ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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私は被害者だ!被害者なんだ!(二奈視点)

「わ、私、江間くんとはちょっと仲良くしただけだったんです。中学時代も大した接点はありませんでしたし、連絡先も知らないくらいだったのに……急にあっちが私を彼女扱いし始めたんです!」

 

「そ、そんな……!? どうしてお母さんたちに相談しなかったの!?」

 

「だって、心配かけたくなかったし……バスケ部のみんなが守ってくれたりしたおかげで江間くんも大人しくなったから、言う必要もないと思って……」

 

 ここまで話した内容に矛盾はないはずだ。

 七瀬の両親だって江間がストーカーになっていることは知っているはず。ここは娘同様に、私もあいつの被害者という形で乗り切るしかない。

 

「それで、もう色々解決したと思ってたんですけど……最近、誰かに見られてる雰囲気とか、尾行してくる気配を感じるようになって……もしかしたら江間くんがまた私をストーカーし始めたんじゃないかって、不安になって……!!」

 

 ポロポロと涙をこぼして、弱々しい美少女を演じる。

 母親は完全に私の話を信じ、ストーカー被害に遭う可哀想な娘として私のことを見てくれていた。

 

 勝負をかけるならここしかない。そう判断した私は思いきり立ち上がり、テーブルをバンッ! と叩くと、前のめりになって七瀬の父親へと言う。

 

「七瀬さんも江間くんに付き纏われてたんですよね!? 私、七瀬さんが心配だったし、自分のことも相談したくって……それで、彼女のことを探してたんです! 確かに騒ぎを起こしてしまったのは申し訳ないと思ってますが、それは私も必死になってたからであって、決して七瀬さんに危害を加えようだなんて考えてません!」

 

 ……決まった。演技とは思えないくらいに作り上げられた表情。それを間近で見せる体勢と状況。必死さがにじみ出る声色……何もかもが完璧だ。

 私は江間の被害者。あいつに二度も付き纏われて精神的に追い詰められ、そのせいで騒動を起こしてしまっただけの哀れな少女。その立場を完璧に貫き通し、守れるだけのシナリオを作り上げることができた。

 

 これで私に対する疑いの眼差しは晴れるだろう。しかし、これだけでは足りない。

 あと一歩、私が平穏を取り戻すために、七瀬に江間を押し付ける必要がある。

 

「お願いします、七瀬さんと会わせてください! 誤解を解いて、江間くんについて相談したいんです! どうかお願いします!」

 

「わ、私からもお願いします! 同じ男の被害者同士なんだから、助け合うのが当然でしょう?」

 

 深々と頭を下げて懇願する私の姿を見た母親が援護射撃を飛ばす。

 これで七瀬と会うことができれば、江間の興味もあいつに移るはずだ。そうなれば、もう私が苦しむことはない。

 

「……話はわかりました。顔を上げてください」

 

 そんな七瀬の父親からの言葉を聞いた時、私は勝利を確信する。

 哀れな被害者である私に対して憐みの心を持ち、その懇願を聞いてくれるはずだと期待して顔を上げた私であったが……その目に映ったのは、一切感情を揺らがせていない七瀬の両親の姿だった。

 

「話はわかった。だが、私たちは君の言うことを鵜呑みにはできない。ほんの少し前に、盲目的な思い込みで娘を傷付け、悲しませたばかりだからね」

 

「あなたにもあなたなりの事情があるんでしょう。でも、私たちからすればあなたは()()()()()()()()()()()()()()()()です。そんな相手を、わざわざ娘に引き合わせるわけにはいきません」

 

「そっ、そんな……!?」 

 

 淡々とした口調で協力を拒むと言ってきた七瀬の両親の態度に、私は言葉を失ってしまった。

 それ以上は何も言えずに固まる私に代わって、母が口を開く。

 

「なんて冷たい人たちですか! 私の娘だって、あなた方の娘と同じように苦しんでいるんですよ!? 少しは手を差し伸べてくれたっていいじゃないですか!!」

 

 ヒステリックな母の叫びを聞きながら、これが最後のチャンスだと私は思った。

 懇願が無理だというのなら、母の怒りに任せた強引な方法で突破口を見つけ出すしかない。

 

 最後の望みを母の叫びに託す私であったが……七瀬の両親は、そんな母へと淡々と言葉を返す。

 

「あなたの娘さんは、今も江間くんからのストーカー被害に遭っている……そう言っていましたね? でしたら、それは大きな勘違いです。彼は娘さんに付き纏ってなんかいませんよ」

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