ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「ん? う、う~ん……まあ、そうだね」
「いやいや、正直になれって。今時、それを期待しない男子高校生なんて滅多にいねえって! あのサイズなら尚更だろ!? お前も七瀬さんの水着姿、見たいんじゃねえの!?」
「……見たい」
正直に申し上げれば、遊佐くんの言う通りだ。
スクール水着を着ている姿もかわいいが、遊ぶ用の水着を纏ったひよりさんの姿を見てみたいという欲望は僕にだって普通にある。
そういう欲求を素直に口にしてみれば、遊佐くんは嬉しそうに笑いながら僕の肩をバンバンと叩いてきた。
剥き出しの肌を叩かれてちょっと痛かったが、なんだか興奮気味な彼は楽しそうにしながらある程度ぼかし、こう聞いてくる。
「よく言った! それでこそ男だ! ……それで、どういうのが好みだ? っていうか、彼女がいたらどんな水着を着てほしい?」
こういう言い方をしたのは、仲間たちが泳ぎ終わるのを待つ男子たちのグループの輪の中に戻ったからなのだろう。
僕がひよりさんと付き合っていることを隠しながらのその質問に、先ほどまで女子たちのスク水姿を堪能していた男子たちが反応する。
「おいおい! そんな楽しそうな話をするなら、俺たちも混ぜろよ!」
「っていうか、遊佐はわかるけど尾上もこういう馬鹿話をするんだな。なんか意外だわ」
「よっしゃ! とりあえず言い出しっぺの法則に従って、まずは遊佐が性癖暴露な!」
「俺ぇ? 俺はちょっと水着とは違うかもしんねえけど、男用の海パンみたいなのを履いてもらって、上半身はぶかっとしたラッシュガード羽織ってほしいんだよな~……! 彼シャツ、プールサイドバージョンみたいな感じでさ」
「あ~……わかるな、その気持ち」
以前、ひよりさんに彼シャツをしてもらったことがある僕としては、ぶかぶかな服を着ている女の子をかわいいと思う遊佐くんの気持ちが実に理解できた。
彼の語るシチュエーションは実際は彼シャツではないのだろうが、そういうゆったりとした服装の女の子が好みなのかな~と遊佐くんの性癖に理解を示す僕であったが、他の男子たちは違うようだ。
「おまっ! それはないだろ~? それだったらプールの意味ねえじゃん!」
「水着なんだから、露出多めでなんぼだろ!? 今のお前の話だと、スク水以下の露出度じゃねえか!」
「は~っ!? スケベ猿どもが、一丁前なことを言いやがって! じゃあ、お前らはどんな水着を彼女に着てもらいたいんだよ!?」
性癖の話って不用意にしない方がいいんだな~、と僕は遊佐くんとクラスメイトの男子たちとの言い争いを見ながら強く思った。
これ、下手すると死人が出るぞ、という感じの勢いで話す彼らは、遊佐くんに促されるがままに自分に彼女がいたらという前提で水着について熱く語っていく。
「んなもんビキニに決まってんだろ! 揺れる胸! 見える谷間! 水着が流されるイベントが発生すればポロリもあるよ! 最高じゃねえか! 紐ビキニだったらなお良し! あの紐を引っ張って、ムフフな展開に――!」
「いや、あの紐って大体はダミーだからな? 引っ張っても解けないし、お前が考えてる展開にはそうそうならないと思うぞ?」
「えっ!? うそぉっ!?」
遊佐くんの口から知りたくなかったであろう事実を聞かされた男子が絶望の表情を浮かべる。
スク水のあれこれも含めて、自身の願望を粉々に砕かれた彼のことをちょっとだけ気の毒に思った。
「競泳水着。体のラインがはっきり出るような奴であれば何でもいい。あと、太腿が見たい」
「……なんかマニアックだな、お前。ちょっと怖いわ」
「普段滅多に見られない太腿は見たいに決まってんだろ。あと、露出が多いより体形がはっきりくっきり浮き出てる方がエロい」
遊佐くんの言う通り、なんか怖い人がいた。
静かに淡々と語っているのだが、秘めている熱量のすごさを隠し切れていないところがまた怖い。
さっきから彼は胸の大きさにも頓着していないし、変わった性癖をお持ちの方なんだろうなと思うことにした。
「マイクロビキニかスリングショットビキニかハイレグビキニがいい! 恥ずかしがる女の子を見たい!!」
「それはもう話の趣旨から離れてるし、お前の場合はそれを着て見せてくれる彼女を見つけることから始めような?」
「「「がはっっ!!」」」
完全に遊びに行く前提を無視した最後の男子の発言に対する遊佐くんの無慈悲な言葉が、楽しく性癖を開示していた男子たちの心を貫いた。
崩れ落ちる彼らをなんとも言えない表情で見つめていた僕であったが、息も絶え絶えな男子たちが僕へと言う。
「お、尾上……お前なら俺の気持ちをわかってくれるよな? やっぱ、女子の水着姿は露出してなんぼだよな……?」
「とりあえずお前も性癖開示しろ。俺たちもやったんだからさ」
「エロ水着、着てほしいよな? 彼女には……字余り、ぐふっ!」
「え? あ~……」
ここまで話を聞いておいて自分は何も言わないというのは流石に申し訳ないし、僕も一応は趣味を語っておくべきなんだろう。
少し呻いた後、色々考えた僕は……熟考の末の結論を彼らに語っていく。
「フリルの付いたビキニがいいかな……下もスカートっぽくなってるやつ」
「ほへ~。セクシーさとかわいさを両立してるタイプの水着が好みってことか」
「そうだよなぁ! やっぱビキニだよなぁ!? 露出多めがいいよなぁ!」
「あ~……多少は隠してもらいたいかな……? あんまりそういう姿を大勢の人に見せたくないっていうか、なんていうか……」
ひよりさんはかわいいし、あのスタイルだし……水着になったらそりゃあもう目を引くだろう。
嫉妬心の強さを理解している僕としては、胸の谷間やらお尻やらをある程度隠してくれるフリルがあると嬉しいな~という感じであり、それでもやっぱりかわいい姿を見たいな~というスケベ心を抑え切れないが故のセレクトだった。
「……なんかお前、割と独占欲強いよな。しっとりしてる」
「でもわかるぞ、その気持ち! 太腿や二の腕はまだ我慢できるが、それ以上に過激なところは自分だけに見せてほしいよな!」
「は? 太腿も二の腕も過激だろうが。訂正しろ」
「あ~! こういう話とかしてたらプールとか海に行きたくなってきたな~! 夏休み、女子たち誘ってみるか~?」
「ついて来てくれるかはわかんねえけどな。でも女の子の水着姿も見たいし、ちょっと計画立ててみるか……!!」
なんか好みの水着姿について語っていたら、遊びに行く計画を立てる流れになってしまった。
これはこれで良かったのか? と思いつつ、まあクラスの男子たちとの距離が縮まったのは間違いないとも思った僕は、苦笑を浮かべながら他のクラスメイトたちのタイム測定が終わるのを待ち続けるのであった。