撃は、煉獄さんがすべて見切っている。
猗窩座は語りながら、拳を振るう。
「今まで鬼殺隊の者で俺の誘いに乗るものはいなかった。なぜだろうな?」
「俺には理解できない。素晴らしき才能をもつ者が衰えていく。俺はつらい」
「耐えられないんだ。若く強いまま死んでくれ、杏寿郎!炭治郎!」
「破壊殺・空式!」
打撃が唸りを上げて飛んでくる。
それを俺が「ヒノカミ神楽 烈日紅鏡」で防ぎ、煉獄さんが「炎の呼吸 参ノ型 気炎万象」が応戦する。
そして――
「獣の呼吸 参ノ牙 喰い裂き!」
伊之助が背後から奇襲を仕掛けた。
だが、猗窩座はそれを察知し、軽く身を翻してかわす。
「惜しいな、猪頭」
猗窩座の拳が伊之助の腹をかすめる。
だが、煉獄さんがすかさず「炎の呼吸 壱ノ型 不知火」で割って入り、伊之助を守る。
「助かったぜ、ギョロギョロ目ん玉!」
「油断するな、伊之助!それと、彼は煉獄さんだ!」
俺と伊之助が防御に回り、煉獄さんが攻撃を担う。
闘いは拮抗していた。夜明けまであと少し。
生き残るだけなら、何とかなる。
だけど、猗窩座を討伐するには――あと一歩、何かが足りなかった。
そんなことを考えていたその瞬間――
「パキンッ!!」
俺の日輪刀が、猗窩座の拳で折られた。
まさに絶体絶命。もうだめだと思ったそのとき――
「間に合った!!」
藤宮さんが、猗窩座の攻撃を防いでくれた。
***
side : オリ主
横転した列車を見つけたとき、遠目から状況を確認した。
炎柱――煉獄杏寿郎は生きていた。
致命傷を負っている様子もなく、炭治郎と伊之助と共に、三人で上弦の参・猗窩座に立ち向かっていた。
「あと少しだ――!」
そう思い、僕は駆けた。
その瞬間、炭治郎の刀が折れるのが見えた。
「まずい!」
心が叫ぶよりも早く、身体が動いた。
そして――何とか「間に合った!!」
猗窩座の拳が炭治郎に迫る。
僕はその一撃を受け止めた。
猗窩座は、僕を見て言った。
「その強さ……お前も柱か」
僕は静かに答えた。
「僕は柱じゃないよ」
炭治郎が息を整えながら、僕に礼を述べた。
「藤宮さん、ありがとうございます!」
その言葉に頷きながら、僕は炭治郎と伊之助に向かって言った。
「炭治郎と親分は少し下がって。ここは僕が引き受ける」
この闘いが、運命を変えると信じて――僕は前に出た。
炭治郎と伊之助が一歩下がり、戦線を譲った。
僕は煉獄さんの隣に立つ。炎柱――煉獄杏寿郎。
彼とは初対面だった。だが、その背に宿る気迫は、言葉よりも雄弁だった。
煉獄さんがちらりと俺を見て、目を細める。
その視線に、敵意も警戒もない。ただ、戦士としての直感があった。
「君は……鬼殺隊の者か?」
「はい。藤宮菜葉です。初めまして、炎柱殿」
「うむ、煉獄杏寿郎だ。藤宮少女、君の動き――只者ではないな」
「僕も、煉獄さんの戦いぶりを見て、そう思いました。今は、肩書きよりも連携が大事です。共に、猗窩座を討ちましょう」
煉獄さんは力強く頷いた。
「よし、ならば俺の背中は任せた!」
「了解です。援護は任せてください」
言葉は短く、だが確かに通じ合った。
初対面でも、戦場では信頼がすべてだ。
僕たちは並び立ち、刀を構える。
共闘が、始まった。
猗窩座の拳が再び唸りを上げる。
煉獄さんが「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり」で迎え撃ち、僕はその隙を縫って踏み込む。
「光の呼吸 壱ノ型 光閃」
赫刀が軌跡を描き、猗窩座の肩を裂いた。
それを見て、僕は安堵していた。
――光の呼吸でも、戦える。
一人だったら、無理だった。
でも、煉獄さんと二人でなら、討伐できる。
僕が“日の呼吸”を使わずに済む。
藤宮菜葉が柱レベルの強者であると知られることは、もう避けられないだろう。
それは構わない。けれど――“日の呼吸”を使える者が炭治郎以外にもいる。
その事実だけは、できる限り隠しておきたい。
だから、僕の刀は赫刀だ。
赫刀の方が強いということもあるが、それ以上に色を誤魔化すためでもある。
今世の僕は、痣による身体能力の向上なしでも赫刀を出せるように鍛えた。
痣を出せば、身体能力の面では前世を上回るだろう。
だが、まだその時ではない。
まだ、痣は出さない。
煉獄さんが叫ぶ。
「藤宮少女、左から来るぞ!」
「了解!」
僕は赫刀を振るい、猗窩座の拳を受け止める。
その衝撃に腕が痺れる。だが、折れない。
炎と光が交差する。
煉獄さんの炎が道を拓き、俺の光がその隙を突く。
猗窩座が一瞬、眉をひそめた。
その表情に、僕は確信した。
――この戦い、勝てる。
***
side : 炭治郎
煉獄さんと藤宮さんが並び立ち、猗窩座と激しくぶつかり合う。
炎と光が交差するたび、空気が震え、地面が軋む。
肩を斬り裂かれた猗窩座は、藤宮さんを見て言った。
「お前は菜葉というのか……お前も鬼にならないか?」
藤宮さんは、迷いなく答えた。
「ならないよ」
その声は静かだったけれど、確かに強かった。
猗窩座は一瞬、口元を歪めて笑った。
「光と闘うのは、初めてだ」
そう言いながら、猗窩座は拳を重ねていく。
破壊殺・乱式――次々と繰り出される打撃が、炎と光に襲いかかる。
煉獄さんが炎の呼吸で応戦し、藤宮さんが光の呼吸で切り返す。
俺は少し後ろで、息を整えながら二人の動きを見ていた。
最初は、見えていた。
煉獄さんの踏み込み、藤宮さんの刃の軌道、猗窩座の拳の流れ――まだ、目で追えていた。
でも、次第に――見えなくなっていった。
煉獄さんの炎が唸り、藤宮さんの赫刀が閃き、猗窩座の拳が空間を裂く。
そのすべてが、俺の目では捉えきれない速さで交錯していた。
これが――柱と上弦の闘い。
人間の限界を超えた者同士の、命を燃やす戦い。
俺はただ、息を呑んで見守るしかなかった。
俺も、さっきまであの戦いに加わっていた。
“上弦と闘えている”――そう思っていた。
でも、違った。
今、目の前で繰り広げられている戦いは、俺の目ではもう追えない。
一瞬で間合いが変わり、技が交錯し、気配が揺れる。
俺が見ているのは、柱と上弦の闘い。
その領域に、俺はまだ届いていない。
思い返せば、俺が猗窩座と対峙していたとき――
煉獄さんが、何度も俺を守ってくれていた。
見えない拳を見切り、俺の隙を埋め、命を繋いでくれていた。
俺は、守られていたんだ。
“闘えていた”んじゃない。
“闘わせてもらっていた”んだ。
藤宮さんも、煉獄さんも、迷いなく前に出る。
その背中は、俺が目指す場所だ。
でも、今の俺にはまだ遠い。
猗窩座は笑いながら、拳を振るう。
「いいぞ……もっとだ。もっと、俺を楽しませろ!」
その狂気に満ちた声が、戦場に響く。
でも、藤宮さんも煉獄さんも、怯まない。
むしろ、二人の気配はさらに研ぎ澄まされていく。
俺は拳を握りしめた。
悔しさが、胸を締めつける。
でも、それ以上に――尊敬と、感謝が溢れていた。
俺は、もっと強くならなきゃいけない。
守られるだけじゃなく、誰かを守れるように。
あの炎のように。
あの光のように。
俺は、絶対に――追いつく。
***
side : オリ主
煉獄さんと僕は、猗窩座の猛攻を受け止めながら、少しずつ反撃の糸口を見出していた。
だが、その代償はあまりにも大きかった。
猗窩座の拳は容赦なく、空間を裂くように襲いかかってくる。
「破壊殺・砕式 万葉閃柳!」
煉獄さんが「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」で迎え撃ち、僕は「光の呼吸 参ノ型 陽環」で軌道を逸らす。
煉獄さんは全身が傷だらけだった。肉が裂け、血が噴き出す。
特に、左目と胸の傷は重傷だった。
僕も、腹部に鈍い痛みを感じていた。
さっきの一撃――避けきれなかった。
赫刀を握る右手が震えている。
指先の感覚が、少しずつ遠のいていく。
――そのとき、猗窩座は今までに感じていた違和感に気がついた。
猗窩座が、僕の赫刀で受けた傷に手を当てる。
再生が、遅い。
いつものように瞬時に肉が盛り上がらない。
「……ほう」
猗窩座が低く呟いた。
その瞳が、僕の刀に向けられる。
「その刀……普通じゃないな。赫い刀か。なるほど……」
彼の声に、わずかな苛立ちが混じる。
そして、僕を見据えて言った。
「光の呼吸に赫刀……面白い。だが、厄介だ」
僕は何も答えなかった。
赫刀のことも、光の呼吸のことも、できるだけ知られたくないからだ。
夜が、わずかに色を変え始めていた。
空の端が、ほんのりと青みを帯びる。
朝が近い――それは、鬼の時間の終わりの兆し。
猗窩座が、拳を握りしめた。
その気配が、これまでとは違う。
重く、鋭く、そして――決定的だった。
「……朝が来るか。ならば、これで最後だ」
猗窩座の闘気が爆発する。
地面が軋み、空気が震える。
「破壊殺・滅式!!」
拳が、空間ごと砕くように放たれる。
それは、破壊の極致。
命を断つためだけに研ぎ澄まされた、鬼の奥義。
僕は、赫刀を握り直した。
煉獄さんが、隣で静かに息を吸う。
その胸元には、深く刻まれた傷。
呼吸のたびに血が滲む。
「藤宮少女……行くぞ!」
「はい!」
僕は踏み込み、赫刀を振り上げる。
光の呼吸――その最終の型。
「光の呼吸 終ノ型 暁星・黎明!!」
赫刀が、夜の闇を裂くように閃く。
軌跡は星のように瞬き、黎明の光が猗窩座の拳を迎え撃つ。
同時に、煉獄さんが叫ぶ。
「炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄!!」
炎が咆哮する。
煉獄さんの刃が、炎そのものとなって猗窩座に突き刺さる。
その一撃は、正に命を燃やす覚悟の炎。
光と炎が交差する。
光が猗窩座の胸を貫き、炎がその頸を焼き尽くす。
猗窩座の拳が崩れ、闘気が揺らぐ。
猗窩座の拳が崩れ落ち、彼の瞳がわずかに揺れた。
「まだだ……まだ戦え……」
その声は、執念か、悲願か。
けれど、もう拳は振るえない。
再生の力も、闘気も、燃え尽きていた。
そして――煉獄さんの炎が、最後の軌跡を描いた。
猗窩座の頸は、斬られた。
静寂が訪れる。
僕は刀を静かに下ろし、煉獄さんの炎は風に溶けていく。
煉獄さんは膝をつき、肩で荒く息をしていた。彼の呼吸は浅く、苦しげだった。
僕も、膝をついた。
腹部の痛みが、じわじわと意識を蝕んでいく。
赫刀を握る右手は、もう力が入らない。
指先の感覚はほとんどなく、腕全体が痺れていた。
赫刀の先から、血がぽたりと落ちる。
それは猗窩座のものか、僕自身のものか――もう判別できなかった。
視界が滲む。
それは涙か、血のせいか、疲労か――わからなかった。
朝日が昇ってきた。
誰もが、勝ったと思った。
猗窩座の頸は斬られ、闘気は消えた。
それで終わったはずだった。
だけど――違った。
猗窩座の肉体は、崩壊を止めていた。
頸を失ったはずの鬼が、なおも立ち上がろうとしていた。
朝の光が戦場を照らす。
その光から、猗窩座は逃げようとしていた。
僕も、煉獄さんも、動けなかった。
傷が深すぎる。
身体が、もう言うことを聞かない。
そのとき――炭治郎が叫んだ。
「逃げるな……逃げるな卑怯者!!逃げるなァ!!!」
声が、空気を裂いた。
炭治郎が駆け、猗窩座の再生しかけた顔面に拳を叩き込む。
その一撃に、力はなかった。
けれど――不思議と、猗窩座の動きが止まった。
炭治郎の拳ではなく、何か別のものを見ていた。
その瞳が、遠くを捉えるように揺れる。
「……恋雪さん……?」
猗窩座の脳裏に、あの優しい声が響いていた。
「狛治さん、もうやめて」
その言葉に、猗窩座は動揺した。
拳を振るうことも、逃げることもできなくなった。
彼の肉体が、朝の光に包まれていく。
猗窩座の瞳が、空を仰いでいた。
その視線の先に、誰かがいた。
――恋雪さん。
「一緒に、向こうに行きましょう」
彼は、何かを思い出していた。
人だった頃のこと。
誰かを守りたかったこと。
誰かに、手を引かれていたこと。
炎のような光が、彼を焼く。
赫く、静かに、確かに。
猗窩座は、何かを見つめながら――そのまま、逝った。
炭治郎は拳を握ったまま、ただ立ち尽くしていた。
僕は、動けないまま、その背中を見ていた。
煉獄さんが、かすかに呟いた。
「……よくやったな、竈門少年」
朝の光が、すべてを照らしていた。
戦いは、終わった。
そして、一人の修羅が――ようやく、解放された。
ちなみに、主人公(前世)の手紙に上弦の鬼たちの使う血鬼術などの情報はあれど、どこどこを襲撃する(無限列車に上弦の参が現れるなど)とかは書いていないです。未来はどうなるのかはオリ主がいる時点でわからないので。そのため、柱の増援はなかったという設定です。
それと、きりがいいので、ちょっと休みに入ります。
無限城までの流れは考えてあるので、ここでエタることはないです。