ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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一口交換は、妙に甘い

「ねえねえ! そっちのホットサンドも一口食べさせて! あたしのも少し分けるからさ!」

 

「うん、いいよ。はい、どうぞ」

 

「わ~い! ありがとう! じゃあ、こっちもどうぞ!」

 

 ひよりさんからのお願いに応え、自分のホットサンドが乗っている皿を彼女へと差し出した僕は、逆にひよりさんが差し出した皿を受け取るとその上に乗るツナチーズのホットサンドを手に取った。

 何口かかじった跡が見えるそれの、まだ口が付けられていないところにかじりついた僕は、常識的な一口だけその料理をいただく。

 

「ふむっ、んん……!」

 

 一口食べただけだが、こちらのホットサンドもかなり美味しいことはすぐにわかった。

 ツナとチーズの相性も抜群だが、それらが組み合わさることで生まれるジューシーさが口いっぱいに広がり、食べ応えのある味わいになっている。

 朝からこれを食べるのは僕には少し重いかもしれないが……ガッツリとエネルギーを補充したい人にはちょうどいいくらいなのかもしれない。

 

「こっちも美味しいね。ツナチーズか……あんまり食べたことなかったけど、こういう系の料理とか何か作ってみようかな……?」

 

「ツナマヨはおにぎりとかで食べるけど、ツナチーズって意外と無いよね。でも、あたしはこの組み合わせは好きなんだよな~!」

 

 お皿を返した僕へと、うんうんと頷きながらそうひよりさんが応える。

 どうやらまだ彼女は僕のホットサンドを食べていなかったようで、そこでようやく料理に手を伸ばした。

 

 ハムタマゴサラダサンドを手に取り、少しそれを見つめて……大きく口を開けたひよりさんは、敢えて僕が口をつけた部分を選ぶと共にそこにかぶりつく。

 がぶっ、という音が聞こえてきそうなほどに豪快に一口を頬張った彼女は、もぐもぐとそれを堪能しながら嬉しそうに微笑み、言った。

 

「ん~っ! 定番の朝食って感じで最高だね! 普通の女の子はこういう系を選ぶんだろうな~……!」

 

「食事は好きな物を食べるのが一番だよ。それに、さっきも言ったじゃない。僕はいっぱい食べるひよりさんが好きだって」

 

「むふふ~っ、雄介くんが理解のある彼氏で嬉しいよ、本当にさ!」

 

 そう言いながら、僕の方へとハムタマゴサラダサンドを返してくるひよりさん。

 それを受け取った後……僕は、少しだけ固まってしまう。

 

(おおっと……間接キス確定だなぁ……)

 

 当たり前ではあるが、ここから残ったホットサンドを食べればひよりさんと間接キスすることになる。

 気軽にシェアしてしまったが、改めて意識すると少しだけ恥ずかしい。

 

 さっきひよりさんが敢えて僕が口をつけた部分にかじりついたのもそういうことを狙ってなんだろうな~と考えながら顔を上げれば、ちょうど彼女がツナチーズのホットサンドの先ほど僕が口をつけた場所をパクついている場面が目に映った。

 

「あれれ~? 雄介くん、料理を手に固まっちゃってるけど、どうかした~?」

 

「……いや、別に? 何でもないけど?」

 

 やっぱりいつものからかいかと、わざとらしい口調でにやにやしながら言ってくるひよりさんへと強がりを返す。

 いつまでも思い通りになる僕ではないぞとにやにやの笑みを返しながら応えた後で、僕もまた彼女と同じように口が付けられた跡に大口を開けてかぶりついてみせた。

 

「ほほう! やるようになったな、若いの!!」

 

「同い年でしょ、僕たち」

 

 なんだかロボットアニメの主人公に対して、ライバルのベテランパイロットが言うような台詞を口にしたひよりさんへと、苦笑を浮かべながら言う。

 ただまあ、僕もこういったことに完全に慣れたわけではないし、まだまだ緊張を拭えない部分もあった。

 

 だけど、恋人という関係になった以上はいちいち戸惑ったりせず、油断した姿を見せてくれるひよりさんみたいにある程度は心を開いた姿を見せていきないな……と思いながら、少し熱くなった体を冷ますようにアイスコーヒーを口に含む。

 

 こくん、とそれを飲んだ後……グラスをテーブルに置いた僕は小さく微笑みながら呟いた。

 

「……ちょっと()()かもなぁ」

 

「ん? ガムシロップは入れてないんでしょ? それでも甘いの?」

 

「うん、甘い」

 

 よくわかっていなさそうなひよりさんの質問へと、何がとは答えずに頷きながらそう述べる。

 失敗のようであり、成功でもある自分の対応の甘さと、口の中に広がる甘さに微笑みを浮かべながら、僕は彼女との朝食を楽しみ続けるのであった。

 

 

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