ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

137 / 426
二人で温泉旅行にも行きたいね

「温泉かぁ……最後に行ったの、いつだったっけなぁ……?」

 

 銭湯だとか、こういうレジャー施設とは違うホテルや旅館なんかにある本格的な温泉に最後に入ったのはいつだっただろうか?

 父が亡くなってからは家族旅行もしてなかったし、温泉旅行なんて遠い過去の記憶だなと考える僕へと、ひよりさんが言う。

 

「流石に年齢的に泊りがけで行くのは無理だけどさ、日帰りとかで遊びに行くのはできそうじゃない?」

 

「確かに、近場の温泉ならできなくもないね」

 

「でっしょ~!? 冬休みに向けて、計画を立てるのもいいかもね!!」

 

 寒い時期になったら、そういうデートもいいかもしれない。

 大浴場ではなく、景色を楽しみながらの露天風呂を堪能するのも乙なものだなと思った僕は、笑みを浮かべながら頷いた。

 

「そうだね……でも、行くんだったら冬休みより秋の方がいいかもよ? 年末年始とかクリスマスは人でごった返してそうだしさ」

 

「言われてみればそうだね。どのくらいお金がかかるかもわかんないし、今度調べてみよっか!」

 

 楽しそうにそう語るひよりさんを見ていると、僕の胸も弾んでしまう。

 いや、胸が弾むといってもさっきのひよりさんのあれとは意味が全然違うぞとセルフツッコミを入れる中、くすくすと笑ったひよりさんがこんなことを言ってきた。

 

「でもやっぱり一番大事なのは、()()できるかどうかどうかってところだよね~!」

 

「うえっ……!?」

 

 唐突にひよりさんの口から飛び出してきた『混浴』という単語に動揺した僕は、思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

 そんな僕をニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべて見つめるひよりさんが、上目遣いでこちらを覗き込みながら口を開く。

 

「折角の温泉旅行だもん、一緒に入れなかったら意味ないでしょ~? 雄介くんもそこは期待してるんじゃない?」

 

「べっ、別にそんなことは――!!」

 

「え~? さっきあたしの胸、じーっと見てたくせに~?」

 

「ぐふっ!!」

 

 先ほどの不躾な視線がバレていたことに深いダメージを受けた僕が恥ずかしさに呻く。

 敢えて泳がせていたのかと彼女の掌の上で踊らされていたことを自覚する中、ひよりさんは小さな、されど弾んだ声で話を続けていった。

 

「旅館とかによっては二人だけで入れる貸し切りの風呂とかも用意してるみたいだし、チェックしてみようよ! これからシーズンに入るんだし、カップルプランとか用意してくれてるところもいっぱいあると思うな~……!」

 

「さっ、流石にそれはマズいでしょ!? 僕たち未成年だし、そういうことはあんまり良くないって!」

 

「大丈夫だよ~! 水着で入れる混浴温泉もたくさんあるしさ! ……あっ、もしかして雄介くん、裸であたしと温泉に入ろうと思ってた?」

 

「えっ? あ、あ~……!」

 

 その言葉を受けて気が付いたのだが、ひよりさんは今やっているように水着を着た状態で混浴をしようと考えていたようだ。

 彼女とは真逆に、何も身に付けない状態での混浴を想像していた僕が自分の勘違いに顔を赤らめる中、一層楽しそうに笑ったひよりさんが言う。

 

「ふふふ……っ! 雄介くんのえっち♥ 流石に高校生が裸で混浴はアウトだって。ホテルの人たちにも止められちゃうよ。まあ、でもさ……♥」

 

 にや~っ、と蠱惑的な笑みを浮かべたひよりさんがすっと僕に近付く。

 耳元に唇を寄せ、ふぅっと息を吹きかけた後、彼女は甘い声でこう囁いた。

 

「お家でだったら、試してもいいよ♥ 今、ちょうど同棲してるわけだしさ……♥」

 

「っっ!!」

 

 心臓が破裂するんじゃないかと思わせるくらいの破壊力を持つ囁きを放ったひよりさんが、再び僕から離れる。

 試すような笑みと眼差しを向けてくるひよりさんの姿にさらに気持ちが落ち着かなくなってきた僕が顔を真っ赤にする中、クラスメイトたちが声をかけてきた。

 

「あ~っ! お前ら、二人でこそこそ何やってんだ!?」

 

「先生! 尾上くんと七瀬さんがこっそりイチャついてます! 僕たちには彼女なんていないのに、ズルいです!!」

 

「うわぁ、立派過ぎる逆恨みだぁ……! 情けのない奴!!」

 

「あんたたちさぁ、ちょっとは空気とか読みなよ。そういうところがモテない理由だよ?」

 

 話の内容までは聞かれていなかったようだが、僕たちが二人でこそこそ話しているせいで色々と怪しく思われてしまったようだ。

 恋人という関係を公表した結果、ひよりさんの自重が利かなくなっている部分があるような気がする……と考えつつ、それは自分もかと苦笑を浮かべながら思った僕は、この賑やかさのおかげで気持ちをリセットすることができた。

 

「さてと、これ以上入ってるとのぼせそうだし、そろそろ出るか。水着も着替えなくちゃなんねえしさ」

 

「ああ……女子たちの水着姿もこれで見納めか……」

 

「泣くなよ。また来年、ここに戻ってこよう……!!」

 

 なんだか部活の大会で負けた時のような会話を繰り広げながら、遊佐くんたちが大浴場を出ていく。

 僕とひよりさんも顔を見合わせ、笑いあった後……みんなの後に続き、温泉を後にするのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。