ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「時にひより。私は世の中の色々なことをポジティブに考えるべきだと思うわけよ。それについてどう思う?」
「え……? い、いいんじゃない? ネガティブよりもポジティブの方がさ」
てっきり今の雄介くんとのやり取りを見られていて、それをからかわれると思っていたあたしは、玲香の変な発言に困惑しながらそう答えた。
あたしの答えに満足気に笑った玲香は、ふんふんと頷いた後でこう続ける。
「男子どもが私たちのことをジロジロ見てくるのなら、それに負けないくらいに思いっきり見てやればいい。相手がしてるんだから、こっちだってオッケー! ……って話になるでしょ?」
「うん……? うん?」
言っていることは理解できるのだが、どういう意味なのか理解できない発言って大変だ。
普段は冷静というか、まともなはずの友達が妙なことを言い始めたことに困惑するあたしの前で、男子たちが浴びに行ったシャワーの出口を見つめていた玲香が言う。
「おぉ……! やっぱいい体してるね、尾上くん……!!」
「!?!?!?」
親友の気持ちの悪い発言に驚きながら、あたしもシャワーの出口を見る。
そこにはため息を吐きながら濡れた髪を掻き上げる雄介くんの姿があって、色気を感じさせるその姿にあたしも妙な恥ずかしさを感じてしまう。
「いいね、あの細マッチョ感。すらっとしてる上に腹筋も綺麗に割れてるし、ホンマええ体してますわ……!!」
「な、なんで関西弁?」
じゅるり、と涎を垂らしながらエセ関西弁でそう呟く玲香は、今まで見たことのないような怪しい様子で男子たちを見つめている。
シャワーの冷たさに喘ぐ彼らを準備運動しながら見つめつつ、玲香がぼそぼそと感想を述べていく。
「さっきから私たちを見てきた連中は……ちっ! 微妙だな。運動部なんだろうけどあんま真面目に鍛えてないな? もっと腹筋を割る努力をしろよ。その腹で女を落とせると思うな。筋肉を付けろ、筋肉を。胸筋もだらしねえな、鍛錬が足りてないって……おっほ! 遊佐くんもいい体してんねぇ! 尾上くんより背は低いけど、趣の違う良さがあるっていうか……尾上くんが私みたいな長身スタイル抜群美少女だとしたら、遊佐くんはひよりみたいなロリ巨乳美少女的な風情があるわ~……!!」
「れ、玲香? なんかさっきから変なキャラになってない? 大丈夫? 壊れた?」
「大丈夫、平常運転。それよりも優希、あんたも男子と巨乳への恨みを筋肉への興味に変えて見てみなって。なんかこう、いい気分になれるからさ」
どっちかっていうと壊れてくれていた方が良かった。そんな正直な感想は心の内に秘めておくことにしよう。
「お~お~、運動部の引き締まった体から文化部帰宅部連中のだらしない体まで、見てて面白いね~! 全体的に当たりハズレの差が大きいけど、楽しさという部分では満点かもな~!」
「あの、玲香さん? なんかすごく楽しそうだけど、そういうご趣味がおありで?」
「う~ん……微妙なとこ。なんかこう、事あるごとに男子たちに体の品評されるのって悔しいじゃん? だったら、こっちも似たようなことをしてやろうと思ってさ~……そういうことをしてたら割れてる腹筋とか引き締まった筋肉が好きになってた、みたいな?」
「に、肉を切らせて骨を断つ、みたいな武士的思考になっちゃってんじゃん……! いや、それにしては煩悩にまみれてるけどさ……!」
「いやいや、考えてみ? 胸のデカさに関しては普通の服でもわかるわけだし、こっちが支払う対価は体のラインがもろにバレるってことだけじゃん? 対して、男子側は腹筋も乳首も丸出しなんだよ? どっちも隠されてるこっち側からすれば、実質アドよ、アド!」
「ポジティブなのはいいけど、方向性を間違ってるような気しかしないんだよなぁ……」
あたしのそんな呟きに、若干引き気味になっていた優希もうんうんと頷く。
周囲からどう見られているかは気にしないでいる玲香は、準備運動を終えると共にニヤニヤとしながらあたしへとこう言ってきた。
「ひよりもさぁ、彼氏の半裸姿を目と記憶に焼き付けておきなって! 体育館部活らしい色白さとあの長身細マッチョ感! これぞバスケ部の肉体美って感じが炸裂してるじゃん!! 尾上くんのあの姿と今のあんたの水着姿、同等の価値があるって! ああ、やっば……! 涎垂れてきたわ……!! くぅ~っ! カメラがあったら間違いなく撮影してるのに~!」
「ちょっと! 人の彼氏をいやらしい目で見ないでよ!!」
また涎を垂らしながら欲望を全開にする玲香に対して、あたしが強めにツッコミを入れる。
雄介くんには、後で絶対に玲香の前で不用意に服を脱がないように言っておこうと思いながら、あたしたちもまた男子たちに続いてシャワーを浴びに向かうのであった。
ちなみにだけど、シャワーの水を水着の胸部分に溜めて胸部分を膨らませた優希が「私がクラス一の爆乳だ~!」と叫びながら飛び出していったが、満足そうに男子たちに見せびらかしているところを玲香のチョップで偽乳を叩き潰されてその三日天下は儚くも終わりを迎えた。哀れだった。