ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「えへへ~……! こうして朝からデートできるのって、同じ屋根の下で暮らしてるからこそできることだよね!」
ひよりさんの言う通り、朝ご飯を食べに行くために二人で出掛けるなんてことは、普段の生活じゃ不可能だ。
休日のデートも早くて昼前からだし、そもそも一緒に朝食を食べること自体が難しい。
同棲生活をしているからこその利点がいきなり出たなと思いながら彼女へと頷いた僕は、ポケットからスマートフォンを取り出すと共に口を開いた。
「それで、どうしようか? パッと思い付くモーニングをやってるお店、駅前のハンバーガー屋さんしか思い付かないんだよね」
「あ~、あそこか! 朝バーガー、定番のモーニングだよね!! あたし、メガ朝マフィン食べたい!!」
現在時刻は八時前、この時間に開いている……というか、モーニングを提供しているお店はこの近所だとそこそこ限られている。
外で朝食を食べるという経験がほぼなかった僕が思い付く該当するお店は、テレビでCMが流れていたりするハンバーガー屋さんくらいのものだ。
というわけで、そのお店はどうかとひよりさんに提案してみれば、彼女は大きく手を上げて賛成してくれたのだが……それはそれとして、といった感じでこう言葉を続ける。
「でもさ、折角の機会なんだし、色々見て回ってみるってのはどう? 駅前まで散歩してる間にモーニングをやってるお店が見つかるかもしれないし、ハンバーガー屋さんの近くにも開いてるお店とかありそうじゃない?」
「確かにそうだね。真っすぐご飯を食べに行くだけじゃ味気ないし、朝の散歩を楽しみながら行こうか」
「うんっ!」
折角、滅多にできない朝のデートに出掛けるのだから、のんびりと楽しんだ方がいい。
朝食を食べに行くことが目的ではあるが、いいお店を探しながらどのお店がいいかと二人で話し合ったりするのがこのデートの醍醐味なはずだ。
ゆっくりと朝の町を散歩しながら、遠回りして色々見ていこうという僕の提案にひよりさんも大きく頷いて賛成してくれた。
一応の目的地を駅前と決め、ルートは適当にという形でぶらぶらしていこうと話し合った僕たちは、朝の涼しい空気を感じながら歩き出す。
「夏だけど、この時間は結構涼しいんだね。でも思ったより人はいないかも」
「夏休みだし、家で寝てる人が多いんじゃないかな? 雅人だってそうだったでしょ?」
「あははっ、確かにそうだ! のんびりできる時にはそうした方がいいもんね~!」
ひよりさんの言う通り、普段のこの時間は通勤や通学のためにそれなりに多くの人が歩いていたりする。
だが、今は夏休み。社会人はともかく、僕たち学生は普段のように早起きせずとも構わない時期だ。
人の姿がほとんどないのは、高校生や中学生なんかの早起きして学校に行く人たちが家で休んでいるからだろう。
ついでに、朝の空気が涼しく感じるのは、普段の制服姿じゃなくて私服だからじゃないかと考えたところで、僕は今のひよりさんの格好をちらりと見やる。
「それ、セーター? 肩は出してるけど、暑くないの?」
僕の隣を歩くひよりさんは、セーターに見える服を着ていた。
デザインとしては肩を出しているし、涼し気にも見えなくはないのだが……セーター=寒い日に着るものというイメージが出来上がっている僕からすると、そんな格好で暑くないのか心配でもある。
そんな僕の質問に対して、ひよりさんはからからと笑うとこう答えてくれた。
「ああ、これはサマーニットだよ! ちょっともこもこしてるように見えるけど、普通に着てて涼しい素材を使ってるから、大丈夫!」
「へぇ~、サマーニットかぁ……そういうのもあるんだなぁ。お洒落に興味がないから、全然知らなかったよ」
「これは女性向けだけど、男の人向けのやつもあるからさ、今度一緒に見に行ってみようよ!」
どうやら僕が知らなかっただけで、夏に着る用のニットというものが存在しているらしい。
まあ、普通に考えてひよりさんが冬用の服を夏に着るはずがないか……と考え直しつつ、この話の中でまた新しいデートの約束が取り付けられそうなことに笑みを浮かべた僕であったのだが、改めて彼女の服装を見た時に気付いてしまう。
(ん? んん……?)
本日のひよりさんのコーディネートは、上は今しがた教えてもらった通り、ノースリーブのサマーニット。色は涼し気な白で、体にぴったりと張り付くようなデザインをしている。
下はこれまた涼し気なデニムのショートパンツ。タイト気味なのか(あるいは彼女のお尻が大き過ぎるせいか)こちらも体のラインが浮き出るデザインになっている。
つまりは上も下も……ひよりさんの
これってもしかして……いや、もしかしなくとも大分刺激的な格好なんじゃないかと僕が考え始めたところで、振り返ったひよりさんがにやにやと笑いながら言う。
「どうしたの、雄介くん? あたしの格好、そんなに気になっちゃう?」