ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「雄介くん、ちょっといいかな……?」
その日の夜、話し合いを終えて寝る準備を整えていた僕の元に、ひよりさんがやってきた。
部屋の扉を開けば、罪悪感を抱いているであろう表情を浮かべた彼女の姿があって……僕は、そんなひよりさんを何も言わずに自分の部屋へと招き入れる。
「どうかしたの? やっぱり、紫村さんのことを気にしてる?」
「うん……でも、紫村のことよりも雄介くんたちに迷惑をかけちゃったなって……」
パジャマ姿のひよりさんが、俯きながらそう呟く。
一瞬、彼女から視線を外した僕は、小さく何度か頷いてからこう言葉を返した。
「迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないよ。僕も母さんも弟たちも、気にしてなんかないさ」
「でも、あたしのせいで雄介くんもバイトを休むことになっちゃったし、大我くんもお友達との外食を切り上げる羽目になっちゃったし……他にもいっぱい、迷惑かけてるよ」
不安な時は気持ちも沈むものだ。きっと、暗い気持ちが罪悪感を加速させているのだろう。
その気持ちを払拭するのは恋人である僕の役目だと、そう思いながら微笑んだ僕は落ち込んでいるひよりさんへと言った。
「そんなふうに思わないで。
「えっ……?」
驚いたように目を丸くするひよりさんへと微笑みかけながら、自分でも臭いことを言ってしまったなと僕は思った。
だけど、これは全て本心からの言葉なのだと改めて思いつつ、話を続けていく。
「僕も、母さんも、雅人も大我も……みんな言ってるでしょ? ひよりさんは家族だって。困った時や大変な時に助け合うのが家族なんだから、こうして支えるのも当然だよ」
「雄介くん……!」
「……まあ、ひよりさんに僕みたいなのは嫌だって言われちゃう可能性は大いにあるんだけどさ……」
「そっ、そんなことないよ! 全然! まったく! 嫌なんかじゃない!!」
真面目にそう言った後、照れ隠しの言葉を口にした僕へと、ひよりさんが慌てた様子で否定する。
そんな彼女の反応に少しだけほっとしながら、笑みを浮かべた僕は腕を広げながら言った。
「そっか、良かった……! それじゃあ……はい」
「はい、って……?」
「ひよりさんがいつもやってくれてるじゃない。今日は僕が、ぎゅ~ってしてあげる番だよ」
「……!」
また驚いた表情を浮かべたひよりさんの頬が、みるみるうちに赤くなる。
そういうところもかわいいなと思う僕の前でいじらしくもじもじした後、彼女はそっと足を前に進め、僕へと体を預けてきた。
「んっ……! やっぱり身長差があるね……!!」
「うん。でもまあ、こうすれば大丈夫でしょ?」
「わわっ……!?」
ひよりさんの背中に腕を回しながら、その体を包み込む。
少し彼女を持ち上げるような形になった僕は、すっぽりと腕の中に納まってしまったひよりさんを見つめながら言った。
「うん、なんかいいね。幸せの重みだ」
「……遠回しにあたしのことを太ってるって言ってない?」
「え~? 違うって~! 僕がそんな失礼なことを言うわけないでしょ?」
「うわ~、白々しい~……! でもまあ、うん……確かになんかいいかも」
そう言って微笑んだひよりさんと見つめ合った後、無言で唇を重ねる。
女の子に対して自分からこういうことをするだなんて、ひよりさんと付き合うまでは想像もできなかったなと思いながら心に広がる甘い感覚に目を細めた僕は、彼女とのキスを終えた後で改めてその小さな体を強く抱き締めながら言った。
「守るから、絶対。何があっても、僕がひよりさんを守るよ」
「うん……ありがとう、雄介くん……!!」
小さな腕が、僕の背に回る。応えるように力を込めるその腕から信頼も伝わってくることを感じた僕は、何があってもひよりさんを守り抜こうと固く心に誓うのであった。