ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「そう言えば雄介くんはもう水着買ったの?」
「ああ、うん。中学時代に使ってた海パンでいいかなって。今日は上に羽織るラッシュガードを見に来た感じ」
「そっか~……個人的にはブーメランパンツとか履いて泳いでほしかったんだけどな~……!」
「流石に厳しいっていうか、遊ぶためのプールでそんなの履いてたらヤバい人だと思われちゃうって」
朝食を終え、少し休んだ後、僕たちは約束した通りに水着を買いにショッピングモールにやって来た。
特にブランドものでもない普通の洋服屋(アパレルショップというのだろうか?)でひよりさんとそんな会話を繰り広げた後、彼女が僕へと言う。
「じゃあ、とりあえず水着を選んで試着室の前に集合ね!」
「ん? いや、だから僕は水着はもう用意してあって――」
「違う、違う。雄介くんがあたしに着せたい水着を選んで持ってきて、って言ってるんだよ!」
「うえっ……!?」
その発言に驚いた僕が素っ頓狂な声を上げる中、ひよりさんはにやーっといたずらっぽい笑みを浮かべながらこう言葉を続ける。
「折角の機会だしさ、雄介くんがかわいい彼女にどんな水着を着せたいのか教えてもらっちゃおうかな~、って! あたしたちは恋人なんだし、そういうことしても別におかしくはないでしょ?」
「ま、まあ、それはそうだね……」
結構大胆な発言ではあるが、ひよりさんの言っていることは何もおかしくはない。
僕たちは恋人という関係だし、相手の好みの服装を教えてもらいたいという部分も、そのために服を選んでほしいという部分も、ごく普通の発言だ。
唯一、水着という選ぶ衣類の種類が気になる部分ではあるが……正直、僕もこんな展開になるのではないかと予想していた。
だからそこまで動揺せずにその発言を受け入れることができた僕に対して、むふーっと満足気に鼻息を噴いたひよりさんが言う。
「何着でも持ってきていいよ~! 雄介くんの趣味、あたしも気になってるしさ~! この機会にたっぷり教えてもらっちゃおうかな~……!!」
「な、なんか、大分ノリノリじゃない?」
「そりゃあ、雄介くんの趣味を赤裸々に大公開できるチャンスなんだから、ノリノリにもなるって! むふふ~……! 雄介くんはあたしにどんなえっちな水着を着せるつもりなのかにゃ~?」
「このお店にそんな危ない水着は置いてないでしょ!? そもそも、プールに着ていく水着だって大前提があるよね!?」
「それはそれ、これはこれって形で家で楽しむ観賞用の水着とかを選んでもいいんじゃない? あっ、そのための水着が売ってるお店に行く?」
「行きません!」
という、いつも通りの感じで僕をからかった後、くすくすと笑ったひよりさんは楽し気に声を弾ませながらこう続けた。
「あははははっ! 雄介くんをからかうのもここまでにしようかな! じゃあ、あそこの試着室前に十分後に集合ってことで! 水着、最低でも一着は選んでおいてね! 頼んだよ!」
そう言ったひよりさんがぴゅ~っと風のように駆け出し、水着を選びに行ってしまう。
気が早いなというより、テンションがすごいことになっているなとそんなひよりさんを見ながら思った僕もまた、多少の緊張を覚えながらも女性用水着コーナーに向かい、彼女に着てもらうための水着を選び始めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「雄介くんも謙虚だね~! 結局、持ってきたのは一着だけ?」
「そんなに何でもかんでも着せたいってわけじゃなかったし、ひよりさんに似合いそうだなって思ったのを選んできたつもりだよ」
「むっふっふ~! つまりは雄介くんの
シュルシュル、ガサゴソという音がカーテンの向こうから聞こえてくる。
ひよりさんの声に紛れて聞こえるその音に試着室の中の光景をついつい想像してしまった僕がぶんぶんと首を振ってその不埒な妄想を追い出す中、彼女がこんなことを言ってきた。
「あっ、一応言っておくけど、水着を試着するからってパンツを脱いだりはしないから! そこは安心してね!」
「ああ、うん。ありがとう……」
「でもブラは外すよ! 流石にそっちは着けたまんまじゃ無理だから!」
「……念のために言っておくけど、それは見えないところに隠しておいてね」
「りょうか~い! ……あっ! これもしかして、言わないでうっかりを装ってその辺に放置しておいた方が良かった?」
「良くないから。余計な気遣いだから。普通に隠しておいてもらえると助かります……!」
やっぱり今日のひよりさんはテンションが高いなと逆セクハラをされながら思う中、準備を終えたひよりさんの声がカーテンの向こう側から聞こえてきた。
「よ~し、準備完了! それじゃあ、雄介くんお待ちかねの水着ファッションショーの始まり、始まり~!」