ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「二人並んでお昼ご飯を作る……う~ん、なんかこういうのっていいよね!」
「すごいざっくりとした感想だけど、同意かな。うん、なんかいい」
スーパーでの買い物を終えて帰宅した僕たちは、少し休憩してから昼食を作り始めた。
本日のメニューはソース焼きそば。手軽に作れる昼ご飯の定番だ。
「最近は料理するのも楽になっていいよね~! こういうカット済みの野菜セットとかあるしさ!」
「本当にね。時間短縮にもなるし、一食作るだけならこっちのがお手軽だよね」
もやしにキャベツ、ニンジンといった焼きそばに入れる具材がほとんど入っているカット済み野菜セットの袋を開け、ザルに入れながらひよりさんが言う。
それを軽く洗って水を切る彼女を見つめながら豚肉を切っていた僕は、準備を終えるととりあえず使った調理器具をひよりさんに任せ、フライパンや油を用意していった。
「焼きそばは僕が作るよ。ひよりさん、そんな格好だしね」
「あはは……! 確かに火を使うのには向かない格好だ」
肩から腕を思いっきり出しているひよりさんが火を使って、油が跳ねたりしたら大変だ。
火傷させないためにもと調理の最後の部分を担当すると僕が言えば、ひよりさんも苦笑しながら後を任せてくれた。
「とは言いつつも、全部を任せるのは申し訳ないので……こちらの付属品のソースを美味しく仕上げるために一手間かけさせていただきましょう!」
「ははっ、じゃあ、お願いしようかな? 僕も少しやりたいことがあるし……」
基本的にはここから具材をフライパンに放り込んで焼いていけば完成なのだが、ひよりさんに食べてもらうのだから美味しく仕上げたいという気持ちがある。
大きめのフライパンに水を入れ、油と塩を加えてから煮立たせている間に、ひよりさんも小さなカップに入れた粉末ソースを溶かし、醤油やオイスターソースを入れて特性のソースを作ってくれていた。
「んふふ~……! なんかいいな~、こういうの……!」
「二人で一緒に料理することなら、さっきもそう言ったと思うけど?」
「そうじゃなくってさ、こういう家庭的っていうの? 今日も朝はホットサンドだったし、今までのデートだとパスタとかプロのかき氷とか、そういうのばっかりだったじゃない? そういういかにもなやつじゃなくってさ、家で普通に食べられる料理を一緒に作ったり食べたりするのって、恋人から一歩発展した気がしていいなって思ったんだ」
ひよりさんの言いたいことはなんとなくだがわかる。
一応、ラーメン屋なんかにも行ったことはあるが……デートらしいデートというか、今まではそういうことが多かったと思う。
初めて一緒に行ったスイーツバイキングだとか、何か珍しいものを食べに行ったりだとか……そういうのではない、普通の食事。
付き合いたての恋人という期間を経て、少し落ち着いた段階で家庭的な料理を一緒に作って食べるというのは、なんだか自分たちの関係が一歩進んだような気持ちになれた。
「まあ、ここまでくると恋人を通り越して夫婦やってる気分だけどね! うん、悪くないな……!!」
家族、ではなく夫婦という言葉を使ったひよりさんの発言と、それをしみじみと語る後半の言葉に少し心臓がドキッとする。
湯通しを終えた野菜を上げた後、豚肉をカリカリになるまで焼いていた僕がフライパンから目を離して彼女を見やれば、ひよりさんはうんうんと頷きながら幸せそうな笑みを浮かべていた。
「……確かに悪くないね。こうやって二人でご飯を作って、食べるって日常もさ」
「でしょ~? 一回でも多く、こういうことができるといいよね!」
照れ臭さを感じながらもその言葉に同意した僕は、本格的に料理を仕上げにかかった。
豚肉をフライパンから上げ、代わりに麺を入れ、フライパンに残る豚肉の旨味が残った油を吸わせながらじっくりと熱を入れる。
あまりほぐすことはせず、片面ずつしっかり焼き上げて色を付けたところでひよりさんが用意してくれた特製ソースを投入すれば、甘く香ばしい焼きそばのいい香りが漂い始めた。
「ふぁぁぁぁ……! この匂いを嗅いでるだけでお腹が空いてきちゃうよ~……!!」
空腹をアピールするようにお腹を手で押さえながらのひよりさんの言葉に笑みを浮かべながら、ソースを絡ませるように麺をほぐす。
ある程度麺がほぐれたところで別にしていた野菜と肉を投入し、全体的に馴染ませるように混ぜ合わせれば……本日のお昼ご飯、特製ソース焼きそばの完成だ。
「はい、お皿! 用意しておきましたよ~!」
「ありがとう、ひよりさん」
完成のタイミングを見計らって皿を用意してくれたひよりさんに感謝しつつ、焼きそばを盛り付ける。
フライパンをコンロに戻す間に紅しょうがを乗せてくれた彼女にもう一度感謝した僕は、出来上がった料理を手にリビングへと向かうと、ひよりさんと向かい合って手を合わせた。
「それじゃあ、いただきます!」