ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
(やらかした……! いや、悪いことはしてないけど間違いなくやらかした……!!)
ひよりさんとぶっちゃけた話をして、その流れで何度もキスをして……ようやくその行動が落ち着いた後もなんだかんだで気分の方は落ち着かなくて、気が付いたら夕方になっていた。
お互いに大胆な真似をし過ぎたな~という自覚はあったせいで恥ずかしい空気になってしまい、今現在僕は一人でリビングの床に突っ伏して猛省中である。
そういうことはしないって話をしている最中に、イチャつき過ぎた。
絶対に一線は越えないという信念こそあったものの、改めて振り返ってみるとどこかで流されてもおかしくなかったかもしれない。
二人きりというシチュエーションと、そういう状況だからできる恥ずかしいが真面目な話のせいで僕もひよりさんも普通じゃなかった。
本当に危ないところだった……と思うのと同時にまだ動揺は収まってないぞと思う僕は、うつ伏せで倒れたままに顔を前に向ける。
ひよりさんは今、お風呂に入っている真っ最中だ。
普段の彼女ならば「一緒に入ろうよ~!」くらいのからかいはしてきたのだろうが、今日は流石に状況が状況だったためかそういうことは言ってこなかった。
そんな反応からもお互いにちょっと危ない状態であることを感じ取っている僕は、同時にひよりさんがここではまだそういうことはしたくないという僕の気持ちを尊重しようとしてくれていることも理解して彼女に感謝している。
何かきっかけがあったらどちらも理性が終わってしまうような状況で、そのきっかけを作らないように振る舞ってくれているひよりさんは、先ほどの話を聞いて色々と納得してくれたのだろう。
いつも通りに一緒にお風呂に入ろうだなんて言ってしまったせいで僕の我慢が限界を超えたら……と考え、気を使ってくれたに違いない。
断るつもりではあったが、これ以上僕の理性にダメージを与えないように振る舞ってくれる彼女には、本当に感謝の気持ちでいっぱいだった。
(とりあえず、そろそろ自分の部屋に戻らないとな。ひよりさんがお風呂から出たら鉢合わせちゃうし……)
普段は弟共々、ひよりさんがお風呂に入っている最中は自室で待機している。
リビングや廊下にいたら風呂上がりで全裸のひよりさんとうっかり鉢合わせて、とんでもないことになってしまうからだ。
特に弟たちはそうなった時の僕の反応を恐れて、風呂のすぐ近くにあるトイレに行くことすら我慢している始末である。
僕もまたそうならないように普段は風呂場から離れている自分の部屋に籠るようにしているのだが、今日は少し自分を落ち着かせるために時間がかかってしまった。
まだひよりさんが入浴を終えるまで時間があるだろうが、万が一の事態に備えてすぐに部屋に戻った方がいいだろうと、僕がそう考えた瞬間、玄関のチャイムが鳴る。
「あれ? 誰だ……?」
母は遅くなると言っていたし、この時間帯に帰ってくることはないはずだ。
そう思いながら突如として鳴り響いたチャイムに驚いてインターホンを確認した僕は、玄関に宅配の業者さんが立っている様を目にする。
家族の誰かが何か注文していたのかなと思いながら印鑑を探して手に取った僕は、そのまま玄関に向かおうとしたのだが――
「えっ!?」
「あっ……!!」
――リビングの扉を開けたところで……全裸のひよりさんと鉢合わせてしまった。
繰り返すが、
そのまま数秒……多分その程度なのだが、体感では十分くらい経っているような長い時間が流れた。
間近で彼女の裸を見てしまった僕の脳内には宇宙が広がり、理解を拒むように思考が停止している。
しかし、そういった抵抗も限界を迎えて羞恥と理解力が追い付いた結果、僕は悲鳴にも近しい大声を出しながらひっくり返ってしまった。
「うわわわわっ!? わあああっ!?」
「ゆっ、雄介くん!? 大丈夫!?」
「だだだ、大丈夫! じゃなくて、どうして!? なんで!?」
動揺が半端なかった僕は、どうしてひよりさんが裸でリビングに来てしまったのかを狼狽しながら尋ねる。
あわあわとしている僕に対して、彼女は苦笑気味の声でこう答えてくれた。
「いや、玄関のチャイムが鳴ったからさ、真理恵さんが帰ってきたのかもなって……雄介くん、普段はあたしがお風呂に入ってる最中は自分の部屋にいるし、チャイムが聞こえてないかもな~って思ってさ」
「き、気を使わせちゃってごめん……でっ、でも、来たのは配達の人だから! その格好で出ていくのはマズ過ぎるから!!」
そうツッコミを入れながら思わず彼女の方を見てしまった僕が慌てて視線を逸らす。
ひよりさんは色々と大事な部分を隠そうとしてくれているのか、背中をこちらに向けながら振り向いた状態で話をしてくれていたのだが……そのせいで、今度はお尻まで見てしまうことになってしまった。
「と、とりあえず、お風呂に戻って! このままは流石にマズいって!!」
「ああ、うん。そうだね。その……ごめんね」
謝るのは僕の方なのに、ひよりさんはそう言い残すと足早にお風呂場へと戻っていった。
風呂のドアが閉まる音を耳にした僕はようやく落ち着くと共に、大きなため息を吐く。
宅配の業者さんは既に荷物を玄関先に置いて去ってしまったようだ。
手にしていた印鑑をテーブルに置き、口元を押さえた僕は、今しがた見てしまった光景を頭の中から追い出そうと必死に努力する。
しかし……そんなことが簡単にできるはずがなかった。
むしろ忘れようとすればするほどに、ひよりさんの裸の姿が頭の中にはっきりと思い浮かんでしまう。
あの大きな胸も、お尻も、他の何もかもも……この目で見てしまった。
普通に考えると幸運ともいえるラッキースケベに遭遇できたことを喜べばいいのか、それともこの最悪のタイミングで遭遇してしまった不幸を嘆けばいいのか、今の僕にはよくわからない。
ただ……自分の理性がさらに追い詰められたことだけは強く自覚している僕は、そのままテーブルに何度も額をぶつけ、どうにか記憶を飛ばそうと努力し続けるのであった。
いよいよ明日、第三巻発売です!
よろしければ手に取ってやってください!今回も素晴らしいイラストを描いてくださった瑠川ねぎ先生に最大級の感謝を!