ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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義姉さん、やっぱ人気だな……(大我視点)

 俺を呼ぶ女子の声に、柔道部の仲間たちが一斉に反応する。

 全員で声のした方へと顔を向ければ……笑顔を浮かべながらこちらへと小走りで駆け寄ってくる、ひより義姉さんの姿があった。

 

「あ、義姉さん。どもっす」

 

「ごめんね、友達とおしゃべりしてるところにさ。ほら、この後一緒に買い物に行く約束だったでしょ? だから、ここで待ってたんだよね」

 

 にこにこと笑いながら話す義姉さんの言う通り、今日は部活終わりに買い物に行く予定があった。

 こう言うとちょっとデートっぽく聞こえるが、実際はそんなことはない。雄介も交えて、三人で近所のスーパーに晩御飯の材料を買いに行くだけだ。

 

「あれ? 雄介は一緒じゃないんですか?」

 

「ああ、さっきバスケ部の顧問の先生が通りかかってさ、今ちょっと職員室に挨拶に行ってるんだよ。大我くんとニアミスしたらマズいから、あたしは残って待ってたんだ」

 

「ああ、なるほど……」

 

 そう考えると義姉さんが一緒に来てくれて本当に良かったと思う。雄介一人だったら、この間にすれ違ってただろうから。

 そんなふうに義姉さんと話をしていた俺であったが……急に肩を掴まれ、引っ張られた。

 驚く俺に対して、周囲を取り囲んだ柔道部の仲間たちが血走った目を向けながら問い詰めてくる。

 

「おい、大我? なんだ? あのかわいい女の子は?」

 

「うちの学校の子じゃあないよな? どこ中の女子だ?」

 

「っていうか、部活終わりに待ち合わせて買い物って……デートじゃねえか!? まさかあの子、お前の彼女……!?」

 

「俺たちが柔道に打ち込んでる間に、お前は女に現を抜かしてたっていうのか!? 柔道部の絆はどうしたんだよ!? 絆は!?」

 

「ちょっとクールな背が高い年上のお姉さんが好みって言ってたじゃねえか! 真逆のタイプだぞ、あの子!?」

 

 一斉にやんややんやと言われて嫌になるが、気持ちはとてもわかる。

 同類だと思ってた同級生or後輩に他校のかわいい彼女がいるとなったら、心中穏やかではないだろう。

 

 でもまあ、全部誤解だからと深いため息をついた俺は、正しい情報を先輩や同級生たちに伝えていった。

 

「いや、俺の彼女じゃあないっすよ。兄貴の彼女です」

 

「兄貴……って、もしかして去年卒業した雄介先輩か?」

 

 速攻で選択肢から消えた雅人のことを不憫に思ったが、まあ妥当な考えなのでツッコまないことにした。

 

「そうっすよ。長男が高校で知り合った恋人です」

 

「えっ、うっそ!? あの人、高校生なの!? どう見たって中学生以下――!?」

 

 童顔な上に背が低い義姉さんが高校生だと知った柔道部の仲間たちが、驚くと共にもう一度義姉さんの方を見る。

 身長150㎝にも満たない背丈を確認した後、全員が視線を少し落としてから揃って硬直して……再び俺の方を向いた後で、うんうんと頷きながら先ほどとは真逆の意見を述べ始めた。

 

「……うん、高校生だった。どう見ても中学生じゃねえ」

 

「高校生……年上の女性って感じだぁ……!」

 

「すげえよ高校生……! やべえよ高校生……!!」

 

「それ、絶対に兄貴の前で言わないでくださいね? ブチギレてボコボコにすると思いますし、なんだったら俺も一緒になって全員締め落とすんで」

 

 義姉さんの()()を見て、そう思ったのかはツッコまないが……大体わかる。

 本当にこの場に雄介がいなくて良かったと考えたところで、俺はふと大貫先輩がこの輪に加わっていないことに気付いた。

 

 大貫先輩なら、誰よりも必死になって俺を詰ってくるだろうにと思いながらその姿を探した俺は、義姉さんを見つめたまま動かなくなっている部長の姿を発見してしまう。

 どうやら、あまりのショックに思考が停止していたみたいだなと状況を理解したその瞬間、唐突に大貫先輩が動き出し、義姉さんの前に立った。

 

「あっあっあっあっ、あの! じじじ、自分、大我くんの先輩で、柔道部の部長をしております、大貫幹太郎と申します! 突然、こんなことを言うのも恐縮なのではありますが――っ!!」

 

「あっ、ちょっ!? 部長!?」

 

 突如として動き出した大貫部長が、深々とお辞儀をしながら右手を義姉さんへと差し出す。

 ガチガチに緊張しながらも、部長は大声で義姉さんへと言った。

 

「あなたに一目惚れしてしまいました! どうか、自分と付き合ってください!!」

 

「あ、あ~……?」

 

 やっちゃった……と、惚れっぽく良くも悪くも真っすぐな大貫部長の行動に俺たちが頭を抱える中、困ったように笑った義姉さんは丁寧に頭を下げると、予想通りの答えを述べた。

 

「ごめんなさい。気持ちは嬉しいんだけど、あたし、もう彼氏いるんです!」

 

「え゛っっ……!?」

 

 多分、義姉さんに一目惚れしたショックで俺たちの会話も耳に入っていなかったのだろう。

 衝撃の事実を知らされた大貫部長は、人間が出せる限界ギリギリの『絶望』を表した呻きを漏らしながら再び硬直してしまった。

 

「お、終わった……俺の十三回目の初恋が、呆気なく終わりを迎えた……」

 

「元気出してください、部長。あと、最多記録更新おめでとうございます!」

 

「まあ、どんまいだな。あと、失恋までの最短記録更新おめでとう!」

 

「お前ら、人の不幸を笑って楽しいか……!?」

 

 人の話を聞かなかった部長が悪いと言えばそうなのだが、なんかちょっと可哀想にも思える。

 あの弄りもあまりガチで慰めると惨めさが半端ないことになりそうな部長のことを気遣ってのことなんだろうな……と考えていたところで、ある意味ではこの騒動の元凶とも呼べる雄介が姿を現した。

 

 

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