ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
(尾上の奴、手を出すのが早過ぎなんだよ。おかげで七瀬がショックを受けた姿が見れなかったじゃん)
仁秀に捨てられた翌日には尾上が七瀬に急接近していたせいで、私が確認した時にはもうあいつは立ち直ってしまっていた。
流石は他校からも注目を集めていた元バスケプレイヤー。チャンスは見逃さないということなのだろう。
しかし、尾上のせいで私のお楽しみが潰されてしまったことは間違いない。
だったら七瀬が尾上に捨てられるまで待てばいいじゃないかという話ではあるが、それはそれで面倒だ。
なにせ、七瀬は私ほどではないが顔がいい。それに、ロリ巨乳という美味しい属性も持っている。
尾上が体目的で七瀬に接近したとしても……いや、体目的だった場合、傷心のロリ巨乳美少女というあまりにも完璧で都合のいい相手となっているわけだ。
ずぶずぶに依存させればどんな命令にだって従うだろうし、文字通り
顔良し、体良しというそんな都合のいい相手を男がそう簡単に捨てるだろうか? 私の考えとしては、NOだと思う。
つまりはあの二人の関係はもうしばらくは続いていく。私が望むような展開になるまでは、一年近い時間が必要になる可能性が高い。
そんなに長い時間を待つだなんて面倒なことはしたくないし……何より、そのせいで私にとある問題が降りかかっていた。
尾上に七瀬を奪われたことで元カノへの執着を復活させた仁秀がメンタルをやられているというのがそれだ。
(あの二人がイチャつけばイチャつくほど、仁秀が不安定になっていくんだよね~……あ~、メンド!)
自分から捨てた時は余裕綽々といった態度だったのに、尾上と七瀬の関係が進展していくほどに仁秀はどんどんおかしくなっていった。
バスケでもミスを連発して期待のエースの座から転げ落ちてしまったし、精神を立て直せるならと送り込んだ合コンで大失敗して先輩たちからの信頼を完全に失うし、そのせいで部活にも来なくなるという負の連鎖によってこいつの地位はガタ落ちだ。
その上で、尾上と七瀬がヤったことを知ってからは不安定さがさらに加速して、おかしな妄想に憑りつかれている。
話を聞く感じ、二人のことをストーキングしてるみたいだし……完全に犯罪者になっているではないか。
今もべらべらとよくわからないことを話していて、その大半がおかしなことだということがわかる。
これから尾上の浮気の証拠を掴む……と言っているが、それってつまりあいつをストーキングするという犯罪宣言ではないか。
現在進行形で付き合っていることは隠しているとはいえ、万が一にも私がこいつの彼女であることが周囲に知られたらマズい。
というより、もしもこいつが何らかの形で警察やら学校のお世話になった場合、被害者になるであろう七瀬や尾上の口から私が他人の彼氏を奪うような女であることが語られたら、証拠はなくとも私の評判まで地の底まで堕ちてしまうだろう。
(よし、切ろう! こいつはもう捨てた方がいいな!)
私が好きなのはバスケ部のエースでイケメンという高ステータスを持っている江間仁秀であって、犯罪者一歩手前の危ない目つきになっている目の前のキモ男ではない。
こいつと付き合っていても私が望むものは手に入らないし……さっさと切った方が絶対に得だ。
そう決めた私の行動は早かった。あくまで仁秀を気遣っているふりをしながら、私は奴へと言う。
「そっか……本当に大変だったんだね。色々話してくれてありがとう。私も気を付けるよ」
「あ、ああ……! わかってもらえて嬉しいよ。二奈だけは、絶対に俺が守ってみせるから……!!」
私の手を両手で握ってくるが、もうどうでもいい。悲劇のヒロインぶっている気色悪さもこれが最後だと思えば笑顔で我慢してやれる。
「いっぱい話して喉が渇いたでしょ? ほら、お水飲んで」
「あ、ありがとう。頂くよ」
「うんうん。お水を飲んだらトイレに行きたくなってきたんじゃない?」
「え? あ、うん。言われてみれば確かにそんな気がしてきたような……」
「じゃあ、我慢せずに行ってきなよ。たくさん話して疲れただろうし、少しリラックスするつもりでさ」
「そう、だな……じゃあ、そうしようか……」
メンタルが弱っている馬鹿は単純だ。信頼している相手の言うことならなんでも聞く。
尾上もこんな感じで七瀬を落としたんだろうなと、そんなことを思いながら雑な誘導にも簡単に引っ掛かってトイレに向かった仁秀を笑顔で見送った後、私はあいつの鞄に手を伸ばした。
「あったあった。え~っと、スマホのロック解除番号はっと……」
部活の際、体育館にスマホを持って行くことは禁止されているため、基本的に鞄の中に入れて部室に置いていく……というバスケ部員の習性は、普段の生活にも癖として残っているようだ。
鞄の中に入っていた仁秀のスマホを取り出した私は、そのまま以前にお互いの誕生日に設定したロックナンバーを解除してあいつと私とのラインの履歴を開く。
こうなるかもしれないと保険を打っておいて正解だった。やっぱり、何事も油断しないことが大事だ。
仁秀とのイチャついたトーク内容を冷めた目で見つめながらそう思った私は……その履歴と私の連絡先を仁秀のスマホから削除する。
これでよし。あとはあいつが私に連絡しないように「幼馴染を助けることに全力を尽くしてほしいから、私のことは気にしないで」とでも言っておけば完璧だ。
私と仁秀が付き合っていた痕跡は消えた。あいつが私に捨てられたことに気付き、自分と付き合っていたと主張したところで、ヤバい行動を繰り返すあいつの言うことを信じる人間なんてどこにもいない。妄想に憑りつかれて変なことを言っているくらいに思われて終わりだろう。
(さ~て、次の彼氏を作らないとな~……! 誰にするかな~?)
とりあえず、バスケ部の中から適当に
私の期待に応えられるような男であれば付き合い続ければいいし、そうでなければまた別の男を探せばいいんだから。
幸いにも、マネージャーの立場を利用すればキャプテンに接近することは容易い。
なかなか部活に来ない仁秀が心配で……といった感じで相談を持ち掛ければ、簡単に二人きりの状況も作れるだろう。
「お待たせ! どうかしたのか? なんか、楽しそうだったけど……?」
「ううん、なんでもないよ。おかえりなさい、仁秀くん」
トイレから戻ってきた仁秀ににっこりと笑いながらそう答える。
こいつは私の望むものを与えられないどころか、私という彼女がいながら元カノの七瀬の方に心を傾けているカスだ。何より、それが許せない。
笑顔の裏で怒りを燃え上がらせながら、私はそれを上手く隠しながら思う。
(七瀬の絶望した姿が見れなかった分、あんたに帳尻を合わせてもらうからさ……楽しみにしててね、仁秀くん……!)
最後くらい私を楽しませてくれよなと思いながら……私は、