ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「プールかぁ……髪がゴワゴワになるから嫌なんだよね~……」
「わかるなぁ。あと、終わった後が死ぬほど眠いから何もかもが面倒になる」
「……あのさぁ、人の両隣でとんでもないもの見せびらかしながら着替えるの止めてもらえる? 会話の内容、耳に入ってこないんだけど?」
水泳の授業が始まる少し前、あたしたちは更衣室で水着に着替えていた。
毎年思うのだが、もう少し水着に伸縮性があると色んな意味で助かるのだがと思いながらサイズが合っているようで合っていないスクール水着に着替えれば、あたしと玲香の間に挟まっている優希が若干の恨みを込めながらそんなことを言ってくる。
「なんだよそのサイズは!? 玲香もひよりもヤバ過ぎるでしょ!? 両隣でそんなもんがぶるんぶるん揺らされるこっちの身にもなってみろ! 張り倒すぞ!?」
「別に揺らしてないって。普通にしてるよ、普通に」
「普通じゃないサイズの胸を持ってる奴らが何を言ってんだ! クール系巨乳とロリ巨乳巨尻とかいう属性過多起こしてるくせに! 嫌味か、貴様っ!?」
「ちょっと! 巨尻は余計でしょ!?」
「落ち着きなって。胸が大きくったってあんまいいことないよ? こういうプールの時とかは特に男子たちからジロジロ見られるしさ」
「メリットデメリットの話じゃね~んだよ~! お腹が空いてる時に目の前で美味そうにご飯食べられたら頭にくるでしょ? あれと似た感覚なんだよ~! どうせ私は貧乳系ギャグキャラヒロインだってばよ~! 持たざる者の嘆きがお前ら持つ者にはわからねえんだよ~! お~いおいおい!」
「あ~……どんまい!」
「そんな嘆かなくったっていいじゃん。優希だって脚が細くて綺麗だよ? いい感じのプロポーションしてるじゃん」
「うぅぅ……! 私は今、漢字の凹のへこんでる部分に猛烈なシンパシーを感じている。左右は盛り上がってるのに一人だけ平坦だと明記されたあの部分の苦しみがひしひしと伝わってくる……!!」
そうやって嘆き悲しむ優希を見ていたら、なんだか可哀想に思えてきた。
そうこうしている間にスクール水着に着替えたあたしたちは、他の女子たちと一緒に更衣室を出てプールサイドへ向かっていく。
「うっわ、あっつぅ……! まあ、この炎天下で水浴びできるって考えたらプールも悪くないか……」
あたしたちの中で一番前を歩いていた玲香が照り付ける太陽を見上げながら怠そうに呟いた。
確かにこの暑い夏の日中を走ったりして過ごすことになったらそれは最悪だろうなと考える中、ちらりと男子の方を見た優希が言う。
「おうおう。お二人さん、自分たちが見られてるのわかってます? 男子たちの注目の的ですぜ?」
「わかってるよ。そういう視線は慣れっこだから、すぐに気付けるし」
あたしもうんざりとした様子でそう返事する玲香と同じ気持ちだ。
中学の頃から、
あんまり気持ちのいいものではないからできるだけ避けようとはしているが、こういう男女がほぼ同じ空間にいる場合は避けることはほぼ不可能なため、諦めるしかない。
ありがたいことに、かわいかったり胸が大きな女子はあたしたちだけじゃないわけで……男子たちの視線は結構ばらけていた。
しかしまあ、そんな中でも自分たちに注がれる邪な視線というものは案外簡単にわかってしまうものなのである。
「あの辺の集団かなぁ。ったく、スケベな連中めが……!」
「賭けてもいいけど、あいつらの目には私なんか映ってないよ。ひよりと玲香のおっぱいだけ見てる」
こちらに熱い視線を向けつつ、興奮気味に何かを話し合う男子たちを見つけた玲香と優希が話し合う。
あたしも概ね同意だったわけだが、その男子たちの前に雄介くんが飛び出してきたではないか。
雄介くんは先生を呼び止め、何かを話している。
ちょうど二人の姿が男子たちの壁になっていて、彼らはあたしたちのことが見えなくなったようだ。
(もしかして、あたしのことを守ってくれたのかな……?)
偶然にしてはタイミングが良過ぎる雄介くんの行動に、もしかしたらの可能性に思い至ったあたしが小さく笑みを浮かべる。
先生との話を終え、ちらりとこちらを見た彼と目を合わせたあたしは、もしかしなくとも彼女の水着姿を見たくて視線を向けてきたであろう雄介くんに向け、口パクでこう言ってあげた。
「えっち……♥」
「……!」
あたしが何を言わんとしていたのかを理解したのだろう。雄介くんが驚いた表情を浮かべながら男子たちの列の中に引っ込む。
そのままシャワーを浴びに行った彼をニマニマしながら見送ったあたしであったが……不意に玲香がこんなことを言ってきた。