ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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夜の家族の会話②

「ひよりちゃん、朝ご飯だけじゃなくって晩ご飯まで作ってくれてありがとうね~! 本当、助かるわ~!」

 

「いえいえ! あたしは雄介くんの手伝いをしただけですから!」

 

「そんなに謙遜しないでよ。半分はひよりさんが作ってくれたでしょ?」

 

「偉大なる兄夫婦に感謝」

 

「命の恩人、感謝永遠に~」

 

 その日の夕食はデートから帰ってきた僕たちが二人で作った。

 メニューはご飯に味噌汁、そしてメインの冷しゃぶだ。

 

 バラ肉を使ったものは僕が、ロースの方はひよりさんがといった感じで半分ずつ作った冷しゃぶを別々の皿に盛り付けてテーブルの上に置けば、家族は口々に感謝の言葉を述べてくる。

 

「ひよりさん、タレは何使う? ごまだれ? ポン酢?」

 

「ポン酢でお願い!」

 

「オッケー、僕と同じだね」

 

「おい、聞いたか大我? 雄介の奴、地味に義姉さんと同じアピールしてきたぞ」

 

「ホント、事あるごとに惚気られて困っちゃうわ~。あれだけで腹いっぱいになって晩飯が食べられなくなるわ~!」

 

「うるさいぞ、お前ら」

 

 事あるごとにからかってくる弟にツッコミを入れつつ、食卓に着く。

 いただきますの挨拶をしてから夕食を食べ始めた僕たちの会話は、自然と今日のデートについてのものになっていった。

 

「そういえば、今日は二人でどこかに遊びに行ったんでしょう? 何をしてたの?」

 

「今度、クラスのみんなとプールに行くんで、ショッピングモールに水着を買いに行きました! 雄介くんに選んでもらったんですよ!」

 

「あら、いいじゃない! カップルらしいわね~! ……ちなみに、雄介に変な水着を着させられたりしなかった?」

 

「そんなことするわけないだろ!? 僕を何だと思ってるんだよ!?」

 

「あははははっ! 大丈夫です! 雄介くん、普通にかわいい水着を選んでくれたもんね!」

 

 ギャグなのか本気で心配しているのかわからない母の言葉に僕が再びツッコミを入れる。

 大笑いしたひよりさんがその質問に答える中、もぐもぐと冷しゃぶを食べていた弟たちがそれを飲み込むと共に彼女に加勢するように言った。

 

「そうだよ、母さん。そんな心配しなくても大丈夫だって」

 

「そうそう。雄介がそんなことするわけないじゃん」

 

「お前ら……!」

 

「まあ、正しくは()()()じゃなくて()()()()なんだろうけどさ」

 

「こういう機会をガッツリ利用できるような大胆な性格してないよ、雄介は」

 

「お前ら……っ!!」

 

 フォローかと思ったら普通にこっちを撃たれた。一瞬だけ抱いた感動と感謝の気持ちを返してほしい。

 僕が若干の怒りを抱き始める中、楽しそうに笑ったひよりさんがしみじみとした声でこんなことを言う。

 

「あははっ! ……やっぱりいいね、こういう賑やかな食卓ってさ」

 

「そう? 賑やか過ぎて疲れたりしない?」

 

「全然! あたしんちは共働きで、普段は一人でご飯を食べてるからさ……みんなで楽しく話しながら食事ができるっていいなって、そう思う」

 

「ひよりちゃん……」

 

 笑みを浮かべながら、今、この瞬間の幸せを噛み締めるようにひよりさんが言う。

 その言葉を受けた僕の家族たちは、口々に彼女へと言葉を投げかけ始めた。

 

「こんな馬鹿騒ぎする食卓で良かったら、いつでも遊びに来てちょうだい! 少なくとも、この夏休みはひよりちゃんに寂しいだなんて一秒も思わせたりしないからね!」

 

「そうですよ! もう、義姉さんのためだったらいくらでも盛り上げますから! なんだったらなんか踊りでもお見せしましょうか!?」

 

「いや、飯の時間は普通に食事した方がいいだろ。暴れると埃も舞うしさ」

 

「正論で論破するのは止めろ! 繰り返す! セイロンロンパは止めろ!!」

 

「ふふふふふ……っ! あはははははっ!!」

 

 励ましたり、騒いだり、ツッコんだりといった賑やかな家族の会話を聞いたひよりさんがお腹を抱えて笑う。

 そんな彼女の様子に微笑みを浮かべながら、僕もまたひよりさんへと声をかけた。

 

「僕たちにとっては、ひよりさんも家族の一員だよ。一緒に楽しく過ごしてくれたら嬉しいなって、そう思ってるから」

 

「うん、ありがとう! ……えへへっ! 家族の一員……! ご家族公認の兄嫁ってことか~!」

 

 楽しそうにはしゃぎながらのひよりさんの言葉を、僕は否定しなかった。

 母も弟たちも「そうでしょ?」といった表情を浮かべながら僕の方を見ており、ひよりさんの言葉よりもその眼差しの方が恥ずかしく思ったくらいだ。

 

「寒くなったら普通のしゃぶしゃぶも食べたいね。家族みんなでお鍋を突いてさ……!」

 

「……その時はひよりさんのご家族も一緒がいいな。みんなで楽しく食事がしたい」

 

「ふふっ! じゃあ、両家顔合わせの時はしゃぶしゃぶのお店にする? でも、七人分となると相当おっきなお鍋が必要じゃない?」

 

 ははは、と笑いながらの会話ではあるが、僕はあまり冗談として話している気持ちはない。

 これが現実になっても何も問題ないと、本気で思いながら話している。

 

 いつか僕とひよりさんの家族が名実ともに本当の意味で家族になる日が来るといいなと思いながら……僕たちは、楽しい食事の時間を過ごしていった。

 

 

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