ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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そう遠くない未来、家族になる人

「……真理恵さんはああ言ってましたけど、雄介くんの方こそあたしにはもったいない人だと思います。今もそうですけど、苦しかったり大変な時に支えてくれました。あたしのこと、幸せにするって約束を守り続けてくれている……とっても優しい人です」

 

 父に報告する形でひよりさんに褒めてもらった僕は、そのことに気恥ずかしさを感じていた。

 普段だったらここで母や弟たちからのからかいの言葉が飛んでくるのだろうが、今日は皆、黙って僕たちのことを見守ってくれている。

 

 多分、僕たちに気を遣ってくれているのだろう。

 初めて父と話をするひよりさんの邪魔をしたくないと思ってくれている家族に、僕は心の中で感謝した。

 

「……今日までずっと、雄介くんには幸せにしてもらってきました。あたしもそれに負けないくらい、彼のことを幸せにしたいって思ってます。まだ付き合って間もないどころか、出会って数か月程度のあたしですが……その気持ちは本物だってことを感じていただけたら、とても嬉しいです」

 

 そう言った後、ひよりさんが改めて手を合わせて頭を下げる。

 父に言いたいことは全て話したと、彼女のその行動を見て理解した僕は、続けて口を開いた。

 

「久しぶり、父さん。暫く顔を出せなくてごめん。一年ぶりに来たかと思ったら恋人まで連れてきて、驚かせちゃったこともごめんね」

 

 自分で言いながら、割と親不孝な息子だと思ってしまった。

 母や弟たちが苦笑しているであろう雰囲気を背中で感じ取りながら、それも仕方ないなと思う僕は話を続けていく。

 

「高校生活のこととか、話したいことはいっぱいあるけど……ひよりさんのこと、ちゃんと話さないとだよね。とは言っても、僕から言えるのは一つだけなんだけどさ」

 

 大半のことは母からの紹介と先ほどのひよりさんの挨拶で説明されている。

 付き合うまでの馴れ初めとかを話すには時間がかかり過ぎるし、今、僕が話すべきことは一つだけでいい。

 

 そう思いながら深呼吸した僕は、そこで眠っているであろう父の姿を思い浮かべ、真っすぐに墓石を見つめながら言う。

 

「まだ気が早い話だと思うけどさ……そう遠くない未来、ひよりさんは()()()()()()だから。今でもそんな感じだけど、いつかちゃんとした形で迎え入れたいって、僕はそう思ってる」

 

「……!!」

 

 隣に立つひよりさんが、驚いていることがわかった。

 だけどどこか嬉しそうでもある彼女の雰囲気を感じ取りながら、僕は長いようで短い父への挨拶を締める。

 

「だから、どうか見守ってあげて。一日でも早くひよりさんが安心して過ごせる日々が戻ってくるよう、父さんも一緒に祈ってください。お願いします」

 

 一年ぶりに顔を出した長男からこんなお願いをされた父は、今どんな顔をしているだろう?

 さぞや驚いているだろうなと思いながら弟たちに場所を譲った僕は、ひよりさんにちょいちょいと手を突かれて彼女の方を向いた。

 

「やっぱり雄介くんって大胆だよね~。幸せにし続けるって宣言もそうだけどさ、今のも実質プロポーズじゃん」

 

 楽しそうに、そして嬉しそうに笑いながら囁くひよりさんの頬が赤く染まっているのは、夏の暑さのせいではないだろう。

 そんな彼女を見つめ返しながら、僕も微笑みを浮かべ、口を開く。

 

「そうだね……前も言ったかもしれないけど、その言葉をうそにするつもりはないから。ひよりさんのことは幸せにし続けるし、家族になる人だと思ってるよ」

 

「……お義父さんにも言ってたけど、気が早過ぎ。あたしたち、まだ結婚できる歳じゃないからね?」

 

「その言い方だと、その時が来たらオーケーしてもらえるってことだよね? 安心したよ」

 

「……ばか」

 

 そう呟いたひよりさんが照れ隠しに僕の手を優しく抓る。

 彼女からの痛くない程度の反撃に僕が小さく笑みを浮かべれば、ひよりさんは少しむっとした様子を見せた後で力を強めてきた。

 

「う~ん、これはバカップル。父の墓前で実質プロポーズするだけのことはある」

 

「多分だけど、周りで眠ってる皆さんも何やってるんだってツッコんでると思うぞ」

 

 僕たちがそんなやり取りをしている間に、弟たちも父への挨拶を終えたようだ。

 この場でも恋人らしいやり取りを続けている僕たちへと周囲の人(幽霊?)たちの分も含めたツッコミを入れた二人の言葉には、苦笑を浮かべるしかなかった。

 

 そうやって普段とは少し違った雰囲気の中での墓参りを終えた母は、一つ大きな息を吐いた後に振り返ると……僕たちに向かって言う。

 

「じゃあ、帰りましょうか。お父さんも久々の我が家を楽しみにしてるでしょうしね」

 

「そうだね……帰ろうか」

 

 多分、時間にしたら二、三十分くらいの墓参りだったのだろう。

 あまり長くここにいたわけではないが、これで十分だ。

 

 ほんの数日だけだが、僕たちの家に家族が全員そろう。

 目には見えない父が僕たちと一緒に家に帰ってきてくれていることを信じながら……僕は新しい家族であるひよりさんの手を握り、家路に就くのであった。

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