ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
初めての朝デートに出掛けよう
「ふぁぁぁぁぁぁ……今、何時だ……?」
夏休みが始まって間もないある日のこと、僕はドタドタという足音で目を覚ました。
大あくびをした後でスマホの電源を入れて現在時刻を確認すれば、画面には七時二十七分という文字が表示されており、休日としては早い起床を果たしてしまった僕は、少し考えた後でむくりと起き上がる。
「今の足音は大我かぁ……? あいつ、寝坊して慌てて出ていったな……」
本日、三男の大我は部活の朝練で普段よりも早めに家を出ることになっていた。
同じく母も今日は朝早くから仕事に行く必要があるらしく、二人は朝食を適当に済ませると言っていた。
家に残る三人のうち、次男の雅人はスーパー自堕落くんなので休日はほぼほぼ昼過ぎまで寝ている。
というわけで二人分だけの朝食を用意するのも面倒だし、今日は朝ご飯の当番はなしということになっていた。
だったら僕も弟を見習って寝坊しようかと思っていたのだが……運悪く、こうして普段とそう変わらない時間に目を覚ましてしまった。
二度寝も幸せだろうが、この感じからするとそれもできなさそうだなと観念した僕は、ふらふらとした足取りで部屋を出て、洗面所へと向かう。
(朝ご飯、どうしようかな……? 食パンとかあったらいいけど、大我が食べてる気がするんだよなぁ……)
記憶の中では、台所には食パンが少し残っていたはずだ。だが、先に起きた大我と母が全部食べてしまっている可能性が高い。
特に大我は寝坊しただろうし、ラブコメ小説のヒロインよろしく焼いてない食パンを咥えたまま登校したのではないかと思いながら顔を洗った僕は、とりあえずといった感じで台所へと向かった。
何が残っているか確認しつつ、何か飲んで喉を潤すか……と考えながら扉を開ければ、そこに小さな人影があることに気付く。
「んくっ! んくっ! んくっ! ぷは~っ! うん、美味い!」
腰に手を当て、盛大にコップを傾けて、目覚めの一杯として牛乳を一気飲みしたひよりさんが元気そうに言う。
ちらりと見えた脇腹がちょっぴりスケベだなと寝ぼけ半分の頭で考えたところで、僕の気配に気付いた彼女が振り返った。
「わわっ、雄介くんじゃん! おはよう!」
「おはよう、ひよりさん。僕も牛乳貰ってもいいかな?」
「もちろん、もちろん! あっ、あたしが使ったコップ使う? 間接キスできるよ!」
それはいいです、と苦笑しつつひよりさんの申し出を断った僕が、新しいコップに牛乳を注ぐ。
ひよりさんのようにとはいかなかったが、それを一気飲みすることで頭を完全に目覚めさせた僕は、自分が使ったグラスを洗っていたひよりさんの隣に立つと彼女へと声をかけた。
「ひよりさんも目が覚めちゃったんだ? やっぱ、大我の足音が原因?」
「あはは、そうだね。結構慌ててたみたいだったし、申し訳ないけどちょっと笑っちゃった」
同じ理由で起きたことを笑いながら話す間に、ひよりさんは僕が使ったコップを受け取って代わりに洗ってくれた。
ならばとその間に何かいい朝ご飯はないかと探す僕であったが……普段、朝食用のパンを置いてある棚は予想通りに何もない上に、冷蔵庫の中にも主食になりそうなものはない。
「どうしようかなぁ? 目玉焼きとかなら作れそうだけど、パンもご飯もないんじゃあなぁ……」
おかずは作れても主食がないと物足りないというか、食事として良くない。
だからといってそのためだけに朝から買い物に行くのも面倒くさいし、それだったら昼まで我慢した方が良さそうだ。
でも起きちゃったからには何か食べておきたいんだよなと僕が考える中、ポンと手を叩いたひよりさんがこんな提案をしてきた。
「あっ、じゃあさ! 外に何か食べに行こうよ! 朝ご飯デートってことにしてさ!」
「朝ご飯デートか……いいね、それ……!」
普段は滅多にしないことだが、たまには朝食を外で済ませるというのもいいだろう。
そこにひよりさんとのデートという楽しみを加えれば、十分に出掛ける理由になる。
「決まりだね! じゃあ、着替えてから出掛けようよ! あっ、一緒に着替える? あたしは一向に構わないよ!」
それはいいです、とコップの時と同じようにひよりさんからの申し出(逆セクハラともいう)を丁重に断った僕は、一度自分の部屋に戻った。
そうして着替えを終えた後……僕たちは家から繰り出し、朝のデートを楽しんでいく。