ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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本日最大の恐怖(?)

「いや~、怖かった~……! やっぱホラーは苦手だわ」

 

「まだ番組は終わってないぞ。安心するのは早いんじゃないか?」

 

「ここからはほとんどお決まりのパターンじゃん。若干やらせっぽいしさ」

 

「大我くん、それ以上いけない」

 

 二時間ほど続いたホラー番組も終盤。今はもう心霊写真や恐怖映像の紹介が終わり、芸能人たちによる心霊スポット突撃ロケの映像が流れている。

 これまでとは違って怖がっている人の姿を存分に見られるというか、ロケ中の芸能人たちがガヤガヤと騒いでくれているおかげというか、色々と怖さが薄れる要素が多くあるためか、家族も完全にリラックスして番組を見るようになっていた。

 

「大体あれよね。ここからちょっとした心霊写真が撮影できたり、異常事態が起きたりするのよね」

 

「安全なところまで行ったらゲストの一人が体調を崩して、緊急除霊が始まるとかな」

 

「パターンよ、パターン。ここまでくると流石の俺たちもビビったりしないって」

 

「それがフラグにならないといいけどな……この後、何かでガチビビリしたりして」

 

 どうやら家族が怖がる時間はもう終わってしまったようだ。

 気を抜きながら普通にバラエティ番組を見るように心霊スポット突撃企画を楽しんでいる家族へと、僕は本来の目的に関する質問を投げかける。

 

「それで? 自分たちがどれだけヘタレか理解できたか? 少なくとも、僕のことをヘタレ呼ばわりできるような立場じゃあないよな?」

 

「まあ、うん……それは十分過ぎるくらいに理解できたわね……」

 

 元々、この鑑賞会は僕をヘタレ呼ばわりする家族へと仕返し兼僕の名誉を回復するために行ったものだ。

 僕はヘタレではないと、散々にビビリ散らかした家族にそんなことを言う権利なんてないだろうと胸を張って告げる僕であったが、家族の反応は僕が期待したものと微妙に違っていた。

 

「ホラー耐性は前々から知ってたからどうでもいいけど、俺たちの前で堂々と義姉さんとイチャつける肝の座りようはどう考えてもヘタレじゃないわな……」

 

「普通、恥ずかしさで死ぬわ。あんなに平然とイチャイチャできるんだから、ある意味お前はすごいよ」

 

「うん……? んん……?」

 

 ヘタレではないと認められてはいるが、何か違う気がする。

 弟たちの言葉に僕が首を傾げる中、ひよりさんが楽しそうに笑いながら二人へと言った。

 

「雄介くんは下ネタが苦手なだけだからね! 告白も雄介くんからだったし、ヘタレではないと思うよ!」

 

「そういう義姉さんも大分大胆ですもんね。やっぱ、似た者同士が付き合ったってことか……」

 

「バカップル適性が高過ぎるんだよなぁ……見てたら口の中が甘くなってしょうがねえもん」

 

 兄として、名誉を回復できたようなそうでもないような微妙な流れだが……まあ、これで家族も僕のことをヘタレ呼ばわりしないだろう。

 細かいことは気にしないようにしようと僕が自分自身を納得させる中、ため息を吐いた母が言う。

 

「あ~、先にお風呂に入っておくんだった……! こういう番組を見た後で一人でお風呂って、すごい怖いじゃない! 髪を洗ってる最中にふと顔を上げたら、鏡の中に幽霊が映ってたりしそうでさぁ……!」

 

「ちょっと母さん!? なんで今、そういうこと言うの!?」

 

「もうシャワーの最中に顔上げられないじゃん! 鏡見れないじゃん!!」

 

 とまあ、母の不用意な一言に恐怖をぶり返らせた弟たちが怯えながら絶叫する。

 そんな家族のことを笑いながら見つめていた僕へと、ひよりさんがおどけと甘えを半々にした声で言った。

 

「あたしも怖くなっちゃったな~! 雄介くんが一緒にお風呂入ってくれないかな~?」

 

「入りません! 人をからかうのもいい加減にしなさい!」

 

「え~? いいじゃん、いいじゃん! 入ろうよ~!」

 

 至近距離から上目遣いでそんなおねだりをされた僕は思いっきり心臓を高鳴らせてしまったが、理性によってどうにかまともな回答をすることができた。

 ニヤニヤと楽しそうに笑いながら尚も誘ってくるひよりさんの態度に顔を赤らめる僕を見る弟たちが、ふむふむと頷きながら口を開く。

 

「なるほど、こういうのが苦手なわけね。雄介らしいわ」

 

「まあ確かに、これでノリノリで一緒にお風呂に入ったり、義姉さんの下着を見て大喜びされたりしたら、そっちの方がホラーだよな!」

 

 あっはっはっはっは、ととても楽し気に笑う弟たちの姿を見ていると、なんだか腹が立ってきた。

 しかし、そんな二人に僕が何かを言う前に、再び母が口を開く。

 

「いや、でも待って。ひよりちゃんと付き合う前の雄介だったら、こんなふうに女の子とくっ付くことなんてできなかったはずよ。それが今じゃ、あんなふうに平然とイチャついてる……確実に耐性ができているわ!」

 

「た、確かに、感覚がマヒしてたけど、かつての雄介からは想像もできないバカップルっぷりだ……!」

 

「待ってくれ。もしかしなくても、雄介が義姉さんの下ネタに動じなくなる日が来たとしたら、それは二人が一線を越えた証明になっちゃうんじゃ……!?」

 

「ひっ、ひええええええっ!!」

 

 何かよろしくない妄想を繰り広げた母と弟たちがまるでムンクの叫びのような状態になって本日最大の怯えを見せる。

 まさか、さっきの発言が本当にフラグになるだなんてな……と遠い目になりながら、僕は楽しそうに腕の中で甘えてくるひよりさんの頭を撫で、ちょっといい気持ちになるのであった。

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