ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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バイキングの最中、少し浮気女の話になった

「きゃっほ~い! バイキングだバイキングだ~っ!」

 

「お腹ぺこぺこだし、いっぱい食べるぞ~っ!!」

 

 温泉から出て、服に着替えて合流した後、僕たちは遊佐くんが予約してくれていたレストランへと向かった。

 人数が人数なので、幾つかのグループに分かれて食事を取ることになり、僕とひよりさんは遊佐くん、熊川さん、鉢村さんと同じテーブルを囲んでいる。

 

 説明を受けた後、色んな料理を乗せたお皿を手にテーブルに戻ってきたひよりさんと熊川さんは、実に美味しそうにそれを食べ始めた。

 彼女たち二人だけでなく、女子たちの大半が男子よりもたくさんの料理を取ってきているなと考える中、彼女たちが並べられている料理について話をしていく。

 

「和洋中となんでもあるね、ここ! デザートもいっぱいあったし、何食べるか迷っちゃうよ~!」

 

「食べたいものは全部食べるつもりでいこう! 時間はたっぷりあるし、お腹いっぱいになるまでおかわりしまくるぞ~!」

 

「あはは……! 二人とも、そんなにお腹が減ってたの?」

 

「まあ、朝に食べたっきりみたいだし、半日何も食べてないとなるとそうもなるか」

 

 バイキングとはいえ、いつも以上の食い気を見せているひよりさんたちの姿を目にした僕が彼女たちへと言う。

 遊佐くんも少し驚きながらも、今日はほとんど何も食べていなかったしなと女子たちの食欲に理解を示したのだが、あまり料理を持ってきていない鉢村さんが苦笑を浮かべながら口を開いた。

 

「あ~、ちょっと違うかな? 色々解放されて、思いっきりご飯を食べられることを楽しんでる、みたいな?」

 

「色々解放? どういうこと?」

 

「私たちみんな、今日、男子たちの前で水着を着ることはわかってたでしょ? そこに合わせてダイエットとか、そういうことをしてたわけよ。他の女の子たちもいる中、自分だけお腹が出てたりしたら恥ずかしいじゃん」

 

 そう言いながらフォークで巻いたパスタを頬張った鉢村さんが満足気に頷く。

 もぐもぐと口を動かす彼女に代わって、ひよりさんたちが話を引き継ぐと僕たちへと言った。

 

「そういうこと! 男の子たちにかわいい自分の姿を見せたいっていう、いじらしい乙女心ってやつだよ!」

 

「胸よりも腹の方が出てたってうわさされたら死ぬほど悔しいしね! でも、今日で節制の日々から解放! 今まで我慢した分、思いっきり食べるぞ~っ!!」

 

 言われてみて思い返してみたのだが、確かにここ最近、ひよりさんの食事量が普段よりも少ないような気はしていた。

 何度か泊まったこともあるし、仲がいい相手とはいえ、他人に囲まれて生活しているから緊張しているのかな? と思っていたのだが、そういうことだったのかと納得している間に、ひよりさんと熊川さんは持ってきた料理を平らげてしまったようだ。

 

 きゃいきゃいと騒ぎながら他の女子たちと連れ立ってまた料理を取りに行った彼女たちを僕たちが見つめる中、不意に鉢村さんが口を開いた。

 

「色々あり過ぎて凹んでないか心配だったけど……ひよりが元気そうで良かったよ」

 

「そうだな……ここ最近、結構ショッキングなことが続いてたもんな……」

 

「尾上くんのおかげだね。ひよりのこと、支えてくれてありがとう」

 

「僕はお礼を言われるようなことはしてないよ。今、ひよりさんが元気なのはひよりさんが強かっただけの話だし、それに――」

 

 僕はただ、好きな人の傍にいただけだから……と続けようとしたが、流石にそこまで言うのは恥ずかしかったのでここで止めておいた。

 それでも二人には僕が何を言わんとしていたのかがわかってしまったようで、どこか微笑ましいものを見るような表情を浮かべながらからかうようにしてこう言ってくる。

 

「そんな謙遜すんなよ。お前、十分すげえって。俺は同じことできる気しねえもん」

 

「でも、そういうところが尾上くんのいいところだよね。ひよりが惚れた理由、よくわかるもん」

 

 こうしてド直球に褒められるのは、ひよりさんのからかいとはまた違った恥ずかしさがある。

 頬を掻きながら気恥ずかしさに視線を逸らす中、鉢村さんは改めて小さな声で呟いた。

 

「幼馴染に浮気されたかと思ったらそいつが急にストーカーになって、ヤバイ行動を繰り返し始めて……改めて、本当にすごい毎日だったね」

 

「その後も色々あったしな。俺はその場にいなかったけど、江間の奴、バスケ部でもひと悶着起こしたみたいだし……マジで現実か疑うレベルでえげつねえよ」

 

 色々と、僕たちの事情を知っている二人がこれまでのことを振り返りながら話をする。

 僕もまた、ひよりさんと出会ってから今日までの日々を振り返ると同時に、本当に信じられない出来事が何度も起きていることを再認識して……その果ての同棲生活というこれまた信じられない状況に陥っている今現在の自分自身に苦笑を浮かべたのだが、そんな僕とは対照的に鉢村さんは険しい表情を浮かべていた。

 

「江間はもういいとして、紫村が気に入らないよね。元はといえば、あいつが元凶なわけだしさ。それなのに江間と違って何のダメージも受けてないって、やっぱムカつくじゃん」

 

 江間と並ぶもう一人の元凶、紫村二奈。

 よく知らない相手ではあるが、鉢村さんの言う通り、ひよりさんを傷付ける原因を作った彼女に対して、僕もいい感情を抱いてはいない。

 

 ただ、痛い目に遭え! とまでは思っていなくて、純粋に江間共々もうひよりさんに近付いてこなければそれでいいとも思っている。

 無理に近付いてこようとするのなら、それをシャットアウトしてひよりさんを守ることが僕の役目だ……と考えていたのだが、そこで遊佐くんが顔を顰めながら口を開いた。

 

「その紫村さんのことなんだけどさ……なんか最近、様子が変なんだよな……」

 

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