ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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帰りのバスの中で、ひよりさんと

「いや~! いっぱい遊んでいっぱい食べたし、お土産も買った! 今日は楽しい一日だったね、雄介くん!」

 

「そうだね。帰るのがちょっと名残惜しいくらいだよ」

 

 楽しい食事を終えた後、お土産を買うための自由時間を経て、僕たちは帰りのバスに乗るために停留所に並んでいた。

 行列になる前に並び始めたおかげで、一番前を確保することができた僕たちは今日の思い出を振り返りながらおしゃべりを楽しんでいる。

 

 「また遊びに来たいね」だとか、「次の連休もどこかに遊びに行こうか」だとか……そういったふうに今日を心行くまで楽しめたことをそのおしゃべりの中で確認しながら、僕もひよりさんと話をしていた。

 

「それにしても、ふぁぁ……流石に眠くなってきちゃったな~……」

 

「たくさん泳いだし、お腹も膨れたからね。僕も少し眠いよ」

 

 大きく口を開けてあくびをしたひよりさんの様子に思わず笑ってしまった僕は、それにつられてわずかに込み上げた眠気をごまかすように首を回した。

 クラスのみんなも今はおしゃべりでテンションが上がっているが、バスに乗ったら眠気がどっと押し寄せてくるのだろうなと思ったところで、そのバスがやって来る。

 

「おっ、来た来た! みんな~、バスが来たぞ~!」

 

 楽人が声掛けをすれば、みんなもおしゃべりを中断してバスに乗るためにきちんと列に並び直した。

 僕もひよりさんと二人で並び、荷物を手にバスへと乗車する。

 

「どうする?奥に座るか?」

 

「手前でいいんじゃね? 降りる時、楽だしさ」

 

 一番最初に乗った者の特権ではないが、誰も乗っていないバスの座席の中から手前側の席を選んだクラスメイトが次々と椅子に座っていく。

 僕とひよりさんもまた、運転席のすぐ後ろにある最前席へと腰掛けると、他の乗客たちがバスに乗り終わるまで待つことにした。

 

「思ってたより人がいないね。みんな、もう帰っちゃったのかな?」

 

「夏休みだし、ホテルに泊まる人もいるんじゃない? 家族連れなんかはマイカーで来てるだろうしさ」

 

 そっか~、と納得したように頷いた後で窓の外の景色を眺め始めたひよりさんから視線を外し、僕は時間を確認した。

 現在時刻は夜の七時。家に着く時間は大体九時から十時くらいになるだろう。

 

 母たちもまだ十分に起きている時間だなと思う中、停留所にいた人たちの乗車が終わったようだ。

 運転手さんのアナウンスの後、扉が閉まり……ゆっくりとバスが走り出す。

 

「さらば、ひと夏の思い出……!!」

 

「お前が見せてくれた女の子たちの水着姿を、俺たちは一生忘れないだろう……!!」

 

「ったく、馬鹿なこと言ってんじゃねえよ」

 

「アホな男子たちというか、これだからっていうか……」

 

 駐車場から出て、徐々に遠ざかっていくレジャー施設を見つめながら、クラスの男子たちが別れの言葉を述べる。

 楽人や女子たちがそんな彼らにツッコミを入れた後は、バス内に静寂が満ち始めた。

 

(僕たちだけじゃなくて、他の人たちも眠いんだろうな……)

 

 遊び疲れているのは僕たちだけじゃなく、このバスに乗っている全員がそうなのだろう。

 通路側から軽く身を乗り出しながら振り返ってみれば、発車してまだ数分しか経っていないのに随分とまぶたを重そうにしている人たちの姿がちらほらと見受けられるくらいだ。

 

 さっきまではしゃいでいた男子たちも、一度座って落ち着いたせいかすっかり大人しくなっている。

 中にはもう、夢の世界に旅立ってしまっている人たちもいて……バスの中には、お休みムードが漂っていた。

 

「雄介くん、カーテン閉めてもいい?」

 

「大丈夫だよ。僕のことは気にしないで」

 

「ん……ありがと……」

 

 くぁぁ、と大きなあくびをした後で問いかけてくれるひよりさんへと微笑みながら返事をした僕は、彼女に代わってカーテンを閉めた。

 既にかなり眠そうなひよりさんはまたしても大あくびをしていて、小さく笑った僕はそんな彼女へと言う。

 

「着いたら起こすから、安心してね。おやすみ、ひよりさん」

 

「ん……んんっ……?」

 

 僕の言葉に小さく頷いたひよりさんは、そのまま目を瞑ろうとしたのだが……不意に目を開くと、ゆっくりと椅子に沈んでいた体を起こした。

 そのまま僕の体越しに通路を挟んで反対側にある無人の座席を見て、前方にある運転席と乗客用の席を隔てる壁を見て、後ろでぐっすりと眠っているみんなを見た彼女は、椅子に座り直すと共に僕の方をちらりと見る。

 

 それが彼女の合図で、何か言いたいことがあるんだなと思った僕がひよりさんへと顔を寄せれば、彼女もまた僕の耳に口を近付けて小さな声で囁いてきた。

 

「あのさ……今ならあたしたちのこと、誰も見てないよね?」

 

 小さく、彼女の囁きに頷く。

 僕の反応を見たひよりさんは緊張したように息を飲むと、一段と小さくした声で、僕にだけ聞こえるように甘く囁いてきた。

 

「じゃあさ、その……()()()()()()()、してもらってもいいかな……?」

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