ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
おまけ・昼休みとプリントちょっとスケベなひよりさん
「あはははは! そっか、そういう理由があったんだね!」
「そうなんです。スケベな目で見ちゃって、ごめ~んね!」
水泳の授業が終わり、眠気に耐えながらその後の授業も受け終えて……昼休み。
屋上で昼食を食べていた僕は、ひよりさんにあの奇妙な行動の理由を尋ねてみた。
そうしたら、鉢村さんの意外な趣味だとか細マッチョがなんたらとかいう面白い理由を聞かせてもらえて、その内容にお腹を抱える僕へと申し訳なさ半分、面白さ半分の表情を浮かべたひよりさんが言う。
「だから注意してよ? 雄介くんの体は意外と狙われてるんだからさ! 見られるのは女の子だけじゃないってわかった!?」
「ああ、うん。とてもよくわかりました」
「ならいいけど……女の子に頼まれたからって、簡単に腹筋とか触らせないでね!? わかった!?」
まさか、自分がそんな目で見られるとは思ってなかった僕は、正直ひよりさんにそう言われても苦笑しか出てこない。
ただ、恋人である彼女が嫌がることはしないようにしようと肝に銘じた僕へと、ひよりさんがこう続ける。
「やっぱり男の子側は気付かないもんなんだね。こっちは男子からの視線に割と簡単に気付くっていうのにさ」
「あ、やっぱりそうなんだ?」
「そりゃそうよ! 今まで何度も見られてきたからね……! プールに来た瞬間、男子たちがガン見してきたことにもすぐに気付いたから! 雄介くんがその視線からあたしを守ってくれたことにもね~!」
「うっ……!!」
授業開始直前、ひよりさんや鉢村さんたちを見ながら水着姿の感想を言っていた男子たちの前に立ちはだかったところは、バッチリ見られていた。
その際、「えっち」という大変ありがたいお言葉をいただいた僕は、その時の恥ずかしさを思い返しながら視線を逸らす。
「あたしの水着姿、見せたくなかったんだ? 独占欲が強いんだから、もう……♥」
むふ~、と満足気に鼻息を吹くひよりさんがとても嬉しそうに僕へと言う。
彼女への反撃というわけではないが、僕もまた恥ずかしさをごまかすように彼女の言動について指摘した。
「それはひよりさんも似たようなものじゃない? 鉢村さんにも注意したし、さっきだって他の女子たちに腹筋を触らせないように~って言ってたでしょ?」
「うっ! 言われてみれば確かに……!! でっ、でもさ! やっぱり親友が彼氏のことをいやらしい目で見てたら、普通は止めるでしょ!?」
独占欲が強いのはひよりさんもそうじゃないかと僕が指摘すれば、言い返せなかった彼女は言葉を一瞬詰まらせた後でそう反論してきた。
それでも、勢いがないひよりさんの様子に苦笑を浮かべた後、僕は続けてこう言う。
「ははっ……! それでいいんじゃない? お互い、相手への想いが強いってことでさ。付き合って間もないんだし、相手のことを自分だけのもの! って思いたくなっちゃうのもある意味自然だよ」
「ふ~ん……じゃあ、雄介くんはあたしのことを自分だけの彼女だ! って思ってるってこと?」
「そこまで乱暴な感じではないけど……他の誰にも渡したくない大切な人だとは思ってるよ」
「うっぐぅ……!! こういうところははっきりとストレートに言ってくるから心臓に悪いんだよなぁ……!」
僕の言葉に、今度はひよりさんが顔を真っ赤にする番だった。
頬を押さえて俯く彼女を微笑みながら見つめた後、お詫びの印として奢ってもらったプリンの蓋を剝がしたところで、顔を上げたひよりさんが口を開く。
「あの、さ……雄介くんはその、砂場とかプールサイドに残った跡だけを見て、それで十分なの……?」
「ん? どういう意味?」
「いや、だから……! 割とこう、雄介くんは尻フェチというか、あたしのお尻が好きみたいな言動が散見されるわけなのですが――」
「違うからね? 僕は別にそういう趣味があるとかじゃないよ?」
これが冗談なのか本気で言われているのかがわからないのがちょっと怖いところだ。
毎回のように訂正しているような気がするが、事あるごとにひよりさんのお尻に目を奪われている気がしなくもないので説得力がないと言われたらそれまでな気もしている。
とまあ、そういった僕の訂正と趣味はさておき……やや緊張した様子のひよりさんは、僕へと赤く染まった頬を見せながらこう言う。
「その、なんて言うかさ……そういう痕跡じゃなくって、
「
「……見たりだとか、触ったりだとか、そういうのが許される関係でしょ? あたしだってほら、さっきみたいに弾けちゃう時もあるわけだし……雄介くんも立派な男子高校生じゃん? だったら、少なからずそういう思いがあってもおかしくないよなっていうか、あって当然っていうか……」
最後の方は消え入りそうな声でそう言ったひよりさんが、羞恥の限界だとばかりに顔を俯かせる。
話し始めた時よりも赤く染まっている彼女の顔を見つめながら、何を言わんとしているかを理解した僕もまた緊張に心臓の鼓動を早くしながらも深呼吸をすると、こう答えた。
「……そういう欲がないと言えば嘘になるよ。でも――」
「……でも?」
「――ちゃんと段階を踏んでいきたいかな。焦ったりだとか、その場のノリで急に進めたくはない。大好きな相手だからこそ、大切にしたいなとも思うからさ」
健全な男子高校生としての欲求とひよりさんを大切にしたい気持ち、どちらが勝るかと聞かれれば絶対に後者だ。
僕だって男だ。だからこそ、好きな人と過ごす時間を大切にしながら絆を育んでいきたい。不用意な真似で彼女を傷付けることだけは絶対にしたくないと思うからこそ、欲望を抑え込むことができるのである。
「……ん、そっか。じゃあ、ゆっくりじっくりいこうか! 焦る必要なんてこれっぽっちもないんだからね!」
「うん、そうだね。だから、ひよりさんも変に暴走しちゃダメだよ?」
「あぅ、なんも言えねぇ……! とりあえず状況をフェアにするために、あたしのお腹触っとく? ……いや、やっぱなし! 今は食べたばっかりだし、ちょっと自信ないから!」
「あはは! ひよりさん、いっぱい食べるもんね! お腹、そう簡単に見せられないよね~?」
「あ~っ! 言ったな!? 見てろ! 雄介くんにプリンを食べさせまくって、ぽよぽよのお腹にしてみせるから!」
僕を太らせる方面にいくのかと思いつつ、大笑いする僕。
しっとりとした大人な雰囲気が嫌いなわけじゃないけれど、僕たちに似合うのは夏の日差しを思わせるこのカラッとした雰囲気だよなと思いながら……今日もまた、彼女と過ごすかけがえのない時間を楽しく過ごしていくのであった。