ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
そう言いながら大きく腕を上げたひよりさんがジャンプすれば、これまた大きな彼女の胸が大きく揺れた。
またしても思考が明後日の方向に向かってしまいそうなところを必死に押し留めた僕は、目のやり場に困りながら彼女へと言う。
「あの、ひよりさん? 僕も折角の二人だけの時間を仲良く過ごしたいって気持ちはわかるよ。でも、どうして水着なの?」
「どうしてって、雄介くんへのサービスに決まってるじゃん! この水着、また見たかったでしょ!?」
その質問に対する答えは当然YESなわけだが、それは置いておこう。
どこから話をすべきかと考える僕に対して、ちょっと意味深な目線を向けてきたひよりさんが言う。
「雄介くんだって、少しは
上目遣いになりながら組んだ腕で自分の胸を押し上げたひよりさんが妖しい吐息を漏らす。
たわわな胸やその谷間をアピールするように見せつけてくる彼女であったが……僕は一度深呼吸をすると、とても大事な話をしていく。
「ひよりさん……先に言っておくよ。僕は今、ひよりさんとそういうことをするつもりはないから」
「……なっ、なんだって~っ!?」
僕の話を聞き、その意味を少し考える必要があったのだろう。
言葉の意味を理解した彼女が目を見開いて叫ぶ中、僕は真っすぐにひよりさんを見つめながら言った。
「念のために言っておくけど、そういうことに対する興味がないわけじゃあないからね? ひよりさんの水着姿を独り占めできて嬉しいし、すごくかわいいって思ってる」
「おぉう……! 今日はドストレートな雄介くんの日だ……! めっちゃ褒めてもらえて嬉しいけど恥ずい……!!」
真っすぐにひよりさんの顔を見つめながらそう言えば、顔を赤くした彼女は頬を押さえながら恥ずかしそうに呟いた。
恥じらうひよりさんの姿と一緒に視界に入ってくる大きな胸とその谷間に理性を揺さぶられながらも、僕は決意を貫くために話を続ける。
「じゃあどうしてって話だけど、理由は二つある。一つは、ひよりさんのご両親からの信頼を裏切りたくないってこと」
「あたしの家族からの、信頼……?」
「うん。江間とのいざこざがあって、吾郎さんも睦美さんもすごく疲弊してる。今もひよりさんを守るために動いてくれてるし、本当に大変な毎日を過ごしてるはずだ。そんな状況で、二人にとって何よりも大切なひよりさんを預けられた。それは二人が僕のことを信頼してくれてるからだと思う。そうやって信じてもらえた僕がひよりさんに手を出すっていうのは、その信頼を裏切る行為だと思うんだ」
二人にとって、ひよりさんは何よりも大切な一人娘だ。
ストーカーと化した江間や紫村さんの手から彼女を守るために、今も二人は頑張っている。
そんな二人に信じられてひよりさんを託された僕が、おいそれと彼女に手を出していいわけがない。
今、こうして強く信頼されているからこそ、その信頼をより強固なものにするためにも今はひよりさんとそういうことをしたくないというのが理由の一つだ。
「……じゃあ、もう一つは?」
「自分でもわかってるでしょ? ひよりさん、落ち着いてないじゃない」
「あうぅ……」
二つある理由の内、より大事なのはこちらの方だ。
今のひよりさんは本調子じゃないというか……色々と気持ちを落ち着かせられないでいる。
それは僕と二人きりになったことで浮足立っているとか、そういうものではない。
原因不明の紫村さんのストーカー化による不安や、それをきっかけに再び江間のことを思い出してしまったことによる気持ちの沈みみたいなものが原因だろう。
その不安を振り払ったり、沈みそうになる気分をどうにかしたいから必要以上に明るく振る舞う。
今、水着姿で話をしているのもそういう気持ちの表れだと、僕は考えていた。
「……ひよりさんの気持ちとか覚悟を無下にするのは申し訳なく思ってる。だけど、今じゃないとも思うんだ。問題が無事に解決して、平穏な日々を取り戻して、お互いがもっと相手のことを好きになった時に……そういうことをしよう。ずっと一緒にいるんだから、焦る必要なんてどこにもないでしょ?」
「……うん、そうだね。ずっと一緒なんだから、チャンスは山ほどあるもんね。雄介くんの気持ちはわかったよ。話してくれてありがとう!」
ひよりさんのことを大切に思っているからこそ、気軽に手を出したくなんかない。初めてこの家に泊まった時と気持ちは同じだ。
……いや、少し違った。あの頃より僕はひよりさんのことが大好きになっているし、それに比例するように彼女を大切にしたいという気持ちも強まっている。
だからこそ、焦ったり浮足立ったりせずに一緒に歩いていく。
無理に急いだりせずとも、きっと最良の機会が訪れると信じているのは、僕だけではなくひよりさんも同じみたいだった。
「それにしても、やっぱりあたしって愛されてますな~! 両親だけじゃなくお義母さんや弟くんたちにも愛されてるとは思ってたけど、雄介くんからの愛が段違いで嬉しいよ!」
「そりゃあ、ね。ずっと幸せにするって決めてますから」
こういうことを気兼ねなく言えるのも、二人きりだからかもしれない。
まあ、家族の前でも言っていたような気がするが、気にしないことにしよう。
「それはそれとして、ちょっとでいいから水着撮影会とかしない? 雄介くんも夏の思い出としてあたしの水着写真の一枚や二枚くらいは持ってたいでしょ?」
「……持ってたい。すごくほしい」
「正直で良し! よっしゃ! じゃあ、大好きな雄介くんの要望に応えてどんな写真でも撮らせてあげよう! ローアングルがいい? それとも四つん這い? ぺたんこ座りからの振り向きでもいいよ!」
「……ちょっと待って。全部後ろから撮影する想定じゃない? 何度も言ってるけど、僕は尻フェチじゃないから!!」
多少下ネタが入っている話題だが、ひよりさんの雰囲気はいつも通りに戻っていた。
そのことを喜びつつ……僕は、改めて彼女と二人きりで過ごす一日を楽しみ始めるのであった。
……なお、写真は何枚か撮らせてもらった。後ろからの撮影が多くなったのはひよりさんがそっちをアピールしてきたからだと信じたい。