ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「ほほう! これが雄介くんの選んだ水着……こんなのをあたしに着せようだなんて、雄介くんのえっち!!」
「そんな変な水着は渡してないでしょ!? 人聞きの悪いこと言わないでよ!!」
まだ動揺が消え去っていない僕は、ひよりさんのちょっとした言葉にもいちいち過敏に反応してしまっている。
上手いこと彼女の掌の上で転がされ続けた僕は、若干の疲れを覚えながら……着替えを終えたひよりさんと、三度目の対面を果たす。
「はい、お待たせ! 雄介くんが選んでくれた水着だよ~!」
「おお……っ!!」
そう言って試着室ではしゃぐひよりさんは、さっきよりかは落ち着いた格好をしていた。
ポーズもまともになったことでようやく落ち着いて彼女を見れるようになった僕は、深呼吸をしてから笑顔を浮かべるひよりさんへと視線を向ける。
今回、僕がひよりさんに着てもらいたいと思って選んだ水着は、黄色のフリルビキニだ。
胸の谷間も見えるといえば見えるが、さっきお披露目したような普通の三角ビキニと比較すれば大分隠されている。
下半身に関してもフリルがスカートのようになっていてくれるおかげでお尻を半分くらいは覆ってくれていて、多少ではあるが目のやり場に困らないようになっていた。
「どう? 愛しの彼女に自分好みの水着を着せた感想は!?」
「……控えめに申し上げて最高かもしれない。とりあえず、すごくかわいい」
「へへっ! や~りぃ!」
笑顔を浮かべながらガッツポーズをするひよりさんは、実に嬉しそうだ。
僕の方も自分が選んだ服を彼女に着てもらうことの嬉しさというか、満足感のようなものを理解すると共に今までとは違った意味で心臓が早鐘を打ち始める。
(似合うと思って選んできたけど、想像以上に似合ってるもんなぁ……! 本当にひよりさんはかわいいや)
事あるごとに再認識するのだが、ひよりさんは本当にかわいい。
前二つのビキニとは違い、フリルが付いていることでやや子供っぽいデザインになっている黄色のビキニだが、それが背の低い彼女にいい意味でマッチしている。
その上で大きな胸とお尻だとか、体の動きに合わせて揺れるフリルが表す活発さだとか、黄色い水着の色に負けない明るい笑顔だとか……そういうひよりさんの魅力をこれでもかと引き出しているように見えた。
デザイン的にセクシーよりもかわいいの部類に入る水着だし、フリルのおかげで胸もお尻も多少は隠れてくれて彼氏としても安心できる。
基本は何か上着を羽織ると考えれば、かなり落ち着いた水着姿になるはずだと僕が考える中、ふんふんと鏡に映る自分の姿を確認したひよりさんが口を開いた。
「ちょ~っと子供っぽいけど、かわいい水着だよね! あたしも気に入ったし……みんなで遊ぶ時に着る水着、これにしようかな!」
「ひ、ひよりさんが気に入ってくれたなら何よりだよ。セレクトに自信がなかったけど、そう言ってもらえて僕も嬉しい」
「ふっふっふ~! かわいくておっぱいも大きい彼女に自分が選んだ水着を着てもらえて良かったね! 雄介くん! それにしても、ちょっと意外だったな~! お尻好きな雄介くんのことだから、もっとお尻がよく見えるような水着を選んでくると思ったのに、実際はむしろ隠すようなタイプのやつを選んでくるんだもん!」
「あ、ああ、それは――」
そう言ってスカートのようになっているフリルを摘まんだひよりさんがそれをひらひらとはためかせながら言う。
さっきまでと同じからかいのための言葉だったのだろうが、僕は普通に自分の考えを彼女に伝えてしまった。
「ひよりさん、お尻が大きいことを気にしてるみたいだったから……そこを隠せるような水着がいいかなって。まあ、周りの人たちにひよりさんの大胆な格好を見せたくないからっていう僕の独占欲も多分に盛り込まれてるセレクトではあるんだけどさ」
「……ふ~ん、そっか。雄介くん、あたしのことを考えてくれてたんだね」
これまではしゃぎにはしゃいでいたひよりさんが、僕の答えを聞いて一気にトーンダウンした。
だけど、その声には嬉しさがにじみ出ていて、決して気落ちしたわけではないということがわかる。
そんな彼女の反応に僕が何かを言う前にカーテンを閉めたひよりさんは、あっという間に着替えを終えて試着室から出てきた。
かごの中に黄色のフリルビキニを入れ、その後にオレンジと白のストライプ柄のビキニも入れた彼女へと、僕が尋ねる。
「あれ? そっちの水着も買うの?」
「うん、そうだよ。こっちの黄色のは遊びに行く時に着るやつで、こっちのビキニは――」
そう言いながら顔を上げたひよりさんが、蠱惑的な笑みを浮かべる。
いたずらっぽいともまた違う、不思議な視線で僕を見つめた彼女は、開いた口から甘く蕩けるような声を出し、こう言葉を紡いだ。
「――雄介くんの前だけで着る水着だね♥」
「え゛っっ……!?」
本日最大の心臓の跳ね上がりを自覚した僕が潰されたカエルのような声を漏らせば、ひよりさんはとても楽しそうに笑ってくれた。
その反応が見たかったとばかりに微笑んだ彼女は、僕以外の誰にも聞こえないような小さな声で静かに呟く。
「家に帰ったらさ、二人っきりで
「~~っ!?」
多分、ひよりさんは半分以上本気でこう言っている。僕がその気になれば、本当にあの水着を着て写真を撮らせてくれるのだろう。
だがまあ、そんなことしたら理性が保つ気がしないぞと自分で自分を戒めた僕は、家に次男の雅人が残ってくれていることに心の底から感謝しつつ、会計を済ませるのであった。