ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ひよりさんと水着選びとプチファッションショー!
目が覚めたらひよりさんがいる幸せな生活


「ん~……んっ、ふぁぁぁ……」

 

 次の日の朝、僕はいつも通りの時間に目を覚ました。

 今日から学校は休みで、しばらくはアルバイトも入れていない。今日は予定のない日だから、別に早起きをする必要もなかったのだが……習慣というのは恐ろしいものだ。

 

 今日は確か大我が部活の練習に行くし、お弁当を作らないとなと考えながら起き上がったところで、鼻孔をくすぐるいい匂いが漂ってきた。

 その匂いに釣られた僕が自分の部屋を出て台所へと向かえば、エプロン姿のひよりさんがフライパンを手に料理をしているではないか。

 

「あっ! おはよう、雄介くん。今日も早いね」

 

「あっ、えっ、あっ……! お、おはよう、ひよりさん。ど、どうして……?」

 

「今日、大我くんお弁当持ってくんでしょ? 真理恵さんもお仕事だし、二人分のお弁当をあたしが作っておこうかな~って思ってさ!」

 

 そう言いながら作っていた卵焼きをまな板の上に置いたひよりさんが、丁寧にそれを切っていく。

 ちょうどいいサイズに切ったそれを弁当箱の中に詰めた彼女は、完成したお弁当を見つめて頷いた後で僕へと言った。

 

「ちょうどいいし、一緒に朝ご飯食べようよ! あたし、用意しておくからさ! ほら、顔洗って歯を磨いてきなって!」

 

「あ、う、うん……」

 

 ひよりさんに背中を押されるようにして洗面所へと向かった僕は、ようやく彼女との同居生活が始まったことを思い出した。

 寝ぼけていたからうっかり忘れていたが、これから毎朝こんな展開が待ち受けているのかと思いながら顔を洗った僕は、落ち着かない気持ちを鎮めるように深呼吸をする。

 

(なんだこの夢みたいな展開……まだ夢の中だって言われても普通に信じるぞ……)

 

 かわいい彼女がエプロン姿で朝食を作って出迎えてくれるだなんて、最高以外の何物でもない。

 本来の僕の仕事をやらせてしまったことを申し訳なく思いつつ、料理の後片付けは僕がやろうと決めつつ、それでも浮つく気持ちを抑え切れずにいる僕が諸々の支度を終えた後で着替えてリビングへと戻れば、ひよりさんがテーブルの上に朝ご飯を並べてくれていた。

 

「おっ、来た来た! 朝ご飯、用意できたよ~!」

 

「あっ、ありがとう。美味しそうだね……!!」

 

 食パンと目玉焼き、サラダと茹でたソーセージというシンプルな定番朝食を目にした僕が素直に感想を述べれば、ひよりさんは恥ずかしそうにはにかんでくれた。

 向かい合って席に着いた僕たちは、両手を合わせていただきますの挨拶をしてから朝食を取り始める。

 

「なんか、夢みたいだな。朝起きたらひよりさんが家にいるって現実が幸せ過ぎて信じられないよ」

 

「ふふっ! もしかしたら夢かもしれないよ~? ほっぺた抓って確かめてあげよっか?」

 

 いたずらっぽく笑いながら頬を抓るようなジェスチャーをするひよりさんの姿に、僕もくすくすと笑う。

 僕たちがゆったりとした幸せな夏休み初日の朝を過ごす中、不意にひよりさんがこんなことを言ってきた。

 

「そういえばだけどさ、今度クラスのみんなとプールに遊びに行くじゃん? そのための水着を買いに行きたいんだけど、一緒にどうかな?」

 

「うん、いいよ。僕も今日は予定もないし、暇してたところだから」

 

「へへっ、や~りぃ! 同居生活初日からデートだなんて、あたしたちってばラブラブですな~!」

 

 にやにやと笑うひよりさんの様子とその言葉に同意するように僕も微笑む。

 暇な一日がいきなり楽しいデートの予定で埋まったことを喜んでいると、朝食のいい匂いに釣られたのか次々と家族がリビングに顔を出してきた。

 

「ふぁぁぁ……おはよう。二人とも早いわねぇ……!」

 

「めっちゃいい匂いがする……! 腹減ってきた……!」

 

「わっ!? お弁当が出来上がってる! 義姉さんが用意してくれたんですか!?」

 

「おはようございます。みんなの分の朝ご飯もすぐ用意しますから、ちょっと待っててくださいね」

 

「いいわよ。私が用意するから、ひよりちゃんは座ってて」

 

「で、でも、真理恵さんはこの後お仕事に行くわけですし、だったら少しでもゆっくりした方が……」

 

 起きてきた家族に朝食を用意するために立ち上がろうとしたひよりさんを母が制止する。

 申し訳なさそうにしている彼女へと笑顔を向けながら、母はこう言った。

 

「そんなに気を遣わなくていいのよ。早起きしてお弁当も作ってもらったし、ひよりちゃんの方こそゆっくりご飯を食べてちょうだいな」

 

「そうですよ! 朝飯の準備もほとんどしてもらってますし、あとは食パンをレンジでチンするだけですから!」

 

「いや待て。食パンはオーブンを使うからレンジでチンではなくないか?」

 

「確かに……じゃあ、なんて言うんだ? オーブンでブン?」

 

 弟たちがアホな会話を繰り広げる中、お茶目にウインクをした母は楽し気な声でひよりさんへとこう言葉を続けた。

 

「遠慮しなくていいのよ。ひよりちゃんは家族なんだから! それと、呼び方も真理恵さんじゃなくて、前みたいにお義母さんって呼んでもらいたいな~!」

 

「え、えっと……」

 

 母からの家族という言葉と、そこから続く要望に嬉しそうとも恥ずかしそうとも取れる表情を浮かべたひよりさんがはにかむ。

 期待に満ちた視線を向ける母へと向き直った彼女は、ほんのりと頬を染めながら口を開き、その期待に応えてみせた。

 

「じゃあ、その……ありがとうございます、お義母さん」

 

「う~ん……やっぱりいいわね! こう、胸に込み上げてくる嬉しさがあるわ~!」

 

「きゃっほ~い! なんかよくわからんけど俺たちも嬉しいぜ!」

 

「義姉さんが義姉さんとして義姉さんしてる!! こんなに嬉しいことはない……!!」

 

「お前ら、朝から騒ぎ過ぎだぞ! 少しは落ち着けって!」

 

 ひよりさんの発言を受けてじ~んと感動を噛み締めているように目に涙を浮かべながら天を見上げる母と、そんな母の傍でいつも通りの謎の踊りを始めた弟たちへと僕がツッコミを飛ばす。

 夏休み初日の朝からいきなり騒がしいことになったなと僕が苦笑する中、微笑みを浮かべたひよりさんが口を開いた。

 

「……嬉しいね、こんなふうに家族として歓迎してもらえるの。お義母さんも雅人くんも大我くんも、温かくていい人だ」

 

 一番温かくて優しいのは雄介くんだけどね、と付け加えたひよりさんが嬉しそうに笑う。

 その笑顔に僕も心を温かくしながら……賑やかで騒がしい、幸せな朝の一時を家族と共に過ごすのであった。

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